しげちよ
東京銀座にひっそりと構えるバー。来店されるお客様と、今宵最高の一杯をお出しするマスターのお話。ダサくてもホットな気持ちにさせてくれるエピソードを、お酒と一緒にご堪能下さい。
ニセモノは本物(80歳、女性) 『(今日は最後に何を飲もうかしら)』 私はこのバーの常連客。 以前は近くに事務所があり、入ったのがきっかけ。 以来、お店の雰囲気とマスターの清潔感ある営業が好きで、通いつづけている。 思えば私も女性第一線、今の様に女性が働きやすくない時代で、夢中で仕事に取り組んできた。 中には『鬼の鉄人』とか『鋼の姉さん』と呼ぶ部下たちもいた。 激務やストレスの中、私をリラックスさせてくれるのはバーで飲む酒だ。 若い頃は部下達を連れて飲み歩き、
Ep1.『ロゼの思い出』(28歳、女性) 『(こんなところにバーがある。転勤で近くに引越してからもうすぐ2年が経つけど知らなかった。)』 『(入ってみよう…)』 『こんばんは、1人です。』 私は空いていたカウンター席に座り、マスターから温かいおしぼりを受け取った。 白い花のいい香りのするおしぼりで、少し心が落ち着いた。 初めて入るお店は、いつも少しだけ緊張する。 メニューを見ると、ワインからカクテル、ウイスキーまでと幅広いお酒が書いてある。 苦手なお酒が無い私
(34歳、男性) 『ビールください。』 僕は週一回、この近くにある英会話教室に通っている。 教室の後は決まってこのバーに来るのが、楽しみの一つになっている。 通い始めて一年が経過するが、上達していると、今日は先生に褒められた。 日本人はつい、正確な英語をしゃべろうとする。 その為縮こまってしまい、話すことに消極的になってしまう。 上達するのに大事なのは、失敗を恐れずに英語を話すことだ。 使わないことには改善点が見つからない。 幸い僕は、会話に関して抵抗や苦手
(26歳、女性) 『こんばんは、1人です。』 私がマスターにそう伝えると、まだ誰も座っていないカウンターに腰を下ろした。 『スパークリングワイン下さい。』 このバーは初めて来る。 今日は近くで通っている美容室に寄ってから、一息付きたくてネットでバーを探してみたのだ。 キーワードを入力して、一番最初に出て来たお店がここだった。 思ったより雰囲気が良くて、価格も易しい。 女性1人でも、とても入りやすいお店。 私は普段レストランの仕事をしており、同業ながら、飲食店
(40歳、女性) 『こんにちは、ビール下さい。』 『(やっぱりこの店のビールは美味しいな。)』 私は以前、近くに職場があり、仕事が終わると良くこの店で一杯飲んで帰っていた。 事務所が移動になり、約5年間お店には来れなかったけど、マスターは私の事を覚えていてくれた。 事務所がまた移動になり、通勤の途中にこのお店がある為、再び通う事が出来る様になった。 いつ来ても、マスターの営業や作り出す雰囲気が気に入っている。 紹介で、値段を気にせず近くの他のバーにも行ってみるけ
(45歳、女性) 『こんにちは、元気してる?』 『これ、お土産。』 ーありがとうございますー 私はこのバーのファンになった一人。 初めて来た時に、とても忙しい中マスターが1人で切り盛りをしていた。 ちょうど夏の暑い日で、ビールを注文する人が多かった夜。 私はたまたま空いていたカウンターに座り、目の前のビールサーバーを眺めながら飲んでいた。 マスターはどんな忙しくても、どんなに同時にビールを作っても、完璧な泡の状態でお客の目の前に持っていった。 その所作に、私
(50歳、男性) 『こんばんは。』 『ソーヴィニョン・ブランをくれ。』 俺はこのバーに通う常連客の一人で、今はワインショップで仕事をしている。 今月から転職し、以前いた業界とは全く違う分野で再スタートを切った。 出だしは順調で、マスターもワインを買いに来てくれた。 ー3ヶ月前ー 『マスター、白ワインくれ。』 俺は以前、近くのブランドショップで働いていた。 その頃は良くこのバーに立ち寄り、仕事とは関係のない話をしてから家に帰るのが習慣だった。 常連客とサッカ
(21歳、女性) 『こんばんは』 私はそうマスターに伝えると、前と同じカウンター席に座った。 このバーに来るのは3回目。 前回来た時に、私とマスターの田舎が近い事がきっかけで通うようになった。 それ以降、マスターの安心感ある対応が、唯一私の心を落ち着かせてくれる。 東京に出て来て3ヶ月。 何もかもが眩しくて、未だに慣れない生活が続いている。 今は楽しさが優先しているが、しばらくしたら、ホームシックになるのだろう。 人生初の一人暮らし。 娘が東京で一人だと、
(34歳、女性) 『こんばんは、1人です。』 私がマスターにそう伝えると、誰もいないカウンターに座った。 他にいるお客さんと言えば、 なんともスタイリッシュなマダムと、大御所音楽プロデューサーのような男性がスタンディングエリアで話しをしている。 私は一杯目のハイボールを飲み干し、おすすめの料理と赤ワインを注文した。 1人で来ているので沢山料理は注文出来ない。 それをマスターが察してくれたみたいで、数種類の料理を半分のボリュームで作ると言ってくれた。 相手の喜ぶ
(27歳、女性) 『こんばんは、ビール下さい。』 この店に来るのは半年ぶり。 最近は仕事の関係で足が遠くなっていた。 と言っても、 以前も数ヶ月に一回来るだけの、ごく普通の客の一人だ。 マスター『お久しぶりです。お元気でしたか?』 『えっ?私の事覚えていてくれたの?』 『うれしいです。』 こういったバーは、自分の名前を覚えてくれているととても嬉しい気持ちになる。 プライベートで嫌なことがあった私は、少し気持ちが楽になった。 昨晩、旦那とケンカをしたのだ。
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(52歳、女性) ーマスター、いつものウイスキーソーダ割ー 『私はテキーラサンライズ。』 私は彼に連れられ、最近このバーに来るようになった。 この雰囲気やマスターの接客が好きで、彼との待ち合わせ場所としても使わせてもらっている。 最近では趣味の旅行で買ってきたお土産を、マスターに渡すのが習慣になっている。 私は以前、旅行会社に勤めていた。 学生の頃から旅行が好きで、よく一人旅をしていた。 家から離れた場所へ出向き、そこにしかない景色や人、文化に触れる。 よく
(50歳、男性) 『マスター、いつものウイスキーソーダ割。』 ー私はテキーラサンライズー 俺はこの店に通う客の1人。 以前は一人で来ていたが、最近ではパートナーと来る事が多い。 パートナーもこの店を気に入り、趣味である旅行に行くたびに、お土産をマスターに渡す事があるぐらいだ。 日本の高度経済成長を経験した俺は、若い頃遊びに遊んだ。 酒、女、車に明け暮れた。 そんな中でも、この状態は長くは続かないという危機感を持っていた。 たまたま投資していた案件が上手く行き
(68歳、女性) 『お久しぶりです、マスター。』 『スパークリングワイン下さい。』 私は約半年ぶりに来たお店のカウンターに座ると、久しぶりのお酒に口を付けた。 以前は月に2回、近くで仕事がある度にこの店に寄っていた。 現在は母の介護と、知り合いの仕事の手伝いがあり、外出する回数がすっかり減ってしまった。 その為、この店からも足が遠くなってしまった。 時間が空いても、マスターは私の事を覚えてくれたみたいだ。 この店はイタリアワインが多く置いてある。 マスターは
(40歳、男性) 『こんばんは』 俺がマスターにそう言うと、自動的にビールが出てくる。 俺はこのバーに通う常連客の一人。 仕事が終わり、馴染みのバーに何件か顔を出し、一息ついてから自宅へ帰るのが習慣だ。 実家では両親と家内、子供がいて、ありがたい事に円満に生活する事が出来ている。 俺が生まれた地域ではサッカーが盛んで、物心ついた時からサッカーをしていた。 恵まれた体格と両親の応援もあり、俺は日本代表ユースまで上り詰めた。 将来は日本のフル代表に選ばれる奴がゴロ