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「新卒一括採用」から、多様な解をつくれる「通年採用」へ

大手を中心に、日本の企業でまだまだ採用の中心にあるのが、大学生を対象にした『新卒一括』の仕組みです。経営者や人事として働いている人の中にも、かつて自分も「一斉採用の選考から、内定をもらって社会人になった」という人は、かなりの割合でいるでしょう。

おそらく30代後半より上の世代の方は、それがほとんど唯一の「正解」であったし、その道に乗らないと人生の選択肢がかなり狭まるので、他の選択をしづらかったと思います。

しかし、今の若い人たちの中には、“新卒採用ならでは”のルールや仕組みを前に、自らの魅力を出せなかったり、遠慮してしまったりする人も、とても多く出てきたように感じます。(最近は「新卒フリーランス」や「新卒兼業」みたいな言葉も出てきましたしね。)

今回は、新卒一括採用の仕組みがどんな弊害を生んでいるのか、これから人事はどうやって採用に向き合っていけばいいのかを、一緒に考えてみます。

北川雄士/Yuji Kitagawa

滋賀県彦根市生まれ。株式会社いろあわせ代表取締役。
広告代理店、ITベンチャー企業の人事部門責任者の経験を経て、2014年にフリーの人事として独立。これまでに数千人の面接を経て来た。2015年末にUターン。ひと・もの・まちを“掛け合わせ”、それぞれが持ついろや魅力を大切にしたいとの想いで、株式会社いろあわせを設立。現在『しがと、しごと。』をはじめ、行政や地元企業と共に地域発の採用の仕組みや場づくり・まちづくりを積極的に実践中。(TwitterFacebook

企業にとって、いちばん合理的な新卒一括

先日も問題になった“内定辞退率”の予測開示など、世間で注目されることも多い新卒一括採用。そもそも企業の戦略として、ここまで浸透してきたのはなぜでしょうか……?

いくつも要因はありますが、1つ大きかったのは、「大学の卒業と絡めて、採用活動そのものが『年中行事化』(年度ごとのイベント化)してしまったこと」かな、と思います。

採用側にとって、イベント化するとスケジュールが組みやすく、予算も立てやすくなる。そこに向けて人材業界側も、「また“イベント”の季節が来ましたよ!!」と企業に毎年営業し続けてきたわけですね。

ぶっちゃけた話、新卒採用をビジネスとして見ると、人材会社にも、もちろん企業人事さんにも、「時期を決めて一斉に採ることは、いちばん合理的で楽」なわけです。

就活生はなぜ「しんどい」?

この仕組みは、就活の「正解」とされるものが画一的だった以前の社会では、学生側にとってもごく自然で、合理的だったかもしれません。

しかし、価値観が多様化してくるにつれ、「これって本当に『正解』なの?」という疑問が浮かび上がりはじめます。“はたらく”ことやその選択肢が、学校選びとは比にならないくらい無限になっているのに、横並びで他人と比較されながら、同時期に決断を迫られるからです

さらに最近は、SNSの発達により、自分で簡単に「他人と比較できてしまう」ようにもなりました

そのため、人の顔色を見ながら、取り繕った行動をしてしまう。ガクチカ(学生時代に力を入れていたこと)や自己PRで、思ってもないことを言っちゃう。また、各企業が同時に動き始めることで、たくさんの選択肢を前にどうしていいか分からなくなり、結局知名度のある会社に何となく入っておけばいいかとなる。

インターネットによって得られる情報は膨大に増えましたが、増えた分だけ選ぶ難しさも増えたんです。一部の目立つキラキラした人たちと比べることで、「自分はやりたいこともないのに……」なんて、余計に自己肯定感を下げてしまう学生も増えてしまったんですね。

“圧倒的多”の中から、本当に選べるか

一括採用の何が今問題かというと、“圧倒的多”と“圧倒的多”の中からお互いに選ぶ、という状況が加速していて、企業は「一人一人の学生」を、そして学生も「一社一社の企業」を、きちんと見られない状態が生まれていることです

だから、内容よりもイメージに頼りがちになる。企業は面接での話が上手い学生を選んでしまうし、学生は学生で、企業規模とか福利厚生で選んでしまうわけです。

でも、ちょっと考えてみてください。

“はたらく”ことの本質って、そんな表面的なところにあるんでしたっけ……?

「面接が得意じゃなくても仕事のできる人」はたくさんいます。また、「会社としては見た目華やかでなくても、実は優良企業でやりがいもある」ってことももちろんあります。

実際に大事なのはそういった部分ですし、本当は会社とか個人の魅力も、ステレオタイプな“スペック比較”で拾えないところにこそ、あるんじゃないでしょうか。

「目の前の相手にきちんと向き合う」ための通年採用

こう考えると、人事戦略として今後、とるべき道も見えてきます。一括でない採用戦略、つまり『通年採用』に目を向けていくことで、より本質的で学生ファーストな、「選ばれる企業」になっていくはずです。

有名なところでは、ヤフーなどがすでに一括採用を廃止して、通年採用に切り替わっていますね。でも、これが有効なのは、大手や有名企業に限りません。

通年採用の一番のメリットは、学生も企業も、「全体の中からベストっぽいものを選ぼう」という発想から、「目の前の1つの出会いに納得できるか」の考え方に変わることです

学生は、たまたま出会った企業でも、それが嫌な印象じゃなければ話を聞きに来てくれますし、自分に合っているとか、活躍できそうだと感じられれば、無名でも選んでくれます。

“圧倒的多”の中に、どんどん隠れてしまう一括採用を見直す。それによってステレオタイプな比較から脱却し、お互いをじっくり見極める状況をつくることが、今こそ企業にとっても学生にとっても必要なことではないかな、と思うのです。

(しがと、じんじ。について)

“滋賀ではたらく魅力を再発見する”『しがと、しごと。』プロジェクトの一環で運営される、ローカルで採用活動に取り組む人事担当者のコミュニティです。

※ 前回の記事では、人事経験者なら誰もが悩む採用時の「面接」について、大切なポイントをお届けしました。

※ 興味を持たれた方は、こちらのフォームからお気軽に問い合わせください。活動情報などをお送りします。



(編集:佐々木将史



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