【ソ連ズ】Jupiter-12 35mm f2.8
最近はLeica M2がメインになりつつあります。
そこで迷っているのはどのレンズを使うかということ。M3ならほぼ50mm一択なのでさほど迷いませんが、M2は35mmも40mmも使えるし、同じ焦点距離でもライツにするかフォクトレンダーにするか。そんなことに悩むのは、それによって写真が大きく変わるからです。
撮るときにあれこれ迷いたくないし、撮影中のレンズ交換はできればしたくないズボラな性格なので、「このカメラにはこれをつけっぱなし」という常用レンズを決めておきたいのです。
やれズミクロンだ、やれズミルックスだと喧しい界隈からは距離を置きたい私です（8枚とか6枚とかどうでもいいですよ･･･。そのレンズで撮った写真がすべてでしょう）。
そんな私にぴったりな旧ソ連製レンズ。ロシアレンズと言われることが多いですが、一部はウクライナのキーウなどで作られていたのでやはり旧ソ連と言ったほうが正しいと思います。
今回紹介するのはJupiter-12 35mm F2.8。以前紹介したJupiter-8と同じ工場で製造されたもので、雰囲気がよく似ています。2本合わせて「ソ連ズ」と呼んでいます。
このレンズはかの有名なカール・ツァイス・イエナのBiogon 35mm F2.8のコピーです（復刻版のC Biogonではありません）。私の好きなロバート・フランクが『The Americans』で使ったとされるレンズです。
大きく突出した後玉が特徴の対称型レンズで、この設計により歪みや収差が発生しにくいとのこと（私は光学系の知識が皆無なので受け売りです）。
一眼レフではミラーが干渉するため対称型の広角レンズは作れず、レトロフォーカスが主流でした。ミラーレスでも後玉が内部ユニットに干渉する可能性があり、デジタルでのテスト撮影は今回できません。
以前、90年代後期型の黒鏡胴バージョンを所有していました。かなり軟調なレンズで、逆光では5角形のゴーストが出現し、フレアとハレーションのオンパレードでした。扱いにくくて手放してしまいましたが、あらためて見ると独特な魅力があります。
今回は50年代前期型のアルミ鏡胴バージョンを探して入手しました。やはりクロームのライカにはシルバーが似合うし、後期型との描写の違いも確かめたかったからです。
デザインが秀逸で、いかにもいい写真が撮れそうな雰囲気があります。まあデザインはビオゴンのコピーですが、本家も同じアルミ鏡胴なので外観からしてよく似ており、それゆえジュピターを元に作られた偽ビオゴンも結構あるそうです。鏡胴にMade in USSRなどの刻印がないので、銘板だけ替えたら本物と区別がつかないかもしれません。
昔、某カメラムックでビオゴンvsジュピターの撮り比べ企画があり、ジュピターのほうが明らかに結果が良かったという珍事がありました。旧ソ連レンズの描写力にはいつも驚かされます。
ここから前期型Jupiter-12の実写です。
逆光で撮影するとやはり盛大に5角形のゴーストが発生します。これを表現として取り入れるかどうかがこのレンズの使いどころです。フレアやハレーションは後期型よりは抑えられているような気がします。しかし拡大すると凄い描写力です。
ライカの35mmは一本も持っていないので、画角の近いズミクロン40mmと撮り比べをしてみました。絞りとシャッター速度は同一です（絞りF8・1/125くらい）。
高価なフィルムで撮り比べをするのはもったいないのでこのカットしか撮っていませんが、曇り空に逆光という悪条件でもかなり両者の特徴が出ました。
全体的に軟調なジュピターと、コントラストが明確なズミクロン。このズミクロン40mmは他のズミクロンと比較するとかなり軟調なほうだと思いますが、ジュピターはそれを上回る軟らかさです。
この程度の逆光でも中央部にハレーションが出るのがジュピターです。しかしズミクロンでも若干出ていますね。
次はほぼ等倍に拡大して細部を比較してみます。
ズミクロンのほうがくっきりして見えるのはコントラストの違いによるもので、中央付近の解像度はほぼ互角です。周辺はジュピターのほうがやや甘くなるものの、像が流れることはなく霞んでいく感じがむしろ好ましくもあります。いやー、ジュピターおそロシヤ。
100人中99人がズミクロンを選択すると思いますが、私の好みで言うとジュピターに軍配が上がりますね。しばらくは常用レンズにしてみます。