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「最上」と名付けられたレンズ
ズミタールがとても良かったので、その先代にあたるズマールも試してみたくなり入手しました。実に90年前のレンズです。
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ライカの歴代50mm F2は、古い順に
①Summar(ズマール)1933~1940年
②Summitar(ズミタール)1939~1953年
③Summicron(ズミクロン)1953年~
と変遷してきました。
名前にすべてSummがつくので語源が気になって調べてみたところ、初代モデルであるSummarの語源はラテン語で「最上、最高」を意味するsummus。
次のSummitarは、summusと「天体、星」を指すギリシャ語のtarosを合わせた造語。
現行モデルのSummicronはsummusと「時間」を意味するギリシャ語のkhronosを合わせた造語、ということがわかりました。往年のライツの命名法には教養を感じますね。
このようにラテン語とギリシャ語を組み合わせた造語は西洋では一般的で、有名なものとしてはtelevision(テレビ)はギリシャ語で「遠い」を意味するteleとラテン語で「見ること」を意味するvisionを組み合わせた造語です。
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前玉は柔らかく傷がつきやすいが、これはほぼ無傷なので再研磨済みかもしれない
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フィルター径がA36カブセ式なので入手に苦労した
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ズミタールは逆光時には天空から降り注ぐような強烈な光条が出ました。強い印象ゆえに何度も使えばすぐに陳腐化する表現です。ゴーストやフレアはあくまで飛び道具であり、通常の描写こそがそのレンズの本領といえるでしょう。
ではズマールの描写はどうでしょうか。
ミラーレスに装着して試写してみたところ、いきなり驚くべき描写性能を示しました。
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素晴らしい立体感です。ボケは渦巻き傾向ですが、モネのタッチのように絵画的で、むしろ美的な効果をもたらしています。
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いかにもオールドレンズらしい周辺減光はありますが、解像度、色彩、コントラストなどは現代のレンズと比べても遜色ありません。
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順光の好条件だけでなく、悪条件でも試してみました。
アウトフォーカスした粉雪がリング状にボケて、さらにリングの形状が同心円に沿って米粒状に引き伸ばされていることがわかります。
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これがいわゆる「渦巻きボケ」の正体です。ボケの変形が同心円状の方向性を持っているために渦巻き状に見えるわけです。ある意味ズマール最大の持ち味といえるでしょう。
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ここまでの逆光だとさすがにハレっぽくなりますが、それでもけっこう耐えているほうだと思います。
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絞れば最善します。ゴーストが六角形になるのは仕方ありませんね。
ズミクロンに至る系譜の初代にして、すでに完成の域にあったズマール。その後90年間のレンズの進化とはなんだったのかと考えてしまいました。