東大&京大の院試対策に使った本および勉強法とか(物理学専攻向け)
こんにちは、𝙎𝙝𝙪𝙩𝙖 です。試験は苦手だと周りに言い続けながら編入に続いて2年おきに試験を受けることになってしまいました。
本記事の内容はタイトルのとおりです。このたび北大理物から京大理物の理論系研究室に合格しました。また東大理物も併願(筆記試験通過の第1志望研究室落ち)していたので、この記事はこれらを志望する人の参考になるかもしれません。
注1:自分は本番で7,8割程度取るつもりで勉強していたので素粒子とかの人はもっと勉強しないといけないかもしれませんが、友達とか見ている感じ基本方針は変わらないのかなと思います。
注2:こういう記事はたくさんあると思うので色々参考にして最終的に自分に合っていると思うやり方を見つけるとよいです!
ちなみにサムネの写真は「お盆帰省の楽しい思い出の写真を共有していた家族ラインに投下した院試で限界の息子の写真」です。誰も反応してくれませんでした。
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普段の勉強
これから話す内容は説教臭いですが真理です。普段の授業の取り組み方についてなんですが、(先生が学部の内容を逸脱したことをしている場合を除いて)授業や演習の内容はその場で完璧にしておいたほうがいいです。少なくともわかった気になる努力はしておくべきです。質問して分からないところは潰しましょう(疑問によってはずっと残るかもしれませんが…)。院試の試験範囲は膨大なので、あとで一から復習するのは大変です。というか無理です。もちろん院試本番まで完璧に覚えておけるわけがないので「1回は勉強したな。」という感覚をつくっておいて、院試前になって読み返すだけで思い出せるなら完璧です。分からないことに必死で食らいついたあの頃の自分に感謝するはずです。
もし授業の受けられない、他学部等から独学して受験する方でしたら、以下の記事の編入試験独学のコツのパートが役に立つかもしれません。
院試勉強の進め方
直接的な院試勉強の話に入ります。B3以下の学生だと内容がピンとこないかもしれません。
研究室見学で東大の院生に聞いた院試対策として100%言われたのが、
過去問を解け
ランダウとか`りろでん`とかを読み返せ
でした。
ここからはこのアドバイスを受けて自分が実際にやったことになります。
過去問編
まず4月頃から過去問を1週間に1年分を目安に解き始めました。当然ですが全然解けないので教科書や問題集を参考にしながら埋めてみます。一部は自力で解ける問題もあって、だいたい自分がどこが分かってないのかが掴めます。解答はないので北大の素研同期やX(Twitter)で繋がった人と解答作成したりしました。また、各大学の過去問とその解答例で構成されているような総合問題集も解いてみてそこでも同じことをします。(時々間違えてたりするのですが)解答がある分こっちのほうが楽です。
注3:1週間に1年分を目安にしましたが、当時自主ゼミを4つ掛け持ちしていて全然取り組めなかった週がいっぱいあります。
問題集編
自分の苦手な分野が分かったら、それに合わせて各分野の問題集を解き進めます。例えば自分は電磁波の重めの問題とか量子の摂動とかをちゃんと演習したことがなかったので、そのあたりを既に持っている問題集で全部解きました。具体的な問題集はあとでまとめて紹介します。
教科書編
問題演習が進んでくると、綺麗にまとまっていて少しレベルの高い本。例えば
J.J.Sakurai『現代の量子力学』
砂川重信『理論電磁気学』
Landau『力学』
田崎晴明『統計力学Ⅰ,Ⅱ』
清水明『熱力学の基礎』
等を読み返しました。するとB2,B3で1回読んだときよりも味わい深くなっていることに気付きます。個人的にはこの感覚が院試勉強の一番楽しい瞬間だと思っています。私は田崎先生の統計力学なんかは初学で読んでいたわけですが、改めて読むと例えばDebyeモデルが学部物理の合体技みたいな発想からめちゃくちゃ正確な予言をしていて「いまの勉強が研究に活きそうだ」という感覚になれてよかったです。東大、京大は大問の最後のほうにその問題の物理的意味を問うてくることが多いので、こういった本を読み返して自分なりの物理現象に対するイメージを固めておくと対応できるようになると思います。とにかく問題演習をやると前提知識が整理されて頭に入ってきやすくなるので、問題を解くばかりではなく教科書の読み返しを挟むのが私のおすすめです。実際にこのときの勉強が京大の口頭試問で直接活きました。
注4:なんかnoteの趣旨上「試験に役立つからやりましょう!」ってまとめ方に毎回なってしまって自分でも気色悪いんですが、試験に役立つ=学部物理の理解↑なのでそのように捉えてもらったらと思います。
院試勉強に使った問題集
京大は傾向がよく分からなかった(正確に言うと全部出そうだなと思った)ので、基本事項以外は東大の出題傾向に合わせて対策しました。
使った本のタイトルと分野を全部書きます。
演習しよう力学【力学】
演習しよう電磁気学【電磁気学】
理論電磁気学(例題)【電磁気学】
演習しよう熱・統計力学【熱統計】
フロー式 量子統計力学【熱統計】
久保亮五 大学演習 熱学・統計力学【熱統計】
演習しよう量子力学【量子力学】
猪木川合 量子力学Ⅰ,Ⅱ【量子力学】
詳解 理論応用 量子力学演習【量子力学】
演習しよう物理数学【物理数学】
演習しよう振動・波動【物理数学】
詳解 物理応用 数学演習【物理数学】
詳解と演習 大学院入試問題<数学>【物理数学】
詳解と演習 大学院入試問題<物理学>【総合問題集】
TOEFLテスト英単語3800【TOEFL】
TOEFL ITPテスト完全制覇【TOEFL】
全問正解するTOEFL ITP TEST文法問題対策【TOEFL】
演習しようが多いのは私が北大生だから──というのもありますが、(大量の誤植に我慢すれば)かなりよくまとまっている良い問題集です。もちろんこれらを全部やったわけではなくて、前述の方法で理解が怪しいところだけやるようにしていました。九保統計なんかは5章をやるだけでも結構力がつくし役に立つと思います。この中でも個人的におすすめの問題集をピックアップしようと思います。
詳解と演習大学院入試問題<物理学>
物理の総合問題集で、東大や京大等の過去問から取ってきた問題が解答つきでまとまっていてかなり良かったです。電磁波や量子統計の問題が多めなので東大対策にぴったりでした。難しいのでいい勉強になります。
詳解と演習大学院入試問題<数学>
同じシリーズです。質の高い問題が多数掲載されていてめちゃくちゃいいです。もともと数理科学の記事だったみたいで、院試問題に対する筆者のレビューも見どころです。これで東大頻出のフーリエ変換や複素解析は完璧になると思います。
量子統計力学 ―マクロな現象を量子力学から理解するために
このフロー式シリーズは東北大学の授業がもとになっていて、演習しようの量子統計に満足できなかったのでこれで補完した感じです。1冊全部が量子統計になっていて、フロー式はこんな感じでピンポイントにまとめてくれているので自分の演習が足りてない分野を集中的に演習する目的で使うのがいいと思います。
全問正解するTOEFL ITP TEST文法問題対策
TOEFL ITPは文法で出題されることが決まり切っているのでやるかやらないかで全然点数が変わります。私はめちゃくちゃ英語をサボったほうですが、これだけはやっておいたほうがいいと自信を持っておすすめできます。あとやはり総合問題集的なのも1冊はやっておくべきでしょう。旺文社のやつとか。
注5:来年度から東大理物の英語はTOEICまたはTOEFL iBTのスコア提出に置き換わるので全く参考にならないかもしれませんね….
志望大学の授業資料
これらに加えてネット上にあがっている東大の量子力学演習の授業資料も2018年は全部解きました。公開されてはいますがここに勝手にリンクを貼っていいかわからないので自分で調べてみてください。東大の過去問を見た感じ、たぶんu先生が作成されているので授業資料や猪木川合、カステラ本などで行列力学にしっかり慣れておくといいと思います。ちなみに京大で量子誤り訂正の問題が出て、たまたまやっていた堀田量子の自主ゼミの知識が活かされました。流行りの分野は抑えておくべきかもしれません。
北大の授業
参考にはならないかもしれませんがやったことの紹介として、北大の「物理学総合演習」という授業を履修していました。これは毎週北大の過去問を解いてきて院生の解答&解説がもらえるという神授業なのですがここで復習したことが実際の京大院試にも役に立ちました。なので京大の過去問をやらなかった分を北大の過去問で(京大の標準的な問題は)補完したのかなという感じがします。
東大理物の傾向と対策
これから話すことはこれまで以上に信憑性の薄いものですから注意してください。使用した問題集は前述のリストを参照してください。
力学
相対運動、剛体あたりが個人的にネックだったので演習しようの該当箇所をすべて解きました。解析力学は大体パターンが決まっているので過去問で直接演習して解けるようになれば大丈夫だと思いました。
電磁気学
電磁波(マクスウェル方程式)を中心にやっていれば回路以外の大抵の問題は解けるようになると考え、東大の過去問を中心に解きました。その際、砂川理論電磁気や太田電磁気を改めて読みこみました。回路は北大の過去問や演習しようで復習しました。
熱力学
演習しようを全部解き直しました。北大の演習の資料も見返しました。
統計力学
春休みに久保統計5章をA問題までやって演習しよう→フロー式の順に取り組みました。久保統計は過去問をやったときの参照にも用いました。また田崎統計を改めて読み込みました。量子統計を完璧に仕上げることと、具体的には式の操作だけでなくマクロにどういう現象が創発するかを量子統計の言葉で言えるようになっておくべきです。
量子力学
授業ではスピンの合成や摂動論をしっかりやっていなかったので春休みまでに猪木川合やカステラ本で勉強しました。摂動は演習しようで大量にこなし、前述したように行列力学を東大の授業資料や過去問を中心として勉強しました。演習しようの摂動のとこは特に誤植がやばくてびっくりすると思います。波動力学のほうは演習の授業でしっかりやっていたので北大の過去問ですぐに思い出せました。
物理数学
最初に演習しようで微分方程式→複素解析→フーリエ変換の順にやりました。試験直前は詳解と演習で自信がないパートをやりました。
最後に
私は問題集や教科書を全てかっちりやるタイプではないのですが、なにが分かってなくてなにが分かっているかを常に気にして勉強していたと思います(久保統計を全部解いたという某youtuberもいますが正直異常者オーバーワークです)。それでも時間が足りなくて見えている穴を埋めきることはできませんでした。全部全部やるなんて不可能なので、過去問を適切に分析して分野ごとに重み付けをして重要そうなとこだけやるのが肝要だと思います。
注6:教科書の章末問題は重かったり解答が雑だったりするので個人的に苦手です。でもやったほうがいいという先輩は多かったです。
実際の院試本番のエキサイティングな経験についてはこちらにまとめています。
サムネの写真を無視した家族ですが、帰省した折にはめちゃくちゃお祝いしてくれました。息子の努力は十分伝わっていたのかもしれません。
おわり
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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