やはり150人位までが人間の限界なのだろう。
『基本的に「専門家」という言葉=抽象概念は多くの分野の異なる人たちの集合体である以上、それは「一人」あるいは一枚岩であるはずがないので、そもそもそれはあくまでも○○分野の専門家の声の一つであるという認識で聞かなければいけないのです。「現場の声」というのも曲者です。例えばほとんどの人が行ったことがない国や地方の話をしているときにそこに実際に行ったことがある人が「現地の人はこうなんですよ」という話をしたら、圧倒的にその声が大きくなって唯一絶対のもののように聞こえます。でも、実際には「現地の人」という抽象概念はしょせんその「現地」にいる一人ひとりの多くの多様な人たちの集合体に過ぎず、それらが「一枚岩」であるはずがないのです(もしそうだとしたらその地域の政治家はどれだけ政策を考えるのが楽なことでしょうか)。このように「専門家」や「現場の人」という、本来は具体的に多種多様な人が多数存在するものを抽象概念としてとらえてしまうところにコミュニケーションギャップの根本的な原因が存在するのです。前回の「線を引く」と同様、人間が武器とする知的能力である抽象化は抽象世界という動物にはない巨大な世界を生み出すことで、五感で感じることができる具体の世界とのギャップを生み出すことによって様々な問題を生み出しているのは冒頭にお話しした通りです。特に私たちの身の回りでいえば、コミュニケーション上の問題は多くがこの「具体と抽象」の問題から来ています。それはコミュニケーションにおける最大の武器と私たちが考えている言葉や言語というものが、人類が抽象化によって生み出した産物であり、それゆえにここまで述べてきたような抽象化が宿命的に持っている具体と抽象のギャップから逃れることができないからです。先の「専門家」や「現場の人」のように、多くのものを「十把ひとからげ」にすることで応用を利かせることができるのが抽象化の最大の武器だとすれば、ここで生まれる具体と抽象のギャップ(に気づいていないこと)がコミュニケーション上の共通課題になります。したがってこのような構図の中で問題を発見するには、「具体と抽象」という座標軸を頭に入れた上で、それは具体なのか抽象なのかという問いを常に持つことでそのギャップを見つけることが重要です。』
具体的な言動は相手に対して直接的だが抽象的な言動は相手に対して婉曲的だ。そのギャップを埋めるために具体策を並べずに抽象的なサンプルでほとんど騙すのと変わらない手法でしか大衆を短時間で引き付ける事は出来ない。やはり150人位までが人間の限界なのだろう。
コミュニケーション・ギャップは「具体と抽象」を常に意識すれば解決する
『問題発見力を鍛える』vol.18
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73450