何ができるのか。
袈裟の仕立てを内職でやりながら感じていたことは、どんどん職人さんが減っていっている、ということだった。
他の分野の職人さんと同じく、袈裟も分業制になっている。
仕立てるには、生地を織ったり染めたり、張りをされたり、更には手刺繡をされる方など、多くの職人さんとの共同作業となる。
けれども、もう手張りされる方がいなくなって、機械張りになってしまったなど耳にするようになった。
仕立てをされる方も、ご高齢でやめられる…後継者もいなくて…という話をよく聞いた。
この仕事を始めて20年を超えるけれど、10年くらい経ってからやっと、この職人さんがいなくなるかもという肌で感じていたことを、法衣店の方と話すことができるようになった。
けれども、10年以上言い続けても現状は進行するばかりで、対応されることはなかった。
私がこの頃考えていたことは、まずは仕立てを教える環境を作ることだった。
着物を仕立てる和裁師と違って、法衣や袈裟の仕立てを教える機関も資格もないからだ。
でも、人を募ったところで、授業料を払ってまで来る人はそうそう居ない。
もしも学びたい!仕事にしたい!という方がおられても、賃金が安く生活できないのであれば、詐欺をするみたいなものだ。
なので、法衣店存続のためにも、職人を育てるために資金を出してもらえないか?そう考えていた。
そのようなことを話しても、聞いてはもらえても首を縦に振ってくれる方は皆無。
まぁ、だから、職人不足なのだ。
2023年12月。
ずっと仕立て料の値上げを交渉していたのだけれど、初めて事務職のお偉いさんから直接連絡をいただいた。
希望を抱いたのも束の間、「カタログを作ったばかりなので、次出すのは2年後。なんとかこのまま堪えてくれまへんか。」との返答だった。
ここには書かないけれど、更に続く発言に絶句。
プツン。
何かが切れた。
ここから、思考の方向が大きく変わる。
この電話は次につながる大きな1歩となった。