採用ステップ④プロモーション──「Web」「パンフ」「SNS」の特性を知ろう
ここまで、会社・人の理想のあり方を描く「人材戦略」、それを踏まえた「採用計画」、魅力を表す「採用戦略・コンセプト」の3つに分け、採用のフローを解説してきた『採用を成功に導く8ステップ』。今回からはいよいよ、立てた戦略の実行フェーズに入ります。
まずは自社メディアを使って行う「プロモーション」。利用できるツールはたくさんありますが、何をどこまでやるか、「Web」「パンフレット」「SNS」それぞれの特性を踏まえながら考えていきましょう。
受け皿となる「Webサイト」
“Webサイトがないのは、その会社が存在してないことと同じですよ。”
これは、ある合同インターンシッププログラムの最終プレゼン中に、参加学生から出てきた言葉です。少し極端に聞こえるかもしれませんが、これだけスマートフォンで何でも調べられる時代に「検索して自社サイトが出てこない」のは、求職者にとってもはや会社の存在がないに等しいといえます。実際、地方のBtoB企業などの中には、日々の業務でWebを活用する機会があまりなく、形だけのサイトでほとんど情報がない会社もまだまだあります。
Webサイトが魅力的=いい会社、というほど単純ではありませんが、特に若い世代にとってサイトの充実度は、会社への関心を左右する重要なファクターであるのも事実です。SNSなどで「よさそうだな」と思ってもらっても、調べてたどり着く先のサイトが「微妙……」と思われた瞬間に、信頼されなくなることは十分にありえます。
また、社内における「採用」や「人材育成」への力の入れ方も、求職者はサイトでしっかり見ています。ページ内に前回立てたコンセプトを、わかりやすい形ではっきり打ち出すようにしましょう。このとき、自社サイト(コーポレートサイト)のデザインやシステム、社内確認などの制約を大きく受ける場合は、採用のための独立したサイトを用意する方法もあります。
採用サイトをつくる方法としては、無料で感覚的に作成できる『ペライチ』『STUDIO』『Wix』などの利用や、一定のデザインテンプレートを購入して独自で作成する(Webサーバなどの準備と、コードの知識が必要です)、制作会社につくってもらう(金額は10万円〜数千万まで)などがあります。かけられる費用に応じてデザインのクオリティや使いやすさ、コンテンツの充実度、運用の自由度などが変わってきます。
とはいえ、重要なのは費用の大小ではなく、求職者や社員の方々にメッセージを的確に伝え、思いや姿勢に共感してもらうことです。まずはそこをきちんと認識しつつ、自社でどこまで担えるか、どこを社外に頼るべきかを検証し、自らに合った選択肢を取るようにしましょう。
(手前みそですが、いろあわせでコンセプトづくりからお手伝いをした採用サイトです)
対話ツールとしての「パンフレット」
一方、紙媒体である「パンフレット」は、採用プロセスのオンライン化が進むにつれて以前ほど大量に、ボリュームのあるものをつくらない傾向にあります。しかし、まったく必要性がないとは言えません。
例えば、実際に求職者とお会いしたとき、手渡しできる資料があることは、認知を高めるうえで大きな強みとなります。「あとでぜひサイトを見てください」と言っても、口頭で伝えるだけではよほど興味を引かない限り、わざわざ検索してもらえないからです。
また、対面でのコミュニケーションツールとしても、とても使いやすい媒体です。仮に数ページの冊子でもあると、「特にここがおもしろくて……(魅力を伝える)」「今こう書いてるけど、実は……(過去の経緯を説明する)」など、話を膨らませやすくなります。保護者などの第三者から信頼を得るためにも、紙媒体は有効です。
もちろん紙面は有限なので、経営者のインタビューや社員の対談企画などを掲載できないケースも多いでしょう。当然ながら、動画など若い世代に馴染みあるコンテンツも扱えません。ライトな企画を気軽に試したり、柔軟に追加や変更を加えられるのは、やはりWebに優位性があります。
なのでパンフレットに求められるのは、まずは事業内容、採用コンセプトを始め本質的な情報が集約されていること。そして二次元バーコードなどで、WebサイトやSNSへの導線がきちんとあることだと言えます。
制作については、印刷会社やデザイン会社に頼む方法、最近ではWeb制作会社に紙媒体を同時発注する方法も一般的になっています。
進化し続ける「SNS」
『Instagram』『Twitter』『YouTube』『TikTok』など、自社の存在を認知してもらうためのSNSの運用は、採用戦略においても今や重要な位置を占めます。特に近年は、動画をきっかけに会社に興味を持ってもらい、そこからDMやWebサイトを経由して採用に結びつくケースも増えてきました。運用を継続的に行うなかで、時に大きな拡散力を期待できるツールになっています。
ただし、継続的な運用というのは実はかなりコストがかかります。SNSはトレンドの変化が激しく、1年後には「今とまったく違う活用方法」に対応しなくてはいけないことも十分にありえる。まずはその中で、「トライアンドエラーをやり続けることのできる担当者」の存在が大きな鍵になると言えるでしょう。
また、限られた時間や人的資源の中で、すべてのSNSに手を出そうとしないことも大切です。どのSNSが効果的かは、業界、事業内容(BtoB事業かBtoC事業か)、届けたい層などによっても変わります。
そこでまずは、担当者が個人で使ってみながら、「うちの会社だとこのSNSが相性がよさそう」「自分はこれをやってみたい」と感じたところから、集中的に運用を始めることをお勧めします。私たちも日々さまざまなチャレンジをするなかで、SNSはやればやるほど、どこにも正解がないツールだと感じます。簡単ではありませんが、ぜひ新しい求職者との出会いを「人事が楽しむ」姿勢を持って臨んでいただけたらと思います。
(「採用ステップ⑤採用支援サービス」に続く)
(編集:佐々木将史)
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