原因不明の病気の方が多いのは確かなのだ。
『――PPPDとはどのような病気ですか?生坂:何らかの急性めまいに続いて起きてくる、慢性的な持続性のめまいです。発症のきっかけは耳石のずれ(良性発作性頭位めまい症)や炎症(前庭神経炎)など様々ですが、慢性化した時点(回転性から非回転性のめまいになった時点)で、耳石のズレや炎症は改善しているにもかかわらず、症状が続いているのがこの病気の特徴で、病態解明が待たれるところです。――2017年に診断基準が定められるまでは「謎の病気」だった?生坂:日本では、メニエール病や良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、頸性めまい、心因性めまいなど、日本めまい平衡医学会が示している16のめまい疾患のいずれにも合致しない場合に「めまい症」と診断されてきました。つまりめまい症は、診断が付かなかったことを意味します。診断が付かなければ原因はわからないし、治療法もありません。当科には、気のせい、年のせいと片付けられ、困り果てて来院される方が多いです。――PPPDの患者さんはどのくらいいるのでしょう?生坂:めまいを診る専門機関では、良性発作性頭位めまい症に次いで多い(15~20%)ことが分かっています。――診断はどのように行われるのでしょう?生坂:以下に示す診断基準5つを全て満たす場合に、PPPDと診断しています。(1)浮遊感、不安定感、非回転性めまいのうち1つ以上が、3ヵ月以上、ほぼ毎日認める。(2)持続性の症状を引き起こす特異的な誘因は存在しないが、「立位」「特定の頭位によらない動き」「動いているものや複雑な視覚パターンを見たとき」の3つの状況で増悪する。(3)他の神経疾患や疾病、心理的ストレスによる平衡障害が先行して発症する。(4)苦痛が強く、 機能障害を引き起こす。(5)他の疾患では説明がつかない。――治療法はあるのでしょうか?生坂:あります。この疾患概念は従来の恐怖性姿勢めまい (phobic posturalvertigo:PPV)と類似(これを包括)した概念であり、従来当科では、類似例をすべてPPVと診断し、治療は当科または心療内科で認知行動療法と抗不安薬ないしSSRIで対処して来ました。ただ実際には恐怖症の要素が少ない場合もあり、そのような症例は現在、PPPDとして、治療も認知行動療法+SSRIで対処しています。――2017年に新しい疾患として発表されて以降、「原因不明」ということで千葉大学に紹介されてくる患者さんは減ったのではないですか?生坂:それが、減っていないのです。PPPDどころかPPVすら一般医はもちろんのこと専門医にも浸透しているとは言えない状況です。患者さんの多い疾患ですので、医師はもちろん、一般の皆さんにも、この疾患に関する知識を積極的に広めていかなくてはならないと感じています。めまいは、生命に別条はなくとも、QOL(生活の質)を著しく低下させるため、当事者にとっては死活問題になる。発症頻度が高いにもかかわらず、これまで「原因不明」とされ、治療されてこなかったPPPDに診断名が付き、治療できることが分かったら、救われる人の数は恐らく、医療界が想定している以上に多いに違いない。ひとりでも多くの患者さんをPPPDに理解のあるめまいの専門医に繋ぐべく、読者のみなさんにもぜひ情報のシェアをお願いしたい。』
先日、総武線各駅停車で突然倒れたて対応した学生さんも、もしかしたら持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)なのかもしれない。原因不明の病気の方が多いのは確かなのだ。
発症頻度第2位、実は「原因不明」とされていた「めまい」の正体
ふらつきが怖くて電車に乗れない
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67600
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?