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NYマンハッタンのボクサーに!
いきなりブルックリン橋の上にいる。つり橋に架けられた木の歩道を歩いて来た。マンハッタンの高層ビル群にそろそろ灯りが点り始める。
最も好きなニューヨークの風景だ。俺は橋の上で黒人の老人を探している。いない…1800メートルのこの橋を渡り切ればダウンタウンだ。
早く老人を見つけたい。その為だけにNYに来たのだから…でも老人はいなかった。がっかりしてリバーズカフェで夜風にあたっている。
と、あの小さな黒人の老人がブルックリン橋を歩いているではないか!背中を丸めて、とぼとぼと…嬉しかった!俺は老人に向かって走った。
けれど、見失ってしまった。そうだ!ウエストビレッジへ行けばいいのだ。俺はjazzが流れる中、すり寄るゲイたちを突き飛ばして走った。
マフィアのような男たちも蹴散らした。草はいらねぇよ!そして地下室へ続く階段へ飛び込んだ。
ムッと咽かえる熱気、汗の体臭、規則正しく激しい呼吸の音…俺の大好きな空間。ボクシングジムだ。
マイク・タイソンはどこ…モハメド・アリは…ロッキー・マルシア―ノは… ジョー・フレイジャーがいた。それならジョージ・フォアマンもいるに違いない。
俺の頭の中はもう、ドリームランドだ。その時だった…
ロッカールームから出て来た、小柄な黒人ボクサーがシャドーボクシングを始めた。
あの老人だ!構えはサウスポーだ。右のジャブから左のストレート…更に畳みかけての右フックのダブルから左のボディブロー…やったぁ、俺と同じのパンチパターンだ!
俺は興奮してこれが夢なら覚めて欲しくないと…思ったら覚めちゃったよ!でも、幸せな朝だった。