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採用ステップ⑥「自社説明」「面接」「内定」──魅力を伝えながら、魅力を引き出す

連載採用を成功に導く8ステップではこれまで、そもそもの人材戦略の策定に始まり、採用計画やコンセプトの策定、「プロモーションツール」「採用支援サービス」の活用など、求職者と出会うまでの道のりを一つずつ解説してきました。

今回はいよいよ、実際に求職者と対面して、内定を出すまでの選考プロセスの話です。「自社の説明」「面接」「面接結果の報告」の3段階に分けて見ていきましょう。

自社の魅力を対面で「説明」する

前回触れた就職ナビやスカウトサービス、あるいはSNSなどのツールを通じて自社に関心を持ってもらったら、人事が求職者へ直接「説明」をする機会をつくります。定期/不定期(新卒採用シーズン限定など)で複数人数に向けた説明会を開催する場合もあれば、出会った人ごとに個別対応するケースもあるでしょう。

どちらにおいても、まずは「人事担当者の第一印象」がそのまま自社の印象を大きく左右する、と認識しておくことが重要です。自分自身が広告塔でもあることを理解し、「おもしろそうだな」「楽しそうに働いてるんだな」と思ってもらえるような話し方や振る舞いを心がける必要があります。

その上で意識したいのが、相手が求める情報を簡潔に、魅力的に伝えていくことです。時々、冒頭から沿革や資本金の話をきっちりされる人がいるのですが、求職者としては「それより今は何をやってるの?」のほうが正直気になるもの。その話が現在の魅力にダイレクトに結びつくものなのか、“聞く側の視点”に立ってプレゼンテーションを組み立てましょう。

僕はよく、「会社を知る」「仕事を知る」「人を知る」の3つの切り口で説明をします。3点あれば自社のことが立体的に見えますし、頭にも残りやすい。いろあわせで提案する採用サイトでも、実は同じような構造で会社の説明をすることが多くあります。

(いろあわせで採用サイトを手掛けた、一圓テクノスさまの事例)

「会社を知る」では、どんな人々を対象に、何の事業をしているのか。それを踏まえての「仕事を知る」は、どんな職種があって、具体的に何の仕事をしているのか。そして「人を知る」では、実際にどんな人がいて、日々どういった環境で働いているのか

ミッション(存在意義)・ビジョン(目標)・バリュー(行動指針)などの理念をベースにしながら、先輩社員の姿などリアルな情報を裏表なく伝えます。「ここにエントリーしたい」と感じてもらえることが大切です。

「面接」で魅力を引き出し、伝える

一連の採用フローの中で、「面接」というステップそのものについては、以前から度々『しがと、じんじ。』で取り上げてきました。2019年に人事コミュニティを立ち上げたときの「第0回 しがと、じんじ。」のテーマも、まさに「良い面接とは何か?」。

ここでも述べているように、面接の役割は大きく2つあります。1つが『魅力を引き出す』。もう1つが『魅力を伝える』です。

『魅力を引き出す』ためには、まず話しやすい“空気”をつくる必要があります。そこから、自己紹介を掘り下げたり、強みや弱み、志望動機などに迫ったりしながら、「相手の良さ」を対話の中で知っていく時間にすることが大切です。

もちろん人事が意図を持って接しなければ、求職者の回答は通り一遍のものになりがちです。このあたりは別連載『人事のための面接ハンドブック』に細かなノウハウを載せているので、ぜひ参考にしてみてください。

面接の役割の二つ目『魅力を伝える』は、面接前の説明フェーズで触れている内容とも重複するかもしれません。でも僕は、相手の話を聞いたあと、もう一度丁寧に自社のことを伝えるようにしています。求職者の望む仕事内容や働き方を踏まえたうえで、それがこの会社だとどういう形で実現できそうか、より具体的に説明できるからです。

仮に面接で45分の時間があれば、15分くらいはこの再説明に使うイメージです。要素としては、ポジティブな側面の「想い」「魅力」、そしてマイナスポイントとしての「事情」があります。

特に組織の「事情」は、「魅力」の裏側ともいえる、人によってネガティブになり得る話です。あんまり伝えたくないな……と正直思うかもしれませんが、ここを隠してしまえば、入社後のミスマッチを生みます。逆に両面をきちんと伝えれば、より強く「魅力」に惹かれてくれる人が、相応の腹積もりの上で入社をしてくれると考えることができます。

「選考」から「内定」出しへ

選考プロセスでは、経営者が判断の中心を担うことが多いと思いますが、人事も積極的に自分の意見を出すようにしましょう。双方の主張が分かれた場合は特に、なぜこの人がいいと思うのかなど、「採用担当としての想い」を伝えるようにしてください。判断のズレのすり合わせを毎回きちんと行うことは、結果的に人事と経営者が互いの思考を理解することにつながっていきます。

なので、もし経営者が古い価値観などで判断を行っていると感じた場合は、そこに対する指摘をすることも必要です。「従来の労働条件に合う人じゃないから、この人はダメ」などと言っていては、今後選ばれていく会社にはなれません。採用市場の状況をきちんと捉えた提案ができることは、人事の腕が問われる大切なポイントです。

もちろん、そこから内定を出す仕事も重要です。結果だけではなく、「なぜあなたに来てほしいのか」をきちんと伝えます。フィードバックをもらえると、求職者はその内容を今後のキャリアに生かすことができますし、入社してからもこちらの期待を踏まえた行動を取ってもらいやすいはずです。

また、お互いに長く気持ちよく働けるよう、内定を踏まえた「条件」や「希望」を改めてヒアリングしておきましょう。こちらの「条件」「希望」もきちんと伝え、入社時期や給与体系など、双方が納得のいく落とし所をみつけることが大切です。

一方で、採用に至らなかった求職者への連絡でも、それぞれにメッセージを添えた対応をしてほしいと思います。「なぜ他の人に決めたのか」「どういった場所ならその人は活躍できそうか」のフィードバックを受けると、求職者の中に企業や人事担当者の存在が強く印象付けられます。SNS時代の就職活動では、そういった積み重ねが緩やかに組織へのポジティブなイメージを生み出すことにも、人事として丁寧に気を配っていくようにしましょう。

(「採用ステップ⑦内定辞退防止」に続く)

北川雄士/Yuji Kitagawa

滋賀県彦根市生まれ。株式会社いろあわせ代表取締役。
広告代理店、ITベンチャー企業の人事部門責任者の経験を経て、2014年にフリーの人事として独立。これまでに数千人の面接を経て来た。2015年末にUターン。ひと・もの・まちを“掛け合わせ”、それぞれが持ついろや魅力を大切にしたいとの想いで、株式会社いろあわせを設立。現在『しがと、しごと。』をはじめ、行政や地元企業と共に地域発の採用の仕組みや場づくり・まちづくりを積極的に実践中。(TwitterFacebook

(編集:佐々木将史
 

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〈Webサイト〉https://shigajobpark.jp/2022/08/01/3272/
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