『メルカリ』という映画の中で、ネオのように目覚めて、タイラーのように生きている。episode 14
●夢の続き
夕方仕事が終わってから、
高速道路を使って車で片道二時間超。
熊本でのテコンドーの練習は、
当時小学校や中学校の体育館で行なわれており、
夜21時30分頃に練習が終わると、
シャワーも浴びずに車に乗り込み、
鹿児島まで再び二時間超のドライブ。
食事は運転しながらコンビニのおにぎりを頬張った。
深夜0時過ぎに自宅に帰り着き、
シャワーを浴びて、明日の準備をして、
深夜2時前に就寝。
翌朝6時に起きて、
仕事に向かう。
そして
テコンドーの練習がお休みの日は柔術の練習。
タイラー・ダーデンは二時間しか眠らないらしいが、
この頃の僕は、
タイラー・ダーデン並みに狂っていて、
限りなくタイラー・ダーデンの睡眠時間に近付いていた。
睡眠不足と肉体疲労が原因で、
帯状疱疹を発症したこともあった。
当時45歳、
一般的に決して若くはなく、
毎日楽ではなかったけど、
中学生の時にやりたかったテコンドーを習っていることが嬉しかった。
同時に柔術を続けていられることが嬉しかった。
●キッズ・リターン
北野武監督の
映画『キッズ・リターン』が
昔から大好きだった。
落ちこぼれの高校生、マサルとシンジ。
マサルはヤクザの世界、
シンジはボクシングの世界で
それぞれ成り上がっていく。
順風満帆に行くと思われたが、
二人は"純粋"過ぎるが故に
大人に利用され
挫折する。
「マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかな?」
「バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ」
20歳にもなっていない二人の人生には、
希望があるどころか、まだまだ挫折もある。
だからまだ始まってもいない。
●僕のキッズ・リターン
僕がこの映画を初めて観たのは、
24〜25歳の頃。
それから、
何かに挫折した時、何か物事が上手くいかない時、女に振られた時、
『馬鹿野郎!まだ始まってもいねえよ!』
と呟いてきた。
まだ始まってもいねえよ!
と呟き続けて、
30才・・35才・・・40才・・・・
おいおい、一体いつ始まるんだよ。
このまま、
まだ始まってもいねえよ!と呟きながら
死んでいくのかもしれない。
だけど、
僕の"キッズ・リターン"は、
45歳にして本当に始まってしまった。
僕はたまたま45歳だったけど、
多分、
50歳でも55歳でも60歳でも70歳でも
本人が本気で望めば、
"キッズ・リターン"は始まるんだと思う。
それはただの"希望"ではなくて、
同時に
葛藤も苦悩も
挫折の覚悟も必要。
冒険は、
ただ楽しいだけじゃない。
大変な場面がなければ、
映画にならない。
●バタフライ・エフェクト
2018年、
東京オリンピック、パラリンピックまで
後二年。
まだコロナウィルスが猛威を振るう前、
日本の中心部は、
2020年のオリパラ本番へ向けて、
盛り上がりを見せていた。
しかし正直、
その"熱"は、南日本の鹿児島までは
それほど届いてはいなかった。
それがパラリンピックとなると尚更だ。
『パラテコンドーで東京パラリンピックを目指します。』
僕が誰かに決意表明しても、
今ひとつ伝わらない。
しかし
東京で起こっていた
『東京オリンピック・パラリンピック"バブル"』
は、
まるで
バタフライ・エフェクト
のように、
中央から遠く離れた南に住む僕に、
大きな大きな影響を与えることになる。
(続く)