吉野拾遺 下 20 寛成御子鷹狩ノ事
【寛成御子鷹狩ノ事】
ひろなりの御子の、いまだをさなうたはしましける時に、わかき殿上人あまたともなはせ給ひて、なつみの河の河よどのほとりにて、鷹つかはせて御覧ありけるに、かたはらにいとおほきなる岩の、えもいはれずおもしろきに、小松の生ひいでたるありけり。みこ御覧ぜさせて「この岩をかへりなん時、皇居の御庭にもて参れ。うへに奉らむ」と、実為中将にのたまはせければ、をさなき御心をおしはかりて、御事うけせさせ給ふ。鳥などあまたとらせ給ひて、かへらせ給へる時に、忠行侍従に岩をわすれ給ひ