自社の魅力は「人事以外」が知っている
採用のお手伝いをしていると、経営者や人事担当者が「うちの会社は魅力がなくてね…」などと言ってしまって、すごくもったいなと思うことがあります。
どんな企業であっても、そこで働いている社員がいて、そこが良いと思ってお付き合いしてくださるお客さんがいるから、事業が成り立っているわけです。魅力が一つもなければ、すぐに潰れていますよね。
本当に「良い人材を採用したい」という意志があるならば、それぞれの企業でも改めて、自社の魅力にきちんと向き合ってもらえたらと考えています。
人事には「良い情報」は入ってこない。
前回の記事でも、採用活動では自社の「良い面」と「悪い面」の両方を、求職者にきちんと伝えることが重要だと書きました。
けれども、人事の担当者自身が、自分の勤めている企業の「良い面」をきちんと分かっていないことが、実はすごく多いんです。
これには理由があって、人事というポジションはどうしても、“不満を聞く”役回りになりやすいからです。「すみませんちょっといいですか…」となってから聞くと、だいたいは「辞めます」「休ませてください」「上司と揉めてるんです」などのケースなんですね。
ちょっといいですかと声をかけられて「おかげさまで楽しく働いてます」と言ってくれる人はまぁ、いない(笑)。
基本的に労働問題とか、トラブル系の話しか社員側からは相談に来ないので、待っているだけだと、自社の「良い情報」はほとんど得られないわけです。なので、人事は、自ら能動的に“魅力を探しにいく”必要があります。
主観でなく、客観的な話を集めにいく
魅力探しは、何よりも「客観的な情報」に耳を傾けることに尽きます。人事担当や経営者が主観的に思うものではなく、それ以外の人の意見を集めることが大切です。
具体的には、まずは働く社員から。どれだけ小さい意見でも、(もしかしたら不満の方が多いかもしれないけど、)その人なりにポジティブと感じる要素を聞いてみてください。
すると、「給料安いなぁとは思うけど、転職しても今みたいな感じで、みんなと楽しく笑って話せるか分からないし…」とか、リアルにそんな声が出てきます。じゃあ、うちは結構風通しがいいのかもな、と見つかっていくんですね。
仮に「辞めたい」と口にする人でも、辞めていないなら、辞めないだけの理由が絶対にあります。まずはそこに、一つずつ耳を傾けていく。
もう一つの魅力の見つけ方は、お客さんに聞いてみることです。「うち何がいいんですかね?」ってことを、正直に教えてもらうなかで、見えてくるものがあります。
たとえば、「もうちょっとほんまは、技術力とかあったらええと思うけど…でも返事早いやん?」みたいな話をしてもらえると、顧客対応が柔軟だとか、人間関係を大事にしてるとか、そういった部分が実は魅力なんだな、と掴めてくるわけです。
地道に、自社を「良い会社」にしていくことも重要
もちろん、今ある魅力のポイントを探すだけではなく、「魅力そのもの」をきちんと高めていくこともすごく大事です。
本当に地道な日々の業務改善とか、組織風土を良くしていく活動をどこまでやり続けられるか。正論になってしまいますが、自社を今以上に「良い企業だな」と思えるようにしていく姿勢も、忘れてはいけません。
求職者は、「改善していく意欲が高い」「しっかりと新しいことにチャレンジしている」と企業から感じられるかを、きちんと見ています。その姿をきちんと見せ続けない限りは、良い人材はやっぱり来ないということも、魅力の探し方と合わせて認識いただければと思います。
北川雄士/Yuji Kitagawa
滋賀県彦根市生まれ。株式会社いろあわせ代表取締役。
広告代理店、ITベンチャー企業の人事部門責任者の経験を経て、2014年にフリーの人事として独立。これまでに数千人の面接を経て来た。2015年末にUターン。ひと・もの・まちを“掛け合わせ”、それぞれが持ついろや魅力を大切にしたいとの想いで、株式会社いろあわせを設立。現在『しがと、しごと。』をはじめ、行政や地元企業と共に地域発の採用の仕組みや場づくり・まちづくりを積極的に実践中。(Twitter/Facebook)
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“滋賀ではたらく魅力を再発見する”『しがと、しごと。』プロジェクトの一環で運営される、ローカルで採用活動に取り組む人事担当者のコミュニティです。
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(編集:佐々木将史)
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