HANA-BI

オリジナル短編小説をお届けします。猫成分多め。Blog▶http://shidukumon.com/

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  • 愛のものがたり

    いのち、愛をテーマにした短編小説集

  • 動物のものがたり

    動物を題材にしたオリジナル短編小説集です

  • 大人の恋は、大人しい恋じゃない

    甘酸っぱい大人の恋物語短編集。どんなに泣いたって必ず立ち上がれる。経験を重ねた大人は強いのだから。

最近の記事

End of the year

あと数分で一年が終わる。台所で年越しそばの支度をしていると、後ろからいい感じに酒が回り、おーい今年は紅組が勝ったぞーと叫んでいる主人の声がした。返事をしないでいると、「おーい、聞こえてるのかー、紅組だぞー」とひときわ大きな声をあげた。 「そうですか、報告ありがとうございます」私の返事が聞こえ満足したのか、ふんふんと久しぶりに聞いたのであろう誰かの曲を、鼻歌交じりで歌っている。あまりに音程が外れていて何の曲か分からなかったけれど、本人が楽しげなので特に気にせず、リビングへお箸

    • 楽園

      お城を造っているつもりだった。永遠に汚されることのない、白く、輝く、私たちだけの城。それは楽園の中にあって、私たちはいつも、はるか彼方にある空に向けて手を伸ばし、笑っていたんだ。けれどある時、誰かが言った。それは残念だけど、砂のお城だったのよ、って。砂のお城は、いとも簡単に壊れてしまうのよ。あなたたちが手を伸ばし掴もうとしていたものは、同じじゃなかったってこと。 カーテンのすき間から入り込んだタクシーのヘッドライトで目が覚めた。枕元にあるケータイに手を伸ばし、時間を確認する

      • チャーの秘密の大冒険

        飼い犬のチャーが亡くなり、3日が経った。末娘のように甘えん坊で、家族皆からかわいがれていたチャー。茶色い毛並みに、つぶらな瞳。僕らはかけがえのない存在を失ってしまった。 日曜日、午前9時。寝室から出て、家中チャーがいそうなところに視線を送ってみる。けれどやっぱりどこにも姿はなく、まるで僕の心の中には、ぽっかり穴が空いてしまったようだ。 まだ誰も起きてこないしんと静まりかえったリビングでぼんやりコーヒーを飲んでいると、電話が鳴った。何かのセールスだろうか。悪いけれど今は電話

        • Raining

          その夜の雨ったらなかった。もし空が一つの大きな器だとしたら、それをひっくり返して中に入った水を全部ぶちまけたような、そんなひどい雨。 今日のためにと新調した真っ白のワンピースも、バーゲンで買ったブランド物のバッグも、わざわざ美容院に行って整えた髪の毛も。私を纏うすべてのものが一緒に泣いているのではないかと思うくらい、その濡れ方は凄まじかった。 ガックリと肩を落とし、全く止む気配のない豪雨の中を傘もささずにトボトボ歩く。明日になって、昨日の夜、恵比寿で幽霊見たんだと言う人が

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        記事

          Light

          「えーーーーー、国際結婚!?」エミコが突然大声を出し、隣に座っているカップル客が二人揃って怪訝な顔を向けた。エミコは酒が入ると声が大きくなりすぎるきらいがある。社会人になってもそのクセは全く抜けていないようだ。 周囲への迷惑に気づいていないエミコに代わり、向かいに座っているサナが隣に軽く会釈をし、詫びの姿勢を見せた。 「しーーっ」サナは自分の唇に人差し指を当てエミコに注意するものの、当の本人は全く気にする素振りもなく、「で? 誰なの? カナちゃんの結婚相手って」と鼻息を荒

          夏の終わり

          歳を重ねただけ、思い出の数は増える。 楽しい思い出もあれば、なかには、許しがたい思い出も。 先日読んでいた記事に、「許せない気持ちを持っている人は病気になる」とあった。真偽のほどはさておき、病は気から。確かに昔から言われている。 でも本当に許しがたい出来事に遭遇した時、どうしたら良いのだろう。病も覚悟の上で、憎むか耐えるかを続けるしかないのだろうか。 日曜日の昼下がり。ヨーコはベランダで、氷が溶け切り汗をかいたアイスコーヒー片手にぼんやりとそんなことを考えていた。テー

          夏の終わり