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【STORY 2024-25 vol.7】 宮本一樹|飛躍と屈辱を経験し、再びB1へ挑む!ストレッチ5で新境地を拓くか

りそなグループ 2024-25シーズン B.LEAGUEで、2シーズンぶりにB1の舞台に戻ってきた滋賀レイクス。Get Louder!をシーズンスローガンに、ホームアリーナを熱く沸かせる戦いに臨む選手のストーリーを紹介します。

第7回目は#8 宮本一樹選手です。


レイクスで掴んだ達成感とプレーオフの屈辱

宮本一樹はU16年代から世代別日本代表に選ばれてきた、いわばエリートだ。196cmの身長とアップで軽々とバックダンクを決める身体能力は、日本人選手としては恵まれた才能を持っていることは間違いない。

ファイティングイーグルス名古屋(FE名古屋)での2シーズンは、特別指定市シーズン(B2)がプレーオフ含め8試合、ルーキーシーズン(B1)が27試合に出場したが、平均プレータイムが4分台となかなかチャンスを得られなかったが、「1シーズンでのB1復帰」を掲げた滋賀レイクスへ加入した昨シーズンは、B2プレーオフを含めた63試合に出場し、うち52試合でスターターを任されたた。「FE名古屋でもB2優勝とB1昇格を経験しましたが、その時はプレータイムも少なかったです。個人的にはレイクスのB2優勝とB1昇格にプレーで多く関われた昨シーズンの方が達成感はあります」と話すように、飛躍を遂げた実感を得られたシーズンだった。
 
ただし、B2プレーオフクオーターファイナルでは、青森ワッツとの1試合目にスタートで出場したものの、1敗を喫して崖っぷちに立たされた2試合目からベンチ外となった。

「ダビー(ゴメス前HC)から試合の入りは相手エースのジョーダン・ハミルトン選手に『ファールするくらい厳しく当たれ』と言われていました。でも、結果的にはHCの求める"厳しく"の基準に達していなかったようで、試合後に翌日のベンチ外を言われました。正直『ふざけんなよ!』と思いましたし、その日はイライラしてご飯も食べられなかった。あの試合、もし勝っていれば外されていなかったかもしれなかったかもしれませんが、とにかくあれは屈辱的な経験でした」 

その後のセミファイナル、ファイナルでは再びスターターに復帰したものの、簡単には消化できる出来事ではなかったという。

しかし、宮本には早稲田大学時代に足の骨折により10カ月のリハビリ生活を強いられ、一度はプロへの道を諦めかけた経験があった。今回も"挫折"に近いだったが、「あの苦しかったに比べれば大抵のことはマシ」という思いがモヤモヤを振り払った。オフの間にはしっかりと頭の中を整理して、今は前田健滋朗HCの元でスタートした新体制でも、ポジションを掴みに行くことにフォーカスしている。

新体制で求められる新たな役割

前田HCからは「オールラウンドに色々なポジションでやってほしい」と言われているという。早稲田大学時代に慣れ親しんだ4番ポジション(パワーフォワード)に加え、昨シーズンは「プロではほぼほぼ初めて」プレーしたという3番ポジション(スモールフォワード)でも多用された。すでにオールラウンドなプレースタイルを身につけているようにも思えるが、「ケニーさん(前田HC)からは5番ポジション(センター)も求められている」のだという。

5番ポジションは「ビッグマン」と呼ばれるセンター。役割は主にゴール下で体を張り、リバウンドを制し、インサイドプレーで得点を重ねること。昨シーズンまでレイクスに所属していた日本代表の川真田紘也のように、長身でフィジカルが強いパワー型の選手が担うことが多いポジションである。そしてBリーグではヘビー級の外国籍選手と互角に渡り合うことが求められる。

ただし、宮本の場合はいわゆる「ビッグマン」としての5番起用ではないようだ。

「僕を5番で使う時はチームとして機動力を出したい時だと思う。なので、フィジカルを一から鍛え直すとかはやっていません。それは自分の特長が失われるし、チームもそれを求めていないと思います。使われ方としてはいわゆる“ストレッチ5”的な感じだと思います。3・4番の選手がコートをかき乱して、僕がポップアウト(外側へ飛び出す動き)して3Pシュートを決めたりとか、そういう役目になると思います」
 
宮本は小学2年から中学まで「ビッグマン」だった。中学3年時には全国中学生大会(全中)で活躍し、JBL(日本バスケットボールリーグ)主催のビッグマンキャンプに招集されるなど、5番としての経験は持ち合わせている。桐光学園高校からは、自分のサイズでは5番ではトップレベルでは勝負できないと感じてから3番に転向。そして早稲田大学ではリバウンドの強さとシュートのうまさを買われて4番を主戦場にしていたが、チームのエースを担った大学4年時はビッグマンとしてパスを捌き、ゴール下で得点も重ねていた。もちろん、大学での5番とBリーグとでは求められるプレーは異なる。とはいえ、体に染み付いている5番のスキルは、今求められている役割を全うする上で役立つに違いない。

「(ストレッチ5としては)3Pシュートは確実に決めないといけない。最低でも成功率30%くらい。あとはリバウンドです。今シーズンはサイズ(チームの平均身長)が下がってしまうので、僕のリバウンド能力が求められる。昨シーズンよりも多く取れればチームも楽になると思いますし、インサイドの選手が体を張っている時に後ろからチップしたりだとか、リバウンド数だけではなく、常にリバウンドに関わりに行くことが大事だと思います」

宮本個人としても2シーズンに戻ってきたB1の舞台。「ストレッチ5」の新境地を拓き、今度は主役として花を咲かせられるか。そして、宮本がブレークを果たせば、それは今季のレイクス躍進へと直結するはずだ。