採用ステップ⑤支援サービス──「ナビ」「スカウト」「紹介」の特性を知ろう
「Web」「パンフレット」「SNS」の3つの特性を見ながら、自社メディアとして行う「プロモーション」について考えた前回の『採用を成功に導く8ステップ』(第4回)。続く第5回では、より多くの認知を獲得していくための「採用支援サービス」の活用について解説したいと思います。
大きく「就職ナビ・合同企業説明会」「スカウト」「人材紹介」の3つの視点に分け、求職者との出会い方を考えていきましょう。
認知を広げるための「就職ナビ」「合同企業説明会」
採用をしていくときの利用サービスとして、求職者も人事担当者もまず頭に思い浮かべる「就職ナビ」。事業内容や募集要項など、基本的な求人情報を掲載することで、求職者がさまざまな企業と出会いやすくなるプラットフォームです。
代表例としては、『マイナビ』『リクナビ』『あさがくナビ』『キャリタス』『エン転職』など。近年では『ワンキャリア』などの存在感も大きくなっています。掲載するための費用の相場は、記事の大きさや掲載順位・期間にもよりますが、おおよそ50〜200万円が目安です。
一定の情報を打ち出せるので、前回お伝えした「Web」(=採用サイト)の代替手段としても使うことができます。ただしベースの枠組みが決まっており、メッセージを自由に打ち出すのは難しいため、詳しい内容や社員インタビューはコンセプトに沿ってつくった「自社サイト」に載せ、そこと併用すると効果的です。広く見てもらえる可能性がある一方で、掲載件数が多く、自社の求人が埋もれがちになることも知っておきましょう。検索上位につけるためには、相応のオプションをつける必要があります。
地方で仕事を探している人に特化するのであれば、上記のような全国規模のナビサービスだけではなく、フリーペーパーや新聞の折込チラシ、Webであれば特定の“地域”に絞った形で詳しい情報を掲載するWebメディアを利用する方法もあります。特に昨今は各地にさまざまな媒体が登場しており、弊社いろあわせが2017年から運営している『しがと、しごと。』も、まさに滋賀に絞った形で、企業のリアルな姿と求人情報を「ずかん」として掲載してきました。
また、ナビサービスと同様、登録企業と求職者の出会いを広げてくれるのが「合同企業説明会」です。リアルの会場が舞台になることが一般的ですが、コロナ禍以降はオンライン型、リアルとオンラインのハイブリッド型も登場し、遠方の求職者もアクセスしやすい環境が整ってきています。
ブースを出すことはWebの情報を見てもらうよりも「偶然の出会い」が生まれやすく、ナビサービスにあまりコストをかけられない中小企業にもチャンスがあります。いろあわせでも毎年、県や市とコラボレーションするなどして、さまざまな合同企業説明会を開催しています。
こちらからアプローチする「スカウト」
近年になって利用が増えているのが「スカウト」サービスです。求職者が自らの情報を登録し、そこに企業の担当者がオファーをかけていくためのプラットフォームです。
代表例は『OfferBox』『キミスカ』『LinkedIn』など。求人情報も載せられる双方向のメディアとしては『Wantedly』『ビズリーチ』、上で紹介した『エン転職』『ワンキャリア』なども両方の機能を備えています。
多くの選択肢を前に、なかなか応募先を絞れない人にとっては、企業に声をかけてもらうことで「自分に合うかもしれない職場」を探しやすくなるメリットがあります。また、自ら応募するよりも「断られる(落とされる)リスクが少ない」と思える点も、利用者が増える一因にあるように感じます。
もちろん企業も、熱意を持ってアプローチすることで「待っているだけでは出会えなさそうな人に振り向いてもらえる」確率が高まります。企業名や事業内容を認知されづらいBtoB企業や、ローカルの企業には大きなチャンスがあると言えるでしょう。
また、大きく費用が発生するのは採用が決まった時点(サービスによっては多少の初期費用が必要)なので、利用のリスクが低いとも言えます。経験者採用か新卒採用かで差はありますが、相場は1人あたり30〜100万円ほど。少人数を採用するのであれば、一定額をかけても「実際何人採れるかわからない」ナビサービスよりメリットが出る場合があります。
ただし、アプローチに相応の労力がかかる点は、注意が必要です。データベースからの求職者の選定、個人に合わせたスカウト文面の作成など、担当者が丁寧に進めなければ、期待するような反応は得られないことも認識しておきましょう。
個人の特性に合わせマッチングを依頼する「人材紹介」
「スカウト」からさらに踏み込んで、個人のキャリアをサポートしながら人と企業をつなぐのが「人材紹介」サービスです。
「この業界が自分に向いているか迷っている」「次にどういうキャリアの選択肢があるのかわからない」といった求職時の悩みに寄り添ってもらい、柔軟に提案を受けられる点が人気で、利用する人が増えています。企業にとっても、興味を持ってもらう母集団を形成する必要がなく、客観的な視点で自社にマッチしそうな人を紹介してもらえるのは一つ大きなメリットです。
一方で、デメリットがないわけではありません。人材紹介は「成約率が1割だと優秀」と言われる業界。最初の相談に乗ってもらえた求職者も、そこから具体的にどのような職場を紹介されるか(本当に自分にあった仕事を紹介してもらえるか)は、実は不確定と言えます。
これは企業にとっても同様で、紹介会社に依頼したからといって、必ずしも紹介を受けられるわけではありません。採用が決まったタイミングでの成功報酬が基本なので、お金のリスクはありませんが、スピード感に差が出る場合があります。なお、成約時の費用としては、中途採用であれば1人あたり年収の3割前後(新卒採用だと一律で70〜90万円ほどが相場)を、紹介会社に払う必要があります。
そうした機会的なリスクやコスト感と、「就職ナビ」「合同企業説明会」や「スカウト」に比べて企業側の労力が少なくて済む点とのバランスを考えて、活用の判断をしていただけたらと思います。複数のサービスを組み合わせながら採用活動を進めている企業もたくさんあるので、ぜひ自社に合った活用方法を模索してみてください。
(「ステップ⑥採用プロセス」に続く)
(編集:佐々木将史)
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〈Webサイト〉https://shigajobpark.jp/2022/08/01/3272/
〈主催〉滋賀県
〈運営〉しがジョブパーク(受託企業:株式会社いろあわせ)
〈協力〉一般社団法人滋賀経済産業協会
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