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事業を推進する法務とは

伝えたいこと
法務のための法務を行うのではない。
事業を推進するための法務を実施する。

今回は私が事業を推進していく法務を実現するために意識していることを書いていきたいと思います。

①事実確認を丁寧に。担当者の話を全部聞き出す。できれば対面、ダメなら電話やZoomで聞く。

事実が異なれば、適用する法律が変わってくるし、対応も変わる、そもそも解決する課題が変わってくる。しっかり事実を確定させる。
もちろん、不確定なことも多いので、何が不確定なのか、どこがはっきりすれば解決できるのか、どこが目の前の事案の分かれ目になるのか、分岐点を意識して、仮説を持つためにも、いま目の前にある事実を把握する。
そのためには、文字だけでなく、声や目によるコミュニケーションを取る。悪意があって隠されていることはほとんどないだろうが、分からなくて困ってるいたり、言わなくてもいいと思っていたりするクライアントや事業担当者は多い。
テキストだけでは気づかない態度や仕草から、思いもしない情報が出てくることが多い。
私は、こういった場面に多く遭遇している。
ここで、きちんとコミュニケーションを取れば、次回以降に、どの情報を出せばいいのか、段々と事業部門のトラブルへの感度や契約書への感度が高まってくる。

②回答を作成したら、担当者が理解できているか確認。丁寧にフォロー。

契約書の受け渡しの窓口になってくれているのは、事業部門であるし、営業さん達である。法務が専門用語たっぷりの修正履歴やコメントを営業さんに送っても、すぐに理解することは難しいかもしれない。けど、契約交渉をしてくれているのは営業さん達である。だからこそ、法務担当者の仕事は、営業さんや事業担当者がきちんと契約の修正内容な意味について理解してもらえるように丁寧に伝えて、出来る限り契約交渉のコストや工数を下げることまでが仕事なのである。

③レピュテーションリスクがあるから、グレーだからと曖昧に言わない。事業へのインパクトがあるなら、具体的にどんなリスクやインパクトがあるのか伝える。

私もよくやってしまっていた。

グレーだから、
レピュテーションリスクがあるから、
やめておきましょうか。

本当に、それってグレーですか?グレーならどんなリスクがあるんですか?レピュテーションリスクって言われてる、レピュテーションってなんですか?リスクってなんですか?
ここの言語化を意識するようになってから、事業部の担当者の方の顔から、ほんの少しですが、?(ハテナ)が減ったように思っています。
すぐに思いつかなければ、クライアントと一緒に考えればいいと思っています。

どんなこと不安に思ってますか?
どんなリスク考えられそうですかね?

と聞いてみるだけ。
これが本当に大きな違いになると思っています。

④両極端な意見を考えてみる。様々な視点や立場で想像する。お客様、経営者、取引先の営業、取引先の法務など。

自分の立場(法務部としての立場)だけで、物事をみていたら、独りよがりな回答になってしまいます。法務部としての立場も大切にした上で、事実を俯瞰してみましょう。そして、お客様の目線で事案をみたり、自分の所属する企業の経営者の目線で事案をみたり、時には取引先の営業さんの目線で事案を見てみましょう。
すると、自分には見えていなかった事実や事実への評価が出てくるかもしれません。

こんなの難しい。
だって、その立場に立ったことないし。

だったら、経験者に聞いてみればいい。
自社の経営者に聞いてみればいいし、自社の営業さんに聞いてみたらいい。法務のメンバーには、他社の法務ならどう考えるかを聞いてみればいい。
自分の周りには、沢山の教材がある。

⑤資料や説明には項目ごとにタイトル振って箇条書き。理由と回答を別にして、結論先出し。

文書の内容に、正確性や根拠があることは言うまでもなく最低限。
内容の正確性と構成が伴えば、事業部門、経営層の理解は格段に上がる。
文書の構成次第で、受け手の川の理解度が変わる。
内容の正確性と同じ、またはそれ以上に、受け手の理解度が非常に大切である。
私は、前職時代に、過剰に接続詞を使わずに一文でわかりやすく表現すること、箇条書きで整理することを学んだ。

⑥事業部門の使う専門用語を勉強して使いこなせるようになる。

事業部門の頭にある絵にどれだけ心から共感できるかどうかが非常に重要。そのためには、クライアントの言葉を丁寧にかつ真摯に、まっすぐ受け止められるかが大切である。
そのためにも、我々の土俵で理解するのではなく、クライアントの土俵で理解することが非常に大切。
これは決して、知ったか振りをすることを勧めている訳ではない。

本当に理解して、使いこなす。
そのために、営業さんからきちんと営業資料を見せてもらう。

相手からの信頼はこれだけでも少し高まる。
そして、ビジネスマンとしての語彙力が高まり、事業理解が深まる。自分にとって、いいことしかない。分からない言葉をメモして、ほんの少し検索するだけ。手間を惜しまない。

⑦社内でのキーパーソンを抑える。マネジメントを巻き込むタイミングを間違えない。

社内のキーパーソンが誰かを知り、クライアント側のマネジメントの特性や勘所を掴んでおくことは非常に大切である。話を進めるのは、決裁者である。それは各企業の内部統制の仕組みから考えても当然のことである。
とはいえ、現場担当者をないがしろにしていいわけではない。現場担当者と一緒に、マネジメントへの持って行き方を真剣に考える。
その上で、マネジメントや経営層に案件を持っていく。
そうすれば、自ずと案件が前に進んでいて、周りが前のめりになっている。

⑧部内や関係部署への情報の前出しが非常に大切。一歩先を読んだ対応をする。回答作成時にも先回りして、契約書を作って渡すなど。

法務部内、法務と連携してくれている部門など、協力関係にある部署がたくさんある。まず自覚が必要である。

法務部門だけで、事業成長をさせて、未来を作れる訳ではない。

より良い未来は、仲間と共に作っている。

だからこそ、協力してくれる人にはきちんと事前に説明する。
この時に大切なのは、自分が事前にどう説明を受けていたら、次に動きやすいかを少し考える。
相手の立場に立つことが難しいなら、相手の立場に置かれた自分がどう感じるかをしっかり考える。

急ぎの案件であれば、ほんの一瞬でいいので、立ち止まる。深呼吸して、考えて、悩み事や事実関係を部内や関係部署にシェアする。

そうすれば、きっと誰かが、手を差し伸べてくれる。

⑨競合理解をする。事業理解にも繋がるし、ニュースや第三者委員会の報告書などがトラブル対応のヒントになる。

→事業理解をするためには、競合理解が必要不可欠。ベンチマークしている企業のことを知れば、自ずと自社の未来も予想ができる。
それを上回ることができるかどうかが、所属している企業の底力である。
競合企業が置かれている状況に、自分たちの会社がいつ置かれるか分からない。だからこそ、丁寧に競合や自分の業界のニュースを知っておこう。
リスク管理の側面から見ても、事業理解の側面から見ても非常に有効であると思う。

おわりに

何よりも大切なのは、事業部は自分たちにはできないフロントに立って金を稼いでくれてることへのリスペクト。自分たちは事業部を信じて、事業部に背中を預けてもらえるようになる。

そして、きちんと、事業インパクトを考えて、優先順位をきちんとつける。

課題の本質がどこにあるのか、事業推進のための法務をやってるか、法務のための法務になってないかをしっかり考えて、行動する。

そう、行動する。

-おわり-

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