『メルカリ』という映画の中で、ネオのように目覚めて、タイラーのように生きている。episode 9
●アブダビ
ドバイ空港に到着すると、
『Abū Dhabī WORLD PRO JiuJitsu Festival』
のロゴマークの入ったチラシを持ったドライバーが迎えてくれた。
車種は分からないが、
映画の中で
トニー・スタークが後部座席で寛いでいそうな、
黒塗りの車に乗せてもらって、
ドバイ空港からアブダビまで、
約二時間ほどのドライブだった。
アブダビで過ごした五日間は、
40年を越える自分の人生、その全ての時間よりも濃厚に感じた。
今回この
メルカリアスリートになるまでのシリーズの中では、とても書き切れない。
アブダビで体感した、たくさんの出来事は、
"Abū Dhabī シリーズ"
として、またどこかでじっくり書きたいと思う。
今回は、
たくさんの出来事の中から、
いずれ
"メルカリアスリートに繋がる"
事だけ
ピックアップしていきたい。
●金メダル・マッチ
決勝戦、
金メダルを賭けて闘う
僕の対戦相手は、
僕と同じく左腕に障害のある選手だ。
ただ、僕の空気感とは全く異なる、
『マッドマックス』シリーズや
『リーサル・ウェポン』シリーズの
メル・ギブソンのような雰囲気を持つ、
ブラジルの黒帯柔術家だ。
計量時に体重計を覗き込んだら、
『75kg』
と表示されていた。
対する僕は、
日本を出発前に、
試合の緊張のためか、やや体調を崩して、
当時63kgぐらいあった体重は、
『59kg』
まで落ちていた。
黒帯vs紫帯
75kg vs 59kg
メル・ギブソンvsエキストラ日本人A
・・・・・どう考えても勝ち目が無い。
試合開始、
僕がテイクダウンに行こうとした瞬間、
強烈な右腕の力で潰された。
僕は亀状態で、
上からラペラ(柔術衣の上衣の裾)を使われて、
数分間
首を絞められ続けることになる。
首を絞められながら、
『ああ・・・遥々UAEまでやって来て、このまま何も出来ずに負けて、日本に帰るのか・・・』
そんなイメージが脳裏に浮かんでいた。
(続く)