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司法修習に行かずに企業で働いてから、会社を辞めて司法修習に行ってみた
伝えたいこと
メリットもデメリットも捉え方次第
思っている以上に知識は抜ける
貯蓄はお忘れなきように
選んだ選択を正解にする
1.はじめに
これはあくまで私の感想です。
なので、メリットと思うこと、デメリットと思うことは、人それぞれです。
自分に都合の良い情報だけ受け止めてもらえれば、いいかなと思います。
2.企業で働くことにした理由
私は、法科大学院生時代に、途中で
なんで弁護士になりたいんだっけ?
となりました。色々悩みました。
もともとは、町弁で、社会のために、人のためにと考えてきていました。理不尽なことが許せない!みたいな気持ちで、色んな弁護士の方にも話を聞いてきていました。
けど、迷いすぎたので、司法試験受けずに就活することも考えましたし、社会人の先輩や友人にもたくさん話を聞かせてもらいました。
喧嘩の仲裁するの嫌だなあ
が、迷いの本質だったように思います。
じゃ、喧嘩の仲裁しないような働き方ってないのかなー。社会よくして、人を幸せする他の働き方ないかなー。どうしたら、いいのかなー。法律自体は嫌いじゃないし、使える働き方あればいいなーとぼんやり考えていました。
そのために、法学教室や法学セミナーの実務家のインタビュー記事などはコピーして、インハウスやら行政で働いてる先生やら、大手事務所の先生、刑事弁護の先生やら、いろいろな働き方について調べていました。
※これは、法科大学院の1年目からこつこつずっとやってました。
とはいえ、司法試験に合格しないのは、悔しいので、1回目不合格後から2回目までは受けると決めて、勉強していました。
2回目の司法試験終了後からは、必ず就活すると決めていたので、2017年6月からは必死に就活をしていました。
たくさんの企業を調べて、法務の働き方を調べて、法務部で働けるようにと就活をしていました。
今ほど、全然求人もなくて、探すのに苦労しました。
私は、前に勤めていた会社の説明会と上智大学であった説明会がきっかけで、企業内の法務部で働いてみたいと強く思うようになりました。
簡単に書くと、
チームで働くことが楽しそう
企業を通じて、より多くの人にサービスを届けて、人を幸せにできるのが楽しそう
法務部の人と話していて、楽しかった
企業の屋台骨を支えてる感じがカッコ良かった
自分の知らない世界を知れそうな気がした
企業の中でも人に寄り添うことはできるかもしれないと思った
法務の重要性が増してる気がしたし、ニーズがある気がした
こんな感じでした。
けど、何よりも司法試験受かってるか分からんかったので、やれることやって、不合格になったとしても、社会人として、きちんと働けるようにしたかったのが一番のバイタリティになっていたように思います。
内定が取れるまでは、すごく苦痛でしたが、何とか耐えて、2017年8月に無事に行きたかった会社の内定をもらうことができました。
その後、9月に司法試験に合格しました。
先輩や友人には、
絶対に修習に行け。
ほんまにいかんと後悔するで。
一緒に行こや。
絶対楽しいで!
とたくさん声をかけてもらいました。みんな、私のこと考えてくれて、真剣に言ってくれてたので、感謝しかありません。
すごく迷っていましたが、東京の大企業で働いてみたいなー、自分の知らない世界見てみたいなーと思ってましたし、社会人歴がないのもすごく嫌でした。また、ご縁があった会社へ不義理なことをするのも嫌でした。
あとは、天邪鬼なので、
修習ってなんなん?そんなにすごいの?弁護士ってそんなにすごいの?と意地を張って、修習に行かない選択をしたように思います。
(お恥ずかしい…)
3.企業に入社してみて
他の記事でも書いていますので、簡単に書こうかなと思います。
※「企業の法務部の強み」「実践!事業法務の進め方」「商標業務の歩き方」「明日からの採用担当」などに、書いてありますので、良ければご覧ください。
私の担当は、2017年11月入社して退職するまでに、以下の担当をしていました。
●商標・著作権担当
商標権の調査、出願、管理の業務をやっていました。あとは、著作権周りの相談を聞いていました。範囲としては、子会社も含めて広くライセンス契約や出願の支援などをやっていました。
あとは、商標権管理システムの導入とか、法律とは関係ないものの、業務改善には必要だったプロジェクトのリーダーをやらせてもらってました。
●事業法務担当
事業に関係する契約や、リーガルリサーチなどを主として担当していました。あとは、広告や表示に関わるもののチェックなども行っていました。
その他には、新規ビジネスに関係することや企業再編に関わるプロジェクトや子会社の事業に関連する法務支援なども行っていました。
いわゆる、ジェネラルコーポレートの業務を担当していました。
●採用担当
前職は、法科大学院生向けの採用をしていました。私も、この募集で採用してもらいました。
採用説明会の企画、広告掲示の連絡、面接官の調整、ESやホームページの改訂などの作業をしていました。右も左も分からず、先輩に迷惑をかけながらでしたが。
●営業実習と製造実習
新卒社員として入社したので、新入社員研修にも参加しました。メーカーだったので、長期で営業実習と製造実習でそれぞれの現場を体感しました。
ざっくりいうとこんな感じの仕事をしていました。
メリットというと、何かいやらしい感じがするので、嫌ですが、、
私は、上の仕事を通じて、以下のような学びや喜びがあったかなと思います。あくまで自分の感想ですので、、大目に見てやってください。
社会人としての最低限のマナーが身についた
自分のお金で生活できた
会社の中での仕事進め方を知れた
営業実習や製造実習を通じて、物づくりから販売までのサプライチェーンやバリューチェーンを理解することができた
素晴らしい同期や先輩と出会えた
法務部の働き方や業務の内容の全体像を知れた(誰がどんなことやってるか近くで見て話を聞くことができた)
他部署や他の職種の働き方や業務の内容を知れた
知らなかった法律を学べた(消費者法、知財法、個人情報保護法など)
契約書のレビューなどの法務部の仕事のお作法を学べた
クライアントとして弁護士の働き方を見ることができた。本当に企業法務のスペシャリストは凄い。
資格なんてなくても、凄い法務担当者は沢山いる
自分の関わった商品がローンチされて、毎回嬉しかった
他にもまだまだ書こうと思えば書けますが、こんな感じでしょうか。
辞めるときには、子会社や他部署の方から、何で辞めるの!一緒にもっと仕事したかったのにーって言われたりしたときは、本当に働いていて良かったなーと思いました。
じゃ、デメリットはないのか。
・総合職採用で働いていたため、いつどこに行くか分からないので、弁護士認定制度で弁護士資格を取るための要件が満たされるか分からない。推薦も必要だが、会社が推薦してくれるかも分からない。5年とか7年とか長すぎる。
・私は、法律以外の仕事がやりたくて入社したので、別に嫌ではなかったですが、法務以外の仕事もたくさんあります。経理、予算、会議のセッティング、議事録の作成、採用担当、組織開発、飲み会のセッティングなどなど。これって、当たり前のことなんですが、法科大学院生はあんまりイメージついてないように思います。やりたいことだけやれる訳では、もちろんないのです。
・よくも悪くと組織なので、動きにくい時はたくさんあるし、人と人との問題に巻き込まれることもあるし、自分と迷惑かけてしまうことがある。
・どんどん司法試験の知識は抜けていくので、修習にいく勇気がなくなります。仮に司法修習に行っても、法律事務所で働けるのかなーとも不安になってきます。
・辞めるのにすごく体力と気力を使う。もー、本当に会社辞めるって大変です。手続き、引き継ぎ、引越し、今後の就活のこと、お金、、もう考えるのが大変。辞める前は、本当にしんどかったですね。
こんなところでしょうか。
4.修習に行ってみて
私は、結局、丸2年会社で勤めて、司法修習にいくことにしました。私は、本当に司法修習に来て良かったと思っています。
上で、会社素晴らしい!って書いてたのに、何で辞めたの?と言われるかもしれませんが、私は弁護士資格を取っていないことが、心にずっと引っかかってしまったので、後悔してる間は前に進めないと思って、辞めることを決心しました。今いかないと、これ以上、司法試験の知識が抜け落ちると、本当に付いていけなくなると思ったからです。
あとは、法律事務所で働くのか迷っていたり、業界自体が斜陽産業だったこともあって、業界自体が成長してるところに行ってみたいなーと思ったのもありました。
じゃ、司法修習にきてみて、よかった点にいってみましょう!
いい仲間と出会えた
いい就職先と出会うことができた
訴訟の進め方や実務を知ることが出来た
実際に相談に立ち会って、弁護士や実務家と一緒に頭を悩ますことができた
検察庁や裁判所という絶対に見れないところの働き方をみて、体感することができた
訴訟書面の書き方を学ぶことができた
事実認定の考え方を知ることができた
普段触れてこなかった、町弁の仕事を体感できた
仲間と一緒にたくさん飲んで、喋れた
空いた時間でダンスの資格やらエクセルの勉強やら友達の研究のお手伝いやらインターンやらゴルフらや色んなことに挑戦できた
中途採用でもインハウスの新卒でも、法律事務所でも、色んな就職先の選択肢がある
まだまだあるかなーとは思いますが、こんな感じかと思います。
じゃ、デメリットは?このデメリットは働いてから、修習にきたデメリットのことです。修習に参加すること自体に、デメリットはほとんどないと思います(収入下がることくらいかな)。
・国保や税金が本当に大変。私の修習給付金は、税金と国保にほとんど持っていかれています。なので、社会人やられてから修習にいく方は、本当に幾らかかるのか厳密に計算してから、行った方がいいと思います。
・勉強が、本当に大変。びっくりするくらい知識が抜けてるので、導入修習とかしんどすぎて、悲壮感漂って気がします。これは、年末年始に、同期と一緒に勉強させてもらったり、実務修習が始まってからも、毎朝勉強してから、出勤して、夜は飲み会に行くとかいろいろ工夫してやったおかげで、何とかついて行けるようになりました。
・年齢的に、任官や任検するのは、ハードルが上がるかなと思います。不可能ではありませんが、足枷にはなるかなと思います。
・収入
・何で一度企業で働いてたんですか?と必ず就活で聞かれるので、そこはきちんと用意するなり、自分の思いを伝えられるようにするのが大切。
こんなくらいでしょうか?
あんまり、デメリットは無い気がしてます。
別に一年修習に来るくらい、キャリアのストップになるとは思わないので。
5.おわりに
私は、会社で働いたことは、ほとんど後悔してません。
しんどいことはありましたが、圧倒的に学びの方がありましたし、前職を通じた出会いが、私の新しい居場所にもなっています。
すぐに辞めてしまって、申し訳なさは未だにありますが、企業は組織なので私一人が辞めてもどうってことない!そんな弱い組織じゃない!って言い聞かせて、辞める決断をしました。
※実際、痛くも痒くもなかったと思います笑
会社でも修習にきてからも、面白い奴やなーとか、変わった選択した奴やなーと言われたりするので、自分のキャラクターをつけるにはいい体験になったかなとも思います。
ただ、過去に戻るなら、もしかすると司法修習に行っていたかもしれません。後悔しながら過ごした2年間は、全力で楽しみ切れなかったようにも思っているので。余計な雑念はないに限ります。
とはいえ、今の仲間や内定先と出会えたのは、前職で、働いたからなんだと思います。
何より大切なのは、自分で選んだ選択を正解にしてあげることなんだろうなーと思います。
大切な友人からの言葉ですが、この言葉に背中を押されました。
環境変える時が、一番人間が成長する。
もちろん、反動でしんどいけど、その分曲線的に成長するよ。吉田さんは、これでまた強くなれる。
今が後悔してきた自分とお別れするチャンスだよ。
自分のやりたいこと、見えてるんだから、思い切って挑戦しなよ。
長くなりましたが、この辺で。
-おわり-