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人事のための面接ハンドブック④ 『強み』の聞き方

人事のみなさんに向けて、明日から実践できる「採用面接のコツ」をお伝えするこの連載。前回は『自己紹介』を広げながら、「応募者と対話していく」方法を書きました。

ここからは、より踏み込んだ質問を応募者に投げかけていきます。第4・5回で取り上げるのは、『強み』と『弱み』の聞き方

どちらもよくある質問だけに、回答もパターン化しやすいのですが、ちょっとした工夫で相手をより立体的に捉える問いへと変えられます。ぜひ参考にしてみてください。

『強み』を聞くコツ①:「3つ教えてください」

まずは『強み』の聞き方です。僕が必ずしているのは、「3つ教えてください」と伝えること。

多くの人は1つしか用意していないので、聞いた瞬間に「えっ?3つ⁉️」ってなります。でも、それが良い。

その場で考えながら出てくる答え(2つ目・3つ目)には、あらかじめピカピカに磨いて持ってきた話(1つ目)からは抜け落ちてしまった、本人も気づかない“その人らしい”魅力が滲み出てきます

例えば「行動力があります」という話だけだと、勢いの面ばかりが語られる。でも、3つ挙げてもらうことで、実は細かくテキパキ段取りするのが好きだったり、挨拶をちゃんと大事にしていたり、といった隠れた側面が見えてくるんですね。

それって、本人は「わざわざ言うことじゃないのに」と思う話かもしれません。でも、そんな何気ないエピソードにこそ、むしろ人の本当の良さって表れてくるんです。

『強み』を聞くコツ②:「能力じゃなくてOK」

もう一つのコツは、3つ挙げてもらうときに、「能力じゃなくても大丈夫」と伝えること。僕は「例えば、考え方でも価値観でも、自分の好きなこととかでもいいので」って言い方をします。

『強み』ってよく、「他人と比べてすごいことを言わないと…」という思考になりがちです。そうすると結局、2つ目・3つ目でもついつい自分を“盛り”始めてしまう。

でも、「自分で自分の好きなポイントでいいですよ」と伝えると、さほど無理なく答えてもらえるんですね。相対的な比較をやめて、本質に近い特徴を口にしてくれます

それでも戸惑う人には、僕は今度「高校の部活の先生に褒められたこと」を聞きます。すると、「みんなの細かいところをよく見てるって言われたことがある」なんて話が出てくるので、そのエピソードをさらに掘っていく。

簡単ですが、こうした質問をしていくことで、相手の魅力をより立体的に理解できるようになります。

『強み』を聞く目的

面接で『強み』を聞くことは、応募者の特徴と、自社でやってもらう仕事がマッチするかどうかの『適性』を測るうえでとても重要です。

単に「営業に人がほしい」と考えていても、それぞれの会社でスタイルは異なりますよね。例えば、「とりあえず行って来て」と現場に出すのか、「研修してからじっくり」育てるのかで、求める特性は変わります。

一方で、仕事を通じて「人が伸びていく」ためのアプローチも、個人によって全然違います。「外で自由にやらせてほしい」人もいれば、「手取り足取り丁寧に指導して」と考える人もいる。

どれだけ魅力に思える『強み』でも、自社のスタイルとの『適性』がなければ、入社後に良い関係を続けることはできません。

なぜ『適性』が大事かは、こちらのコラムにも書いていますのでぜひ。

自社で活きるポイントを一つでも多く見出すために、個人の特性を正面からだけではなく、複数の側面から立体的に捉えられるようになるといいのかな、と思います。

(第5回「『弱み』の聞き方」に続きます。)

北川雄士/Yuji Kitagawa

滋賀県彦根市生まれ。株式会社いろあわせ代表取締役。
広告代理店、ITベンチャー企業の人事部門責任者の経験を経て、2014年にフリーの人事として独立。これまでに数千人の面接を経て来た。2015年末にUターン。ひと・もの・まちを“掛け合わせ”、それぞれが持ついろや魅力を大切にしたいとの想いで、株式会社いろあわせを設立。現在『しがと、しごと。』をはじめ、行政や地元企業と共に地域発の採用の仕組みや場づくり・まちづくりを積極的に実践中。(TwitterFacebook

(編集:佐々木将史

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