真っ向勝負の横綱。稀勢の里関引退に寄せて。
シゲクです。荒磯親方(元横綱稀勢の里)は2019年1月16日に現役を引退し、2019年9月29日に断髪式が行われました。
私が大相撲を見始めたのは、父親の影響でした。初めて会った力士は、父と同郷の元小結舞の海さんでした。その時の舞の海さんは幕内力士として、様々な技で強敵たちと闘っていました。当時子供であった私が覚えているのは、多くの大人たちの間から現れた舞の海さんが凄まじい気を放っていたことです。握手させて頂いた時、その凄まじい気が体に入ってくるようでした。
荒磯親方を特別に応援するようになったきっかけは、長年住んだ川崎から茨城への引っ越しでした。引っ越し先での慣れない環境の中で、荒磯親方の郷土後援会に入ることに決め、その後すぐに、後援会が主催する激励会に参加しました。
当時、大関であった荒磯親方は、舞の海さんとはまた違った凄まじい気を放っていました。これから優勝や横綱を目指す力士の姿は、多くの報道陣に囲まれながらも、くっきりと現れていました。長い列に並び、サインと写真、握手していただきました。
茨城県に引っ越して思ったことは、大相撲の場所開催中、荒磯親方の勝敗によって街の雰囲気が変わることでした。勝てば明るく、負ければ少しだけ暗くなっていました。少し前のことですが、とても懐かしく思います。
大関として優勝を目指していた荒磯親方は、ついに賜杯をつかみ取ります。様々な壁を乗り越え、優勝が決まった瞬間の荒磯親方の後姿は、忘れることが出来ません。優勝、そして横綱昇進。優勝パレードや報告会での誇らしげな荒磯親方の姿も、深く心に刻まれています。
報告会では、サインの長い列に並びきれなかった少年を呼び寄せサインを書いていた姿、ステージでパフォーマンスしていた人たちとの記念撮影など、荒磯親方のファンへの姿も印象的でした。
横綱として迎えた初めての場所で、荒磯親方は順調に白星を積み重ねていきました。しかし、終盤では誰が見ても深刻な大怪我を負ってしまいます。それでも気力を振り絞り、優勝決定戦で賜杯をつかみ取ります。優勝決定戦では、テレビの前で涙が止まりませんでした。
その後、怪我からの復活を皆が願いました。激励会でもう一度握手させて頂いた際には、何か疲れているような印象を受けました。背負っているものの大きさを感じました。
でも、その日はやってきてしまいます。もう荒磯親方の取組でのハラハラドキドキした感情を味わうことは出来なくなりました。引退発表後に開かれた激励会でスーツ姿の荒磯親方を見て、本当に引退してしまったんだなという寂しい思いと、これまで数々の感動を与えてもらったことへの感謝が溢れました。
引っ越しして心細い中、荒磯親方を応援することが心の大きな支えになりました。これからも荒磯親方が素晴らしい力士を育てていかれることを期待しています。
今日は、この辺で失礼します。