人事のための面接ハンドブック⑧ 自社の「想い」の伝え方
明日から実践できる「採用面接のコツ」として、色んなノウハウをお伝えしてきたこの連載。面接の最初に“いい空気”をつくったり、自己紹介を掘り下げたりしながら、前回は成功体験の背景を探るところまでやってきました。
過去7回でお伝えしたのは、どれも応募者の魅力やポテンシャルを『引き出す』ための方法です。しかし、実は面接にはもう一つの大きな役割があります。
それは自社の魅力を、リアルな姿と共にきちんと『伝える』こと。この2つが成り立って初めて、その面接が「良い面接だった」と言えると僕は考えています。
では、何をどう具体的に『伝える』のか。今回から数回にわけて、アイデアを記していければと思います。
『伝える』の3要素──「想い」「魅力」「事情」
もし30分の面接時間があるとすれば、僕は最初20分くらいまでを、自己紹介と相手の話を『引き出す』時間に、残り10分くらいからはこちらの話を『伝える』時間に使っていきます。
(45分の面接なら、30分引き出して15分伝える……くらいのイメージです)
「ここまでいろいろと話を聞かせてもらって、ありがとうございました。逆に、◯◯さんにもこちらのことをちゃんと分かっていただきたいので、ちょっとお時間もらいますね」といった感じで、話題を転換していく。
このとき、応募者に『伝える』べきものが大きく3つあります。それが「想い」と「魅力」と「事情」です。
それぞれ大切な要素ですが、僕は中でも最も重要だと考える「想い」から伝えていきます。
募集にかける「想い」の伝え方
「想い」を伝えるというのは、なぜ今その募集をしているのか?を説明することにあたります。
例えば、「事業を今後こうやって変えていきたいと思ってるから、このポジションを務めてくれる人を求めて採用活動をしているんです」とか、「こんなチャレンジをしていて、そのために営業(あるいは企画、技術、バックオフィス……)の人が必要なんですよ」とかですね。
ここで大切なのは、人手が足りなくなっての採用活動の場合に、「欠員募集」という表現をしないこと。仮にそうだとしても、応募者には「そこを埋めた先に会社をこうしたい」「そのポジションが今後社内でこんな役割を担うから重要だ」などと、きちんと未来を示すことが大事です。
なぜか?
それは、「想い」を伝えることで生まれる事業または組織への「共感」こそが、入社後その人に活躍してもらうための重要な要素になるからです。
「想い」が人のポテンシャルを引き出す
もちろん、「想い」への共感がないと働けないわけではありません。「お給料をもらってるから頑張ります」──と「給与」が働くモチベーションになること自体に問題はないし、そもそもお互いのニーズが合致するところにしか、採用は成り立たないのも事実でしょう。
ただその考え方だけだと、入社後も「与えられた“条件”に向かって自分の力を出そう」という発想になりがちです。
でも、そこに共感が加わるとどうなるか。「想いの“実現”に向かってできることをやろう」と発想が変わるんです。すると、その人の持ってる能力やポテンシャルがより引き出されやすくなるんですね。
これは働く個人にとっても、実はすごく大切なポイントです。なので、人事は応募者に対してはっきりと「“お互い”のために、想いに共感してくれる人を求めている」と伝えてほしいと思います。
さらに、採用側の「想い」が応募者に正しく伝われば、次に続くポジティブな話としての「魅力」もネガティブな話としての「事情」も、より聞いてもらいやすくなります。
そうした副次的な効果までしっかりと見据え、『伝える』3要素の1つ「想い」を意識して面接に臨んでみてください。
(第9回「自社の『魅力』の伝え方」に続きます。)
(編集:佐々木将史)
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