人事のための面接ハンドブック⑫ 面接のおわりに
11回に渡ってお届けしてきた『人事のための面接ハンドブック』、いよいよ今回が最後です。一つの面接のなかで、求職者側・人事側それぞれが必要な情報を伝え合い、条件をすり合わせていく方法をこれまで書いてきました。
最後は、面接のクロージングです。お会いした方すべての方に気持ちよく帰ってもらうことは、長い目で見て「自社のファンを増やす」ことにもつながる、人事の大切な仕事。
選考過程における「次回」がある方・ない方を問わず、最後まで一人ひとり丁寧に向き合うことを心がけなら、以下の2つを面接の「締め」として行ってほしいと思います。
面接の締め①「質問」を聞く
1つ目は、『質問がないかを聞く』こと。これは今までの時間で相手が聞きそびれていた話や、「本当は知りたいけれど、まだ聞くか迷っている」疑問を引き出す、最大のチャンスです。
ただしこのとき、単純に「何か聞きたいことはありませんか?」と言うだけでは、まず質問は返ってきません。ほとんどの人は「大丈夫です」と答えるので、そのまま面接が終わってしまいます。「中途半端なことを聞いて減点されたくない」「最後にイメージを悪くしたくない」という心理がどうしても働くからです。
そうなってしまうことを踏まえて、人事側が具体例などを挙げながら、話しやすい雰囲気を意識的につくる必要があります。僕の場合、だいたいこんな感じのやりとりになります。
そうやって、多少無理にでも質問を引き出してあげる。実際、「残業したくないと思われたくないから」と残業の話を聞けなかったり、「評価を気にする人間という印象を与えたくないと思って」評価制度のことを質問できなかったり、などのケースはよくあるんですね。
そこの疑問にきちんと答えることは、相手の不安の解消はもちろん、「話を聞いてもらえた」という満足度にもつながります。質疑をただの社交辞令として扱うのではなく、オープンな姿勢を見せて信頼を勝ち取る、大事な機会と捉えるようにしてください。
面接の締め②「今後の流れ」の共有
2つ目は、『今後の流れを共有する』こと。今回の面接結果の連絡は、いつ頃届くのか。今後どういった選考過程になるのか。
応募者の立場から見て、できるだけわかりやすく情報を示します。同時に、ここでも「疑問があったら、本当にいつでもいいので気軽に問い合わせてください」と伝えます。
特にたくさんの人を面接する場合、何らかの手違いで連絡が行き届かない可能性もゼロではありません。そういったときに、応募者に「もうちょっと待たないといけないのかな」と考えさせてしまっては、すごく申し訳ないことになります。
余計な忖度は不要であることを伝え、どうすれば相手に安心感を与えられるかを常に意識しながら、面接を終えるようにしましょう。
人事が変われば会社が変わる
ここまで全12回に分け、僕が面接で気をつけていることを共有してきました。
ただ、「より良い採用活動をする」という本来の目的に即して言えば、これらは何も“面接”という場に限って有効なノウハウではない、とも考えています。
募集人数が少ないような中小の企業さんの場合、そもそも面接というスタイルをとる必要すらないかもしれません。「一度遊びに来てよ」でも「今度ごはんを食べに行こう」でも、接する機会を増やすことのほうが応募につながる可能性もある。そういったことを柔軟に考えながら、さまざまなトライをしてほしいと思います。
僕は、人事が変われば会社が変わると本気で思っています。人事の方のなかには、ときどき「会社がこうだから……」「予算がなくて……」といった話をされる方もいますが、仮にネガティブな状況があったとして、「人事が前を向く」ところからしか変化は始まりません。むしろ自らの工夫一つで、いくらでも会社を変えられるのが人事だと考えています。
連載で記してきた「相手の話を聞く」「こちらの話を伝える」方法は、人と接するあらゆる場面でも十分活きるものです。特別なことは何も書いてはいないので、ぜひ通してお読みいただいて、日々の実践に役立ててもらえたらと思います。
(編集:佐々木将史)
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