販促コンペ2019の審査所感と「いい企画」を出す方法について
気付けば最後の更新から2ヶ月以上の月日が流れ、季節は夏から秋へ。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。お陰さまでこの2ヶ月めちゃくちゃ忙しくさせて頂いていたのですが、その間にnoteに書きたいこともいくつか溜まっているので、初の連続更新を狙ってみようと思います。さて何日続くことやら。
今回のお話はこれまた授賞式から1ヶ月以上過ぎてしまった販促コンペについて。松重は今年で3年連続一次審査員を担当させて頂いたのですが、審査の所感と「いい企画」を出すための方法について、改めて思ったことをまとめたいと思います。
今年の担当クライアントはワンカップの「大関」
販促コンペは毎年一次審査員が1人1クライアント担当させて頂くのですが、今年松重が担当したクライアントはワンカップでおなじみ「大関」でした。
課題は「ワンカップ大関」を日常の飲酒シーンに取り入れたくなる企画。お題の背景やブリーフはこのような形でした。
募集する企画の目的・目標
ワンカップ大関を飲んだ経験のない人が購入するきっかけをつくり、リピートしたくなるようにすることです。
市場の動向や、想定ターゲットとその特徴
発売から55年が経過しているロングセラー商品でありながら、購入層が高齢化し、世代交代できていません。カップ酒全体としてもマーケットは縮小傾向にあります。今回の企画では世代を問わず、カップ酒にネガティブなイメージを持ち、これまで飲用・購入したことのない方をターゲットとします。商品やサービスの訴求ポイント
ワンカップ大関は、スーパー・コンビニエンスストア・ドラッグストアなどのさまざまな流通チャネルにおいて、お客さまとの接点が多いことが強みです。また、飲みきりに適量なサイズで、グラスを必要としないデイリーユースにちょうどいい日本酒であることです。
表現上のトーン&マナーおよび注意点
未成年者の飲酒や過剰な飲酒を助長するような企画は避けてください。基本的には、発売から55年間変わっていない商品の形状、中身、イメージカラーは踏襲しつつ、それでいてカップ酒に対する先入観を変えるような切り口でのご提案を期待しています。
ちなみに今回の大関ですが、他のクライアントの課題の中でもダントツに応募数が多かったようで、なんと過去最多の527作品ものエントリーがありました…!大関やワンカップの知名度の高さを感じるとともに、ちゃんとした審査をせねば…!というプレッシャーもすごかったです(あとシンプルに審査めっちゃ疲れました笑)。
審査してみての所感
さて、そんな過去最多のエントリー数を誇る作品たちでしたが、審査をしてみると正直9割近くが微妙な内容…というなんとも残念な結果。。。
具体的には、こういったコンペでは基本NGとされている「アイデアかぶり」だったり、注意点に記載されている「商品の形状、中身、イメージカラーは踏襲しつつ」という基本が守られていないなど、ブリーフを無視したアイデア、「いや、面白いっちゃ面白いけど、実際どうやってやるの?」という実現性が全く考えられていないアイデア、「本当にそのアイデアで自分だったら買う?」という受け手についての想像が全く出来ていない独りよがりなアイデア・・・などなど。これによって8割近くの企画が脱落。あとは、着眼点は良かったのに、最後まで詰めきれておらず、原石のままで提出されたアイデアが1割という感じで、5段階中3以上をつけられたのは残りの1割程度という、色んな意味で辛い審査でした。。。
もし自分が審査したクライアントから一つも色付き受賞作が出なかったらどうしようと授賞式当日までドキドキしていたのですが、自分が審査した中でも比較的高評価をつけた企画がシルバーを受賞していたので、授賞式終盤にして、やっと心を撫で下ろすことができました。
では「いい企画」を出すためにどうしたらいいのか?
実は今回の販促コンペでは、事前にコンペ挑戦者向けに「いい企画のつくり方」というテーマで一次審査員がコラムを執筆するという機会がありました。
松重も「思いつき」を「企画」に進化させる、愛しくも苦しい10のステップというタイトルで寄稿させて頂いたのですが(こちらはまた今度別途noteにまとめ直す予定です)、今回評価された「いい企画」を出せていた人たちは、常日頃から「いい企画」を考えようとしていて、そのための調査だったり、深く考え抜くことだったり、どうやったら分かりやすい、見やすい資料になるかフォーマットを色々試していたり、ということを日常的に習慣化している人たちなんだろうなあと、審査を振り返って改めてそう思いました。
こういうものは一朝一夕で身につくものではないし、普段から意識することがとても大切だなと。それをベースとした上で、お題に対して、深く広く、そしてたくさん思考を重ねることで、思わず「実現することを想像して、ワクワクしてしまう」ような企画を形にすることが出来たんだと思います。
例えば、今回グランプリを受賞した「SkinLife for School(牛乳石鹸)」という企画ですが、基本的な要素は押さえている上で、女子のインサイトを見事につき、審査員が思わずこのアイデアが実現した様子「学校でSkinLifeが使われているシーン」を想像させられてしまったのではないかと思います。
審査委員長の博報堂ケトル嶋さんも、審査講評で「人が動くかのリアリティ、実現できるのかフィジビリティ、なるほどこのやり方があったかのクリエイティビティが不可欠」と仰っていましたが、改めてその通りだなと。
まずは「ブリーフをしっかりと読み込み、アイデアかぶりがないかどうかを調べ、実現性を意識し、このアイデアで本当に人が動くかどうか」を常に考え抜き、それを習慣化すること。それが「いい企画」を出すための唯一の方法じゃないかと思います。千里の道も一歩から。
なんて、自分も偉そうなこと言ってられる立場ではないので、もっと「いい企画」が出せるように地道に頑張っていこうと思います。