採用ステップ③コンセプトの設計──「魅力」を一言で表してみよう
採用全体のフローを8段階に分け、ローカル企業として意識したいポイントや、具体的なアクションを解説していく本連載『採用を成功に導く8ステップ』。
ここまでの2回で扱ったのは、会社・人の理想のあり方を描く「人材戦略」と、そこを踏まえた「採用計画」の策定でした。続く第3回は、計画の成否を大きく左右する「採用戦略」および「採用コンセプト」についてお話しします。
計画の成否を左右する「採用コンセプト」
前回の「採用計画の立案」では、どんな人を、いつ、何人採用するのか。そして実現のために、どんな活動をどの程度予算をかけて行うのかの全体図を描きました。
この計画を元に具体的な施策を実行していくわけですが、実はもう一つ重要なステップが残されています。それが、自社の「魅力の内容」と「魅力を伝えたい相手」を明確にし(=採用戦略の決定)、一言で端的に表す「採用コンセプト」を打ち出すことです。
以前、別のコラムでも触れたことがありますが、正直に言えば、コンセプトがなくても採用活動は可能です。しかし、これを明確に掲げることで、企業は自らのことをブレなく、そして強く求職者に伝えられます。
例えば「会社説明」のポイントが整理しやすくなるし、「サイトデザイン」の軸も見えやすくなる。「選考基準」が明確化され、お互いにミスマッチが減ることも期待できます。
過去の慣例に従っているとつい見過ごされがちですが、採用コンセプトをどれだけ的確に定めることができるかが、採用全体の成否を左右すると言ってもいいでしょう。
どうやってつくればいいの?
では、どうやって魅力ある、そして社内外に共感してもらえるコンセプトを打ち立てるか。手順としては、①コンセプトのもとになるキーワードを探し、②良さそうなものを採用過程に照らし合わせ選別していく、となります。
①のキーワード選定では、自社内の共通項、あるいは今の組織に足りないと思われる要素をピックアップしていきます。「この人がもう1人いたらいいな」と思う社員さんを具体的に選び、性格や仕事の進め方、モノの考え方などを挙げていくのも有効です。
そして、出たキーワードを整理する際に、②採用過程との参照を行います。説明会で、面接で、そのキーワードを使いたいと思えるか。ぴったり当てはまる人物が職場にいたら、実際どう感じるか。ピンとくる表現に出会うまで、この作業を何度も繰り返します。
具体的には、下の「やんちゃあつまれ」(扶桑工業株式会社)の事例記事が、プロセスを含めてすごくわかりやすいと思うので、ぜひ参照ください。「やんちゃな人」を求めるという軸ができたことで、なぜその応募者が自社に合う(or 合わない)と感じるか説明できるようになったり、「サイトのトーンをもうちょっとにビビッドにしましょう」「エネルギッシュさが伝わる写真にしましょう」といった判断がしやすくなったりと、いくつもメリットが生まれています。
すでに述べてきたように、企業の人材戦略は、経営の方針とも密接に関係してきます。とはいえ、その策定を主導していくのはあくまで「人事部門」の仕事。担当者はぜひ、このコンセプト設計時でも現場で見聞きしたこと、求職者から聞いた生の声などを思い返しながら、「うちはここがおもしろいと思う」「こんな人が実際に活躍している」「このワードは求職者に刺さりそう」などの意見を、どんどん出してほしいと思います。
つくったコンセプトを運用する
採用コンセプトが決まったら、それを周囲に積極的に打ち出していきます。このとき大事なのは、最初に社内への説明をしっかり行うこと。内部の理解度が低い、あるいは共感度が低いコンセプトは、どれだけ人事が頑張ってもうまく社外に伝わらないからです。
また、人事自らが「つくったコンセプトに従った意思決定」を率先して行ったり、ブレていると感じる判断にきちんと指摘したりすることも大切。気づけばコンセプトの重要度が下がり、形骸化していた……といった事態にならないよう、口酸っぱく言い続ける、くらいの心持ちが求められます。
もちろん、採用コンセプトを内部に説明する、またはそこから外部に伝えていく過程で違和感を覚えたときは、一度立ち止まるべきです。「なんかうまく説明できない」「あんまり共感が得られてない」などの疑問は素直に共有して、言葉を補ったり、タイミングを見て変えたりすることを検討しましょう。
一方で、「これはよさそう」と手応えを感じるコンセプトであれば、それを貫き続けることも重要です。すでに採用に力を入れている会社のなかには、「毎年コンセプトを変える」と決めている会社も見受けられますが、本当にその必要があるかは検討が必要でしょう。目的はコンセプトを入れ変えることではなく、あくまで自社に合う人材と出合い、採用につなげることです。
複数年度に渡り同じ言葉を掲げていると、一度設定したコンセプトが「文化」のように社内にじっくり浸透していき、採用以外に影響を与えるケースがあります。実際、上で例にあげた扶桑工業では、「やんちゃな人」を目指す人材育成プログラム「やんちゃ塾」が始まりました。
人事があえて口にしなくても、さまざまなシーンで社員が語り、企業イメージの重要な側面となっていく。そういった効果的なコンセプトを打ち出せるよう、納得いくまで言葉をブラッシュするようにしてください。
(「採用ステップ④プロモーション」に続く)
(編集:佐々木将史)
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