見出し画像

岐阜県の国宝(建造物)の探訪録

 あけましておめでとうございます。越年しましたが、引き続き中部地方の国宝建造物の探訪録を淡々と掲載していきます。

 今回は岐阜県の国宝です。

 まずは、多治見市の古刹、臨済宗の永保寺です。

 この日も台風の影響で雨が降っており、探訪には不適でした。

 奥に国宝の観音堂が見える庭園は国指定名勝となっています。紅葉の時期はさぞかし美しいのでしょう。

 鎌倉末期の1314年に建立されたもので、屋根の極端な反りなどの外観だけではなく、全体的に禅宗様っぽいものかと思っていましたが、相当に和様が入っています。例えば屋根の裏側は屋根を支える垂木と言われる木材が見せずに板張りになっていること、軒桁(外壁の最上部にある横に渡した木材で軒を支える部分)を支える部分(斗栱)が複雑に木材を組んだ詰組が使われていないこと、土間ではなく床板を採用していること、正面の裳階(雨除けのための下の屋根)の下を壁を設けずに、広く縁側を取っていることなど、非常にスキッリとした佇まいです。

 庭園の奥で若干わかりにくいところにある国宝、開山堂です。霊廟ということもあって柵の中には入れません。こちらは裳階のない一重の屋根ですが、比べれば一目瞭然、こちらはバリバリの禅宗様です。軒下の構造が観音堂と違うことが、豪雨時の画像でも分かると思います。室町時代初期の1352年に建立されています。

 駐車場が境内からやや離れており、かつ急坂を下りますので、足が悪い方にはきついかもしれません。

 県北の高山市に移動します。

 市街地からだいぶ外れた山あいにある臨済宗、安国寺の経堂です。

 お寺に見学を伝えれば対処いただけるかもしれませんが、案内どおりに行くと石段手前に柵があり下から見上げるしかありません。ただし、脇の車道を登っていくと、このように稲荷神社の脇から難なく近くに行けます。

 安国寺とは足利尊氏らが全国に建立したもので、後に宗派を変えたところもありますが、圧倒的に臨済宗のところが多く、次に曹洞宗が多いです。

 経堂は1408年のものです。御覧のとおり二重の屋根(裳階)のフォルムは禅宗様っぽいですが、近くで見ると非常にシンプルな和様との折衷であることが分かります。屋根を支える垂木はやたら少なく、詰組も数も少なく、構造もシンプル。

 内部見学は要予約だそうですが、我が国最古の輪蔵という八角形の回転式書棚が設置してあります。マニ車というクルクル回す仏具と同じで、回した分だけ経を唱えたのと同じ効果があるとされるものです。予約すればよかった。

 経堂の裏には重要文化財の熊野神社本殿(といっても小さなもので無人の社の中に格納されて見ることはできません。)があったり、高山市街地にもたくさんの国指定重要文化財があります。

いいなと思ったら応援しよう!