Ep.23『楽しむこと』
(27歳、女性)
『こんばんは、ビール下さい。』
この店に来るのは半年ぶり。
最近は仕事の関係で足が遠くなっていた。
と言っても、
以前も数ヶ月に一回来るだけの、ごく普通の客の一人だ。
マスター『お久しぶりです。お元気でしたか?』
『えっ?私の事覚えていてくれたの?』
『うれしいです。』
こういったバーは、自分の名前を覚えてくれているととても嬉しい気持ちになる。
プライベートで嫌なことがあった私は、少し気持ちが楽になった。
昨晩、旦那とケンカをしたのだ。
原因は小さな事。
売り言葉に買い言葉で、お互いに強くあたってしまった。
しかし1日経っても、私は許すつもりはもうとうない。
こんな時に限って、これから友達夫婦と4人で食事する約束をしている。
彼女達とは半年に一回食事をする仲で、付き合いも長い。
気まずいな…
どう立ち振舞ったら良いのやら…
『マスター。昨晩旦那とケンカしちゃった。』
『しかも、これから友達夫婦と4人で食事なの。気が重いです…』
マスター『大丈夫ですよ。まずは旦那さんがどういった姿勢で来るか、様子を見てみましょう。友達夫婦との時間も楽しんで下さいね。』
私はその言葉を聞いて、また気持ちが楽になった。
辛い事は誰かに話す事で気持ちが楽になる。
食事会の前にマスターと話せたのも、何か意味があったのかもしれない。
この会話をせずに向かっていたら、友達夫婦にも嫌な気持にさせてしまっていた。
そして、せっかくの楽しい時間を台無しにしてしまっていたかもしれない。
『マスターありがとう。なんだか話したら、少し楽になりました。』
『食事会がどうなったか、次回聞いてくださいね。』
『私、楽しんできます。』
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グラス一杯の物語【シーズン3】
東京銀座にひっそりと構えるバー。来店されるお客様と、今宵最高の一杯をお出しするマスターのお話。ダサくてもホットな気持ちにさせてくれるエピソ…
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