【STORY 2024-25 vol.5】 常田耕平|入団前からブースターを虜?主役にも脇役にもなれる男はチームの潤滑油
りそなグループ 2024-25シーズン B.LEAGUEで、2シーズンぶりにB1の舞台に戻ってきた滋賀レイクス。Get Louder!をシーズンスローガンに、ホームアリーナを熱く沸かせる戦いに臨む選手のストーリーを紹介します。
第5回目は#17 常田耕平選手です。
「ファンのファンになる」宣言の真意
「僕をレイクスブースターのファンにしてください!」
かつて新規契約リリースに載せる入団コメントの中に、こんなコメントを残した選手はいただろうか?興味深いコメントを残した常田耕平。レイクスブースターにとって、B1復帰をかけたB2プレーオフの第一関門であるクオーターファイナルで、的確な3Pで冷や汗を欠かされながら、バスケ少年のような笑顔とのギャップに強烈なインパクトを植え付けられた男だ。
新シーズンが始動してすぐに7月12日に行われた新体制会見に参加した常田は滋賀の記者に囲まれた場で真意をこう述べた。
「ブースターさんは、もちろん選手のファンだとは思う。でも、逆もあるよなぁと。前所属の青森では会社経営が困難な時に皆さんの支えで持ち堪えた部分もあったし、純粋に自分は青森ブースターのファンだなって感覚がありました。B2プレーオフクオーターファイナルで滋賀レイクスと戦った時、あの熱狂的なブースターさんたちだったら、僕がファンになることもあるなと感じた。その気持ちを伝えたかったんです」
この飾らぬコメントに加え、甘いルックスと人懐っこい笑顔で、常田はすぐにレイクスブースターの心を掴んだ。
いろんな形で点の取れる選手
バスケット王国・愛知県出身の常田は、高校バスケの指導者である父の影響で競技を始めた。小学生の頃から身長は高く、中学まではパワーフォワード(PF)として主にゴール下で身体を張っていた。埼玉県の強豪である正智深谷高校へ進学すると、今度はポイントガードに転向。「中学まではインサイドプレーが中心でしたけど、高校ではガードに求められるドリブルスキルとか、レイアップシュートとか、自分で言うのもなんですが相当練習しました」といい、サイズもあり、バラエティに富んだ得点パターンを持つのが常田の強みのベースはこうして磨かれた。
昨シーズンのB2青森ワッツで平均25分出場し、1試合平均8.5得点。3Pシュート成功率37.3%、フリースロー成功率88.2%といずれも高い数字を残している。「ドライブや3Pシュート、カッティングもあれば、ファストブレイク時にはリムランもあります。いろんな点の取り方のイメージはあります」というように、"点の取れるガード"と評価されることも多い。だが、自己分析では「昔からエース気質ではないですし、チームで最も点数を取りたいわけでもないです。どちらかといえば“見えない貢献”をしたいタイプなんです」と冷静に見る。
「誰かが点を取った場面では、リバウンドを頑張ったり、スペースを作ってくれたりといった周りの選手による影のプレーが必ずあります。例えば、(野本)大智さんが3Pシュートを打つ場面だったら、僕が相手ディフェンスを引きつけるポジショニングができていれば、大智さんはもっと楽に打てます。逆に大智さんがドライブすれば、今度は僕が空くので3Pシュートが打てるという場面もあると思います。そう考えてプレーするのが自分の特長なんです」
一方でこうも理解している「そういったプレーは、自分が得点力のある選手であってこそ機能するものだと思うんです。そういう意味では"点が取れるガード"というのは目標ですけど、僕自身は“いろんな形で点を取れる選手”だと思っています」
チームがうまく機能するために主役にも脇役にもなれる、いわゆる“潤滑油”のような何でも屋。そんな常田に声をかけたのが、クラブにとって運命のプレーオフで、常田に冷や汗をかかされた滋賀レイクスだったのだから面白い。実際はレギュラーシーズンの活躍ぶりからすると声がかかっても不思議のない成績だったが、オファーを最初に聞いた反応は「え、マジ?」だったそうだ。
B2で残した数字が、B1での目標
「B1に上がるチームは、B1から有望選手を連れてきて強化するのが普通だと思っていました。けど、原さん(滋賀レイクス・原毅人代表取締役社長兼SD)はB2の選手である自分に『B1に上がった時に力を貸してほしい』と声をかけてくれた。全く予想していなかったので『え、マジか?』と(笑)。原さんは何気なく言った言葉だったかもしれないけど、あの言葉に心を掴まれましたし、グッと来るものがありましたよね」
そんな期待に応えるため、常田は一つの目標を立てている。
「昨シーズンにB2で残した自分のスタッツと同じくらいの数字を、B1でも残したいと思っています。単純にB1は相手のフィジカルやサイズもB2より上だと思いますし、特別指定選手(三遠)としてB1は経験しているものの、ほぼほぼB1初挑戦という自分には高い目標だとわかっています。でも、オフシーズンに一つ一つのスキルをB1仕様にアップデートしてきた自信もあるので、それをしっかりとコート上で表現できれば可能な数字だと思っています」
レイクスブースターの熱量に心を掴まれたという男が、今度は滋賀ダイハツアリーナでブースターの心を奪いに行く。