『メルカリ』という映画の中で、ネオのように目覚めて、タイラーのように生きている。episode 12
●LIFE!
「世界を見よう、危険でも立ち向かおう。それが人生の目的だから」
ベン・スティラー主演の映画『LIFE!』
フォトグラフ雑誌『LIFE』編集部で、
ネガフィルム管理者として、
地味に平凡に、真面目に働くウォルター。
いつも空想ばかりしていて、
空想の世界の中では、
アクションヒーローだったり、
冒険家だったり、
好きな女性に格好いい口説き文句を言ってみたり。
しかし
『LIFE』最終号の表紙を飾る、
写真のネガフィルムを持つショーンの行方を探すために、
オフィスを飛び出したウォルターは、
"現実の世界"の中で、
ヘリから海に飛び込んだり、
道路のど真ん中を、スケートボードで滑走したり、
近くで火山が噴火して、車に助けられたり。
地味で平凡な人生も捨てたもんじゃない。
勇気の一歩を踏み出せば、
冒険なんていくらでも出来る。
●ライフ
海外の試合に出場するようになってから、
職場のみんなの、
僕を見る目は変わった。
変わったというのは、
良い方向に変わった人もいれば、
急によそよそしくなった人もいた。
『ハワイ行ったことないんですか⁉︎
障害者は海外に行くの大変ですよね〜』
と言っていた外国人好きのレディは、
僕の前では、旅行や海外の話を一切しなくなった。
『俺は若い頃、ボクシングで、市大会で優勝したことがあるんだ』
と言って、頼んでもいないのに、
切手二枚分ぐらいの大きさの、
変色した新聞の切り抜き記事をわざわざ職場に持ってきて、
僕に自慢していたバーコード頭の先輩社員は、
アブダビに行く前までは、
よく浅い格闘技話を、あーだこーだ僕に語っていたが、
アブダビ後は
僕に近寄らなくなった。
その反面、
応援してくれる人もいた。
支社長は
僕がアメリカの大会時、
会社のロゴマークを帯のところに付けて
表彰台に上がったことを大変喜んでくれて、
本社に伝えてくれて、
僕は"社長賞"を頂いた。
ちなみに
障害者雇用枠社員が社長賞を受賞したのは
初めてだったらしい。
文字通り、
僕は柔術を始めて人生が変わった。
僕はパラアスリートになって
人生が変わった。
職場でも学校の教室でも、
隅っこに一人、
誰を見てない、気にも止められない存在だった
僕の人生は、
40代にして変わった。
だから勇気の一歩を踏み出せば、
冒険なんていくらでも出来る。
●『パラテコンドーやりませんか?』
それは二回目の
アブダビワールド・パラ柔術の時の出来事。
ホテルの同部屋は、堀江 航さん。
片足の柔術家であり、
2022年時点で、パラ柔術家としては日本で唯一の黒帯柔術家だ。
航さんは、パラアスリートとして超一流。
車イスバスケットボールのプロ選手として、
世界中で活躍。
ドイツリーグ、ドイツカップ優勝、
ヨーロッパチャンピオンズカップを制したこともある。
パラアイスホッケーでは、
平昌パラリンピックに日本代表として出場。
さらに
パラカヌーで東京パラリンピックを目指していた。
ダルビッシュ有 似の航さん。
漫画『リアル』で、
花咲君が、イケメンの高橋君に言った、
『車イスになっても、女にモテる奴は変わらずモテるよ』
という台詞を思い出す。
2020東京オリンピック・パラリンピック開催まで、
約二年前の
2018年4月アブダビ。
『重さん、パラテコンドーやりませんか?』
航さんが僕に言ってくれたこの一言から、
僕の
『パラアスリート・サーガ season 2』
が始まる。
(続く)
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