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4-4 アロマで更なる深みへ

 アロマの先生は、ふんわりとした雰囲気と、どこか不思議な感じのする人だった。誤解を恐れずに言えば、ちょっと天然が入った感じで、不思議ちゃん(実際はとてもしっかりされています)。まだ日本でアロマが広まる前から本場ヨーロッパへ留学もされたくらい熱心で努力家で知識も半端なかったし、私たち生徒を本当に大事に思ってくれていて、私は絶大な信頼を寄せていた。

 しかし、不思議ちゃんだった。

 ついさっきまで、講義で「ラベンダー・アングスティフォリアにはモノテルペンアルコール類が含まれており、その一種であるリナロールには・・・」と真面目な顔で語っていたかと思えば、「それでは休憩タイムに入りましょう」と言った途端に、「そういえば、この間本を読んでねぇ。UFOって、見える人と見えない人がいるんだけどね・・・」と突然語り出したりされた。結構真面目な顔のまま。しかも、「見える人と見えない人がいるんだけどね」って、UFOは存在することがごく当然のように話し始められる。

 あまりの変わり身に、私はお腹を抱えて大笑いしそうだったが、先生は大真面目。でも、不思議なことに、先生が言うとそんな不思議な話も、「そういうこともあるんだな」と思えてくるのだった。


 アロマは、香り。香りは、目に見えない。「香り」の正体や、どうやってそれを人間が知覚しているのかは、科学的に大体のところがわかっている。そして、それがどうして、リラックスに役立つのかも。けれども、「大体のところ」であり、全てが科学的に分かっているわけではない。同じ精油、同じ香りでも、人によって、リラックスして眠るのに役立ったり、リフレッシュしてやる気を出すのに役立ったりする。香りは不思議。科学的に説明できる、でも、全てが分かっているわけではない。緩やかに不思議な世界へ繋がっているのだ。

 アロマは人の肉体的な部分だけでなく、精神的なところにまで深く作用する。そのため、それまで私が「オカルト」で片づけていた、科学的に説明のつかない「見えない世界」の話にも、容易にアクセスできるのだ。科学的な入り口を持っているにも関わらず。

 科学的な入り口からアロマの世界に入り込んだ私だったが、いつの間にか、かなりオカルト的「見えない世界」にも抵抗感がなくなっていた。「そういうことも、ありえますね」という気分だった。幼い頃、私は当たり前のように妖精たちの存在を信じていた。しかし、13歳のある日、「私は二度と、見えない世界のことを信じない」と重い蓋をした。重い重い蓋をしたはずなのに、その蓋は、アロマによっていつの間にやらふにゃふにゃに溶け始めていたのだ。


 アロマスクールでは、時々、外部から講師を呼んで、臨時特別講座が開かれることがあった。その中に、助産師さんを招いての特別講座があり、私はそれに参加した。メインテーマは忘れてしまったが、一つだけ、はっきりと覚えている話題があった。それは、「胎内記憶」の話だった。生まれる前のことを子どもが覚えているという、あれだ。

 「赤ちゃんが、お母さんを選んで生まれてくる」というのは、私には衝撃的な事だった。百歩譲って、お腹の中の様子を覚えているのは分かるとしても、お母さんのお腹に来る前の記憶って、どういうこと?輪廻転生?そんなの、神話の世界じゃないの?

 私は、「胎内記憶」の研究の第一人者である『池川明先生』の名前を、この時しっかりと覚えて帰った。むしろ、それしか覚えていない勢いだ。

 この出会いが、私の「見えない世界」への蓋を吹っ飛ばす、決定的なものになるのだった。

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