Ep.7『同じ感情』
同じ感情(33歳、女性)
『マスター、レッドアイお願いします。』
私は東京出身、都内で働いている。
転職して3年。
ようやく生活が落ち着いて来た。
以前は飲食店で働いていて、その時出会った同じ年の男性と28歳で結婚した。
思いのほか、
想像とは違う生活にお互い意見が合い、1年足らずで離婚する結末となった。
今は実家から歩いて行ける場所に一人暮らししている。
兄貴も近くに住んでおり、結婚して子供がいる。
月に一回家族全員で集まった時に、その子の遊び相手になるのが私の役目になっている。
人生の幸せってなんだろう。
人の数だけ、幸せの形も違うのは理解している。
でも子供の頃に抱いた夢や、好きだった恋愛マンガ、テレビドラマの様にはいかないわね。
私から見て、容姿や才能に恵まれているアーティストや映画俳優も、自ら命を絶ってしまうニュースが度々ある。
他の人には分かり得ないストレスや問題を抱えているのだろう。
きっと他人が聞いたら、『なんでそんな事で悩んでるの?』と言われるだろう。
私も離婚を経験し、当時は天から突き落とされた気分だった。
明るくて楽しい、幸せな時間が続くと思っていた。
しかし、時間と共にボタンの掛け違いが増えて来て、気づいたときには…
ひとり身に戻ったときに、地元の女友達が良く話を聞いてくれたっけ。
きっと彼女も、『そんなことが原因で別れるの?』なんて思っていたのだろう。
それにつけても、同じ話を飽きずに聞いてくれ、味方になってくれたことに本当に感謝している。
同情してくれる人の存在があったから、早く精神的に立ち直ることができた。
私が幸せになる事が、彼女への恩返しだろう。
『ねぇマスター。幸せってなんだろね?』
マスター『何かに感謝出来る数を増やし、感じて行く事ではないでしょうか。誰かのお陰で素敵な時間を過ごす事が出来る。なので私はお客様に感謝される行動を増やすことを意識しています。』
何かの本で読んだ事がある。
”人は幸福である事に気づかない”
私は今こうやって健康に生きている。
家族がいて、皆同じく元気に過ごしている。
この穏やかな時間こそ、私の幸せの一つであると気付ける感覚を、無くさない様にしたい。
『マスターありがとう。また来るわ。』
ここから先は
グラス一杯の物語【シーズン1】
東京銀座にひっそりと構えるバー。来店されるお客様と、今宵最高の一杯をお出しするマスターのお話。ダサくてもホットな気持ちにさせてくれるエピソ…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?