ヘソを出すなら慎重に
今月の東京出張は、都内の電車移動が多い。歩く。バスにも乗る。また歩く。しっかり一日一万歩以上歩く。昨日、歩き疲れて、最後に乗った電車、池袋から上野までの山手線の車中でのこと。私は仕事だったが、世の中は三連休の最終日。仕事帰りのサラリーマンの姿はほとんどなく、休日を楽しんだカジュアルな服装の人たちで車内はいっぱいだった。
たまたま席を確保でき、座っていた私の目の前に、全身黒のストリート系ファッションでコーディネートされたカップルが立ちはだかった。女は、黒のカーゴパンツに、タイトな黒のショート丈Tシャツ。俗に言うヘソ出しTシャツ。ヘトヘトで背中を丸めて俯き加減の私の目の先、30cm前にそのヘソはあった。この至近距離で相手の顔を見上げるのは露骨だったので、私の目線は、うつむくか、へそのあたりをぼんやり見るか、この2択。疲労困憊の私の目の前にある、そのヘソにちょっと手を伸ばせば、指でほじくって、その臭いを嗅ぐことも容易に思えた。もちろん、その変態的なイメージ映像は大慌てで、すぐさま私の頭の中からはかき消された。
ぼんやりとヘソのあたりを見て気がついた。
ヘソの中が、汚れている? 黒いのだ。ヘソのゴマだけでは済まされない黒さ。恐らく、10〜20代の女子で、彼氏とのデート。ヘソ出しの格好で、これだけ黒い状態で家を出るわけがない。
考えられるのは、ヘソを出して家を出てから、その日の夜にこの山手線に乗るまでの間、日中に蓄積されたものであるということだった。
間違いない。彼女のヘソは街に舞う粉塵の標的となっていたのだ。どこを歩いたのだろう。
東京はまだ夏。汗で湿気を帯びるヘソは街の塵や埃をクイックルワイパー並みの吸着力で吸い寄せる。真夏のヘソだしは気をつけなければならない。もちろん、冬は冷えるのでやめた方がいい。春は風が強いので、これもやめた方がいい。ヘソを出すなら、秋。暑さが和らぐ、10月あたりが良いかも知れない。
昨日、札幌を発つ時の気温は15度だった。すでに朝晩は寒い。窓を開放して寝られなくなるほどに冷える。東京はまだ汗ばむ季節。気温差は約15度。9月中旬から下旬にかけては、北海道と東京との気温差が最も大きな季節。小さな国なのに、日本は広い。
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