媚びるの連鎖
人は2種類に分類することができる。媚びる人、媚びない人。
私のまわりにもどちらもいる。この媚びる人、媚びない人は白黒はっきり分かれるわけではないが、どこかに境界があって、その一線を超えると「媚びる人」認定となるのではないかと私は思う。
人は誰しも、相手に合わせなければならない局面がある。それは、常識的な社会人であれば、誰でも経験したことがあるだろう。それが媚びたということにはならない。
「媚びる」を辞書で調べてみる
1 他人に気に入られるような態度をとる。機嫌をとる。へつらう。「権力者に—・びる」「観客に—・びる演技」
2 女が男の気を引こうとしてなまめかしい態度や表情をする。「—・びるような目つき」
「媚びたことなどまったくない」という人は少ない。相手が、自分にとって畏れ多い存在であればあるほど人は媚びる。逆にこの意味で絶対に媚びない人がいるとすれば、その人は頑固な偏屈者でしかない。
私たちが日常「媚びる」という言葉を使うときは、この言葉の中にあらかじめ「媚びる目的」が規定されている。「自己保身あるいは私利私欲」 このために権力にへつらうような人間のことを「媚びる人」とみなすのだろう。即物的な私利私欲と、人としてのプライドを秤にかけて、結果私利私欲に軍配が上がってしまうような人のことを「媚びる人」というのだろう。「媚びる人」と「媚びない人」の境界は、プライドよりも私利私欲が優先されるその瞬間。
職場で管理職の人間たちは、部下たちからそういうところを見られる。そして多くの場合、「やはりこいつも媚びる人間か」と失望され、やがて
「尊敬できる人間がいない会社」として、新入社員からも見放されるようになる。日本企業の離職率が年々上がり定着率が年々下がる理由の一つなんだろうな、と思う。
「媚びる人」は目的が私利私欲だから、当然「媚びられる」ことを望む。つまり、「媚びる人」の連鎖によってやがて企業の経営層は、私利私欲しか考えないバカだらけになってしまう。
「あらゆる人材は、昇進によっていつかは無能になる」
というピーターの法則というものがある。私の媚び連鎖論同様、企業の経営は無能化低能化の萌芽を内包しているという点で共通している。いろいろな企業とお付き合いをした経験から言えば当たり前の話ではあるが、企業の成長性と管理職の起用傾向には深い関係がある。管理職が「媚びる」人間で構成されるようになる会社の将来は暗い。