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合計特殊出生率の目標値を定め、それに必要なリソースを計算したい


前書き

家事を定義し直したら(2年前)かなり多くのことを計算できるようになって面白くなってきたのだけど、面白いだけ。使えるものではない。実際の社会問題を分析して対応策を考えることで、使えるものにする。

1. 家事とは何か

1-1 具体例

料理、洗濯、掃除。
買い物、整理整頓、在庫管理、予定管理。
心身の慰撫、対話。

肉体労働だけでなく、管理や判断と言った知能労働、忍耐の必要な感情労働まで家事に含めることができる。

管理や判断の家事とは?例えば?
配偶者に食事の準備を丸投げする判断も、家事。
ただし、1日あたり判断1秒に対して、買い物も含めた食事の準備6000秒なら、貢献度は1:6000

家事代行サービスに家事を任せるという判断も、家事。ただし、実際に外注されて家事を任された人は市場の需給による賃労働をしている(お金を対価に労働力を提供している)だけであり、その家の家事をしているわけではない。他にも、安全な水の確保は家事だけど「水道局の人が我が家の家事をしている」とは言わないし聞かない。

1-2 家事の歴史

昔は家事でも今は家事ではないもの。例えば?
井戸から水を汲む。

家事の形は時代とインフラなどによって変わっている。でも、家事と呼ばれ続けている。水に関して残っている家事は?例えば?
コップに水を満たして配膳する。

水の輸送と消毒が、水道によって家から外部化された。水道の水は有償で提供されるが、コップに水を満たして配膳することは無償で行われるし、水を確保するという家事判断も無償だ。

外部化されず、家に残される家事は常に無償となる。

1-3 家事の抽象的特徴

人の生活を「家事」「賃労働」「回復」「余暇」の4つに分ける。以前の記事とは少し違う。

過労者の例

人が働くには食事や睡眠を必要とする。食事や睡眠がなければ死ぬ。それらを回復と呼ぶことにする。

回復には準備を要する。食事を用意するには?寝床を確保するには?

お金を使って、家事を経由し、食事や睡眠を用意している。

家事は、金銭を命に変換する労働と言える。物々交換なんて廃れて久しい今の日本では、お金と家事のどちらがなくなっても生きていけない。あらゆる取引が金銭を介する極端な通貨社会では、お金と家事の本質的な価値は等しい。家事のために働き、働くために家事をする。

家事は、肉体労働、頭脳労働、感情労働など複数の側面を持ち、無償で、金銭を命に変換する。

1-4 要点3つ

知能労働や感情労働も家事。それが例え1秒でも。
家事は金銭を命に変換する労働。
世帯の家事の価値は世帯の収入とだいたい同じ。

2. 家事は交換価値を生産する

2-1 通貨の無い時代

今の我々はお金なしでは生きていけない。では、お金の存在しなかった時代は?

誰とも取引しないなら、人の生活には、家事、回復、余暇の3つのみ。

この時の家事はどんなもの?
狩猟や採集。雨風凌げる洞窟を探す。など

2-2 人数を増やす

狩猟の得意なAさん。採集の得意なBさん。
それぞれ相手の倍速で済ませられるとすれば、お互いにそれらを交換すると都合がいい。

この取引は余暇を介して行われる。余暇で取引材料を確保(余暇を取引材料に交換)し、その取引材料を相手と交換する。余暇がない場合は、余暇を介して家事労働を先物取引する。

通貨無し2人取引の例

つまり、余暇には交換機能があり、その価値は家事効率に強く依存するため、家事は交換価値を生産している。家事効率の良い人ほど多くの余暇得られ、その余暇を様々なものと交換できる。

豊かさとは、余暇の量のこと

社会貢献とは、人々の余暇を増やすこととも言える。

2-3 金銭、通貨とは何か

家事をして、回復して、余暇でお金を得る。お金で肉を買うのは狩猟の外部化。お金で野菜を買うのは採集の外部化。

結局のところ、我々は、家事を外部化して楽をするために、お金を稼いでいる

ただ、金銭を介さない取引が極端に減ったことで、金銭の必要性が家事と同程度にまで大きくなったのが、今の日本の(都市部の)生活。

2-4 要点2つ

家事は余暇を生産し、余暇には交換価値がある。故に、家事は交換価値を生産する。
我々は家事をするためにお金を稼ぎ、使う。

3. 合計特殊出生率の目標値を定め、必要なものを計算する

3-1 少子化問題とは何か

需要に対する供給過多で必然的に起こる市場の仕組みそのもの。これは、現代でも古代でも原始時代でも起こりえる。

通貨のない2人の取引を思い出そう
Aさんは狩猟
Bさんは採集
家事は他にも色々あるけど、この2人で概ね全ての家事をこなせて余暇も十分にあり、満足している場合、ここに、Cさんは必要か?

要らない。

3-2 取引(通貨)の役割とその限界

現代の家事、例えば水の確保は、水道でできる。容器を作って川から汲んで火にかけて煮沸してとかせずとも飲用水を秒で確保できる。仮に蛇口をひねって1秒で得られる水をかつては1時間で確保していたとするなら、効率は3600倍。その効率のためには施設が必要で、その施設は通貨を介した取引で作られ、通貨を介して専門の人の手で運用される。こういった、家事の効率を大きく上げるものを、家事インフラ家事資産と呼んでみる。恐らく、生活インフラとは少しズレた領域となる。

人が生きるのに必要な家事の総量はそんなに多くない。発達した家事インフラを用いて1人あたり数千倍の効率を叩き出せるなら、暇な人が多数出てくる。生活に必要な家事という需要に対して、労働供給が過剰になるのも当然。

余暇を通貨と交換しようにも、文明の発展に伴って省力化されるほど、労働そのものの需要が萎み続ける。

3-3 安定は人口を減らす

また原始時代の想定。通貨無し。5人。水源の乏しい地域。所有する井戸で水を取引するAと、それぞれ得意分野を持つB,C,D,Eが、お互いに得意なものを交換して生活上の需給を過不足なく満足させていたとする。

通貨無し5人取引の例

余暇は十分にあるが、全員の需要が既に満たされているため、余計な労働をして6人目を迎え入れる理由がない。

今の時代に安全な水は水道から得るしか無い。水道という家事資産を持ち、運用している人々は数千人を相手に取引できるけど、その全ての人と取引せずとも自らの家事需要を満たせる。

極論、高質な家事資産を持つ人たちだけで集まれば、水の供給量にどれだけ余裕があろうとも、他の人々を必要としない。通貨社会におけるその1つの集大成が、恐らくはゲーテッドコミュニティという形だろう。

人が減れば必要なインフラも減るので、このコミュニティは最小限まで小さくなり続け、疫病、地震、テロ、ミサイルなどの1発で特定の重要インフラを全喪失し、滅ぶ。通貨はあるけど余暇の乏しい、無駄に豪華な限界集落。

3-4 人口を必要とするケース

歴史的には、余剰人口を軍事に配分することで多くの国々が戦争を生き残ってきた。井戸を守らねばならないから、水を大盤振る舞いして味方を増やしたわけだ。また、戦争後の平和期には多くの暇人たちによって文化の爛熟期が訪れがちで、更に言えばその後にまた戦争である。科学と文化への投資は、戦間期に兵力(人口)を維持する役割を持つ。

特殊詐欺や闇バイトの犯罪集団などは、井戸を持たない若者たちの数少ない生存戦略として合理的な判断と言える。生きるのに必要なものを手に入れるための余白が世界に無いから、持ってる奴らから奪う。そのカウンターとして治安維持組織にリソースを投じさせ、雇用を作り、均衡を保てるようになるのも、一つの少子化対策だろう。安定のために犯罪集団が必要という欠陥構造ですね。

また、人身売買も少子化対策として有効だろう。子を売る。女を売る。兵を売る。人を売れるなら、生産コストと売却益が帳簿に載り、一種の経済動物として殖やす理由となる。

人類は、安定したまま自由で平和で豊かに発展できないのだろうか?

3-5 公共事業と化した育児

安定した社会に守られて需給だけで取引していると、通貨(家事インフラ、家事資産)が偏り、人口が必ず減る。

それをみんな(政府)で解決しようとすれば、例えばこうなる

通貨無し5人取引と税

税を徴収し、それを育児支援などの社会福祉に充てる。重税と高い水準の福祉。「大きな政府」的な状況ですね。ヨーロッパの方で上手く行ってないから多分ダメ。計画経済と集産主義という破滅の約束された社会と酷似しがち……。人間は完璧に上手くやることなんてできないから、バッファの乏しい体制はいつか絶対に破綻するし、1回の失敗で信用を失えばそこでおしまい。

政府は小さく、民間は自由で、それでいて民間が自主的に福祉を充実させるような競争を作れる環境がたぶん望ましい。具体的には、例えば「児童福祉を充実させて育てた新卒を競合他社に奪われて安月給で使い潰され、価格競争で負ける」ような環境ではいけない。

先に言っておくが、これは机上の一例に過ぎない。たぶん具体的な解は他にもたくさん作れるし、ある。それこそ、自由と人権を捨てるとか、ずっと戦争し続けるとか。でも、頻繁に警報の鳴るイスラエルみたいな国は嫌だ。

例えば、社会福祉に自ら貢献した個人や集団の税を減らす

通貨無し5人取引と税と福祉

税とは、そもそも、個人で負担するには重すぎるし気も進まないけど誰かが負担したほうが社会を良くできるようなことを実行するためのもの。自主的に行ってくれる人々から税を取れば二重取りとなり、福祉に熱心で良心的な企業は価格競争で負けて駆逐され、金の亡者に転身できた人々が先細りながら生き残る。

3-6 合計特殊出生率の目標値と必要なリソースの計算式

さて、具体的に、福祉への貢献度を測るには?どれぐらい税を軽減する?

通貨を基準として計算してはならない。それで先細っている現実があるのだから。

ここでは、余暇を基準として計算する。単位は時間だ。物理量である。余暇が多いほど豊かであり、人々の余暇を増やすことが社会福祉への貢献であり、貢献に応じた税軽減の対象となる。

通貨は、余暇に従属する感覚量である。例えば「温かい」と「温度」の関係だ。凍死する人はその過程で暑さを感じて脱ぐ(矛盾脱衣)らしいですね。それぐらい頼りないのが、通貨という単位。

子育て世帯の家事、賃労働、余暇、回復を計算しよう。例えば子供3人の5人世帯。
必要な家事の総量は単身の5倍。妊活妊娠出産育児を3人分。教育と学習も3人分。
家事1の時間をK(1)、家事2をK(2)………K(n)とし、妊活妊娠出産育児P、教育学習をEとすれば、

5Σ(K(n))+3P+3E

が、子育て世帯における両親の家事育児負担時間の瞬間最大総量MaxT(合計特殊出生率3)となる。

賃労働する1日のMaxT(3)+ 賃労働時間+回復時間が24時間を下回るまで、育休取得や家事の外部化などのために資金を注入すれば良い。これで合計特殊出生率3の最低条件を整えられる。

専業夫婦と3児

割を食うのはBを雇用している企業。育休を取るBへの支援内容は多岐にわたる。

どの部分にいくら注ぎ、それに応じてどれぐらい税を減らすのが良いかは実測しないとわからない。それこそ家政学の出番だろう。5人世帯ならほぼ毎日の買い物をする必要がある。家とスーパーの往復時間が5分違うだけでも、30日で150分の差ができる。家電をスマート家電に置き換えるとどうか。それらを活用するテクニックは。

まず、時間を測ること。次に、時間を適正値にするための通貨量(費用)を計算すること。そして、企業が福祉へ投入して生産した余暇の総量(社会福祉への貢献量)に応じて税を減らすこと。

計算方法は今後少しずつ作ってみる。多分そこそこ面倒なことになるけど。

差し当たって、住居支援、家事支援、育児支援、教育支援はどれも追加で必要だろう。独身者の婚活支援も必要だろう。

でも、上手くいくかどうか……という不安は不要。なぜなら、間違いなく失敗するから。これの強みは、多くの民間人がそれぞれのアイデアで多数の試行を一斉にできるという点であり、失敗は折り込み済み。失敗後の立て直しも福祉の一部だ。

とにかく重要なのは、通貨というやたらと変動の激しい感覚量ではなく、時間という物理量で記録すること。対策が不足でも過剰でも定量的に反省できるため、計画的な修正と検証も容易となる。

3-7 要点2つ

需給だけで社会をまわすと必ず人口減少
育児支援を福祉として検証しながら資金を注入する方法の一例はここにある

4. 根本的な問題点

少子化を解消したところで、余剰人口の投入先が乏しい

代表的なのは、戦争・開拓・文化(学問)である。開拓はもう地球上にろくな土地が余ってない。戦争でうまくやってるのは例えばイスラエル。文化にリソースを振るという点だと、日本は結構進んでる。ゲームとか。現実に体験するために必要な物質的コストを、仮想体験に置き換えることで全て電気で賄えるのだからゲームは最高だと思う。科学、学問もいずれゲーム化される。

資本家が、少子化問題の解決も含めた福祉へ通貨をまわす動機が薄い。通貨社会においては、通貨を介して家事などを効率化するための資源が取引されるため、通貨をいかに循環させるかが問題となる。誰かが蓄財する環境で社会に私財を環流させ続ければ、むしろ最終的に自分が没落するし、そもそも蓄財済みなら今を変える必要がない。

小さな政府と高水準の福祉を実現するのはかなりの難題。破滅が約束されていないだけマシではあるが。

例えば、名誉と実利の両面で攻める。実利部分は福祉に応じた減税という案を挙げたが、それだけでは弱い。

例えば、社会福祉貢献度ランキングを作って上位を叙勲する、名誉。また、社会福祉は個人や企業の名で実施される。

今思いつくのはこのぐらい。ランキングは特にえげつないことをできる。下位には「守銭売国奴」などのレッテルを貼れるよね。

新規参入がつらそうなので他にも色々と考える必要はある。

以上。

5. 雑多な感想

帳簿に載らない価値の総体に比べたら、帳簿に記載されるものはゼロ近似できるほど僅かな領域ではないだろうか。帳簿に記されるのは費用であって、価値ではない。プライマリーバランスだとかの費用ばかりを見てしまえば、価値を蔑ろにし、損なう。そう強く思うようになった。

帳簿の外には膨大な価値がある。私は、通貨単位という特殊で不安定な尺度を離れて膨大な価値の中に飛び込み、より普遍的で、通貨を包摂できる余暇を取り出したに過ぎない。他の測り方も無尽蔵にある。

保留中の色々
・家事貢献度の計算及び場合分け。家事資産の購入と貢献度の減価償却、財布の共有、家事資産の恩恵の共有、など。
・児童労働の合理性と、それより強い教育の価値、など。
・これら全ては、通貨ではなく余暇でその価値を判定される。

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