フィリピンの貧困の中で…
何かに押さえつけられたようなジメッとした暑さ。饐えたような匂いに包まれた街。フィリピンのルソン島に来ている。
マニラのHotelから自称弁護士の運転する車で、視察と取材に出かける途中なのだ。信号で車が停まるごとに数十人の子供たちが新聞やゴルフボールやアイスキャンディを持って飛びついてくる。
要らないと云うと、タガログ語で罵声を飛ばしてうるさい。仕方がないのでひと月遅れの日本の新聞を買う。
突然!男が二人、道をふさぐように立ちはだかる。フィリピンのマフィア!しかし、何処か見覚えのある奴だと思ったら、渋谷で見かけたチンピラだ。彼らは何故だか俺の顔を見ると、腰を抜かしたように逃げて行った。
車が交差点を曲がると、目の前に大きなゴミ捨て場があった。学校のグランドほどもある所に粗大ゴミが山積みだ。東北地方の被災地で見た瓦礫の山にも似ている。
そこで、大勢の子供たちが遊んでいた。みんな裸足で貧しい服をまとっている。
その子供たちが「変なものがいるよ!」と、俺にタガログ語で叫んだ。鰐か巨大なトカゲかと、瞬間的に連想した。
子供たちが指さすゴミの洞窟のような処を恐る恐る見ると、そこに白い猫と生まれたての赤子が3匹。その横に鼠の赤子が5匹…
その猫と鼠がゴミの土手を登ろうとしては、落ちてくる。その姿が可愛らしくて子供たちと見つめていた。
なにげなく見上げると土手の上には真っ黄色な、でかい蛇が這っている! わっ!と叫んで目が覚めた。
夢だけれど、あのフィリピンのドヨーンと重たく湿った暑さは本物だった。タガログ語は全く知らないのだが、どうして夢の中では理解して意思が通じ合えたのだろう?現実の世界でも言葉は不要なのかも知れないな。