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いま、採用で注目したい『履修履歴活用』とは?(後編)

学生の採用選考において、少しずつ注目が集まる『履修履歴活用』

前回の記事では、実際に採用現場で今起こっている変化と背景、さらに『GPA』という指標について紹介しました。

今回は、GPAの課題について改めて整理をしつつ、人事としてどのように自社の採用に「学業の成績評価」を組み込んでいくべきか、具体的に考えていきたいと思います。

GPAの抱える課題


前編で述べたように、GPAという制度そのものは普及しているものの、採用選考での活用が進んでいるわけではありません。実際に人事の方々にGPAへの意見を聞くと、肯定的なものばかりではなく、ネガティブな反応もいくつか挙がってきます。

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最も大きな課題は、「数値評価」を「人物評価」につなげる方法です。ここには、3つの視点があります。

まず、そもそもの基準が曖昧である問題。何をもって優・良・可(あるいはS、A、Bなど)とするかは、大学ごとに違います。同じ大学内でも教授によって変わります。それを、均一に評価してしまっていいのかという議論です。

2つ目に、GPAで公開されている情報に制約があること。多くの大学が落とした単位(不可)を公表しておらず、なぜスコアが下がったのかがわからない。また、取った単位名を見ても「それで何が学べているのか」が解説されていないので、企業としては判断が難しいという問題があります。

3つ目は、数値評価が一人歩きしないかという学生の懸念。前回も書いたように、学生側は単純に数値だけでなく、その内容をしっかり見て判断してほしいと感じています。こうした問題に対して、企業は大学側に働きかけ、学びの内容の「見える化」をしっかりと進めてもらう必要があるでしょう。

また、企業側の意見には、他にも「成績より、素直さや優しさを重視したい」「学業と仕事の内容は一致しないから、成績悪くても大丈夫」といった意見が一定数あります。

ですが、個人的にはこれは、『履修成績活用』を取り巻く変化の本質を、企業がきちんと認識できていないことも一因だと考えています。大学が「質的転換」を図り、授業スタイルも変わりつつある。ディスカッションできる人も実際に育っている。

そうしたなかで、きちんと活躍できる人材を評価し「見極める」スキルが、むしろ企業側に今求められている、と考える方がいいのではと思っています。

「学業の成績」について、どう聞くのがいいのか?


つまり、企業も大学も活用に向けての課題がまだあるなか、お互いの理解を進めていく段階にあることがわかります。では、人事は具体的にどんなアクションをとればいいか。

採用選考で、GPAを単純に数値としてだけ見始めてしまうと、ただの偏差値評価と一緒になってしまいます。「○○大学を出たからすごい」といった議論と変わりません。

そうではなく、「履修成績のどこを見たら、その人の本来の魅力が見えてくるか?」という本質を考え、きちんと活用する必要があります。

まだまだ多くの人が手探りをしている状況ですが、ここではアイディアを2つ出してみましょう。

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まずは、なぜその数値(成果)が出たのかを本人に聞く方法です。例えば、「Sという成績を取ったこと」を見るのではなく、「なぜSだったの」と尋ねる。あるいは、「不可」だったとしても、落としたから駄目なのではなく「何で落としたのか」「どこでつまづいたのか」を聞く。

そうすることで、単なる数値の列が、「立体的な人物評価の機会」になるわけです。

もう一つは、GPAを「本人の魅力に触れるための質問」の起点にする方法です。「自己PR」を迫ると、どうしても「すごいことを言わないと……」と気負ってしまって、うまくしゃべれない人もいます。でも、こういう客観的な成績から話を聞いていくことで、話しやすくなることがある。

エントリーシートの項目も「学生時代に頑張ったことを教えてください」ではなく、「大学の授業で、最も力を入れた単元名と内容について説明してください」とすると、学生はずいぶん書きやすくなるかなと思います。

例えば、「『地域再生論』という授業がすごくおもしろくて、自分はこんなことに興味があると分かりました」と話してもらえたら、“ガクチカ”からは見えてこない、その人の「本質的な魅力」が捉えやすくなる気がしませんか?

地方こそ『履修履歴活用』に積極的になるべき


高等教育を見直すことで、より「質」の高い人材を育成し、企業のイノベーションにつなげる。ここまで書いた通り、文科省や大学も、そこに向かって変わり始めています。また、学生は選考過程で「学業をきちんと見てほしい」と思っていることも、調査から見えてきています。

ローカルで採用に取り組むとき、一つ大事になるのは、こうした本質的な「世の中の流れ」と捉え、きちんと取り入れていくことだと思います。

今回の変化は、実はかつての『女性活躍推進』にすごく似た空気を感じています。「そんなことをして、生産性が落ちたらどうするんだ」なんて当初言われながら、蓋を開けてみると、きちんと取り組んだ企業が優秀な人材を集め、多様性を軸にしっかりと成長している

『履修履歴活用』も同じく、早めに手を打って、前向きに取り入れていると発信する。「柔軟に対応してます」という姿勢を見せる。すると、学生も「あの会社はちゃんと考えてくれてるな」「しっかり人と向き合おうとしてるな」と見てくれるようになります。今は検索やSNSの発信で、そうした取り組みが“距離を超えて”ちゃんと発見してもらえる時代です

なので、もし「地方だから」「滋賀だから」という理由で都市部の企業と採用力の差を感じるのであれば、ぜひこうした新しいトレンドを積極的に取り入れてみてください。今は「どこに本社機能があるか」よりも、場所を問わず「未来を見据えて積極的な挑戦を続けているか」の方が、選ばれる企業になるうえで、ずっと強い差別化要因となるはずです。

北川雄士/Yuji Kitagawa

滋賀県彦根市生まれ。株式会社いろあわせ代表取締役。
広告代理店、ITベンチャー企業の人事部門責任者の経験を経て、2014年にフリーの人事として独立。これまでに数千人の面接を経て来た。2015年末にUターン。ひと・もの・まちを“掛け合わせ”、それぞれが持ついろや魅力を大切にしたいとの想いで、株式会社いろあわせを設立。現在『しがと、しごと。』をはじめ、行政や地元企業と共に地域発の採用の仕組みや場づくり・まちづくりを積極的に実践中。(TwitterFacebook


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(編集:佐々木将史

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