書評① 池上彰の世界の見方 中国 巨龍に振り回される世界
池上氏による有名高校の出前授業の内容を編集し、書籍化しているシリーズの1冊。
それぞれの国ごとに概要や現在の状況を高校生との問答形式で解説しており、非常に分かりやすい。中国については、すでに出版されており、本書は2冊目にあたる。
私は2017年から5年間中国の深圳に滞在した。その出発前に1冊目の中国の本を読み、大変参考にさせてもらった。恥ずかしながら、その時初めて毛沢東の「文化大革命」や「大躍進政策」について知った。
1作目に続き、本書もとても分かりやすい。近年の米中貿易戦争をはじめ、香港デモ、新型コロナウイルスに関するニュースが頻繁に取り上げられていたが、その内容に関しても政治体制と関連づけながら解説されている。
すぐ隣の大国に対し、日本はどうあるべきか。印象に残った一節を書き残す。
「最後にもうひとつ、大切なことを伝えたいと思います。尖閣諸島とかの問題になると、私たちはつい「中国人は〜」という言い方をしてしまいます。「中国人は」という言い方は危険なのです。
台湾でも中国でも漢民族が多いですよね。民族や言葉が共通していても、中華人民共和国と台湾の体制は、全く好対象です。中国は強権的で独裁的なやり方をしています。台湾は民主的で開かれた政府になっているわけです。
ある特定の民族のことを中国人はとか、日本人はとか、ひとくくりにしてステレオタイプな枠に入れてしまう。そういう考え方が一番危険なのだということです。要するに体制によってこんなにも違ってくるのだということ、それをとにかく冷静に見てほしいなと思うのです。」
私も全くその通りであると思う。香港もまたひとくくりにできない。
深圳は香港に隣接しているので、デモが起きる前は頻繁に訪れていたが、当時はまだ自由な雰囲気があり、欧米や日本に近い感覚で過ごすことができた。最後に街中を訪れたのはコロナが広がる直前の2020年1月であったが、今はどうなっているのだろうか。
視聴率を上げるための、局所的な切り取った報道からだけでなく、このような本を通して「今」の中国の客観的な理解が進むことを望む。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?