Ep.29『お酒との付き合い方』
(26歳、女性)
『こんばんは、1人です。』
私がマスターにそう伝えると、まだ誰も座っていないカウンターに腰を下ろした。
『スパークリングワイン下さい。』
このバーは初めて来る。
今日は近くで通っている美容室に寄ってから、一息付きたくてネットでバーを探してみたのだ。
キーワードを入力して、一番最初に出て来たお店がここだった。
思ったより雰囲気が良くて、価格も易しい。
女性1人でも、とても入りやすいお店。
私は普段レストランの仕事をしており、同業ながら、飲食店の雰囲気に目が行ってしまう。
他にも一人で来ているお客さんが多く見える。
私は2杯目に白ワインを注文し、しばらく本をよんでいた。
3杯目に白ワインをおかわりしたところで、常連のお客さんだろうか、1人の男性が話しかけて来た。
どうやら女性1人で本を読みながらワインを飲んでいる姿が珍しかったらしい。
彼とマスターを交えて、しばらく会話が盛り上がった。
地方出身の私は、酒好きな父の影響で一通りのお酒が飲めるようになっていた。
そして、自分が今好きなお酒も理解している。
そんな話しをした時間が心地よかった。
私は4杯目に軽めの赤ワインを注文した。
最近は赤ワインが飲めるようになった。
これも父の影響だ。
父からしたら、娘と酒を飲むのはどんな気持ちなんだろう。
それだけでも親孝行になっていたら嬉しい。
しばらくして男性は、スマートに帰られた。
私が普段飲んでいるお店の客の雰囲気とは、まるで違うのを感じる。
『このお店のお客さんは素敵な方が多いですね。』
マスター『皆さん、自分とお酒の付き合い方を理解しているのだと思います。』
そうか、自分とお酒の付き合い方を知っているのだ。
だから酒に飲まれる事も無ければ、他の人に迷惑をかける事もない。
以前はしていたのかもしれないが…
お酒との付き合い方を知っている大人はカッコいいと思う。
お酒は料理を引き立てたり、コミュニケーションを促進したり、とても楽しい部分を持っている。
しかしながら、飲み過ぎて体調を壊してしまったり、酒に飲まれて取り返しのつかない事をしていまう場合もある。
付き合い方によっては毒にもなるという事だ。
私は将来、お酒との付き合い方が上手な人と一緒になりたいわ。
そしていつか、父と3人でお酒を飲むのが楽しみだわ。
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グラス一杯の物語【シーズン3】
東京銀座にひっそりと構えるバー。来店されるお客様と、今宵最高の一杯をお出しするマスターのお話。ダサくてもホットな気持ちにさせてくれるエピソ…
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