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少子化を止める方程式

前提となる色々


日本における特殊な方程式

日本で、夫婦世帯にn人の子供を育んでほしいのなら、

n=nY/R

n: 望まれる子の数
Y: 子育て支援(子1人あたり)
R: 子育て費用(子1人あたり)

R=Y

注意事項

とても単純になっているが、これは日本の特殊性による。後述する。

支援も費用も、単位は時間。日本円ではない。

Yは、育児による損を解消するために必要な支援時間の最低値。

日本円で支援する場合、適切なレートを柔軟に設定する必要がある。

ここへ更に、雇用環境(主に民間)からの育児支援が加わる。

具体的な育児支援の規模の計算

Rの値を想定する。簡単のために、とてもぬるい設定にしよう。
子は高卒18歳で就職し、親元から独立する。
妊活妊娠出産産褥に伴う専門医療は無料。
学費は無料。

1人の子を18歳まで育てる費用(時間)は、
・妊活妊娠出産産褥の時間
・幼児期の育児(特に手がかかる時期)の時間
・幼児期を終えた子が18歳になるまでの、子のための家事時間

これらを通貨で支援する場合、
・子宮レンタル代
・ベビーシッター代
・家事代行代

となる。具体的な時間を仮設定してみよう
・妊活→産褥 1日12時間を1年
・満6歳までの育児 1日6時間を6年
・家事代行 子1人あたり1日1時間を12年

1日を24時間、1年を365日とする。

R=12×365×1+6×365×6+1×365×12
R=21900

21900時間。仮に東京都の現在の最低時給1163円で換算するなら

子1人あたり 25,469,700円

特に、子宮レンタル代たる4380時間相当の5,093,940円は直ちに与えられるべきだろう。

ここに、夫婦を雇用している組織からの民間育児支援が加わる。

これは未払賃金の推定値とも言える。よく教育された人間を必要としている受益者は、企業や国などの集団。今の個人はたくさん勉強してたくさん働き、趣味もできず、結婚もできず、預金を抱えながら老いていく。そんな生活が益なわけがない。

*仮の設定です。実際はどう設定するか?どう支援するか?など、十分に議論されるべき。

育児というキャリア

育児に報酬が用意されているのなら、育児はキャリアとなる。
実際、人を健康に育てるには多くの知識などを必要とする。子育てを終えた人々は「保健衛生に詳しい上司」として職場の福利厚生を大いに担うだろう。働きすぎる風潮への強烈なカウンターとなるはずだ。

日本の特殊性

児童搾取、児童労働が違法。人身売買も違法。
核家族化や単身世帯の増加によって、親孝行(あるいは子を搾取)を非常にしづらくなっている。
あるいは、貧しいせいで、孫の顔を見せるという親孝行すら困難。
結果として、親が子を育むことに一切の時間的、経済的な得がない。
これらの特殊性が式を単純にした。

この式の利用方法

R=Xにはnが含まれていないので、出生率は他の要因で決定される。「たくさん育むか、たくさん働くか」という選択をそれぞれの世帯がすることになる。資源(食料などの物質)の不足に見舞われた場合、支援額を下げ、出生率を調整する(下げる)ことになるだろう。

次は、特殊でない、一般化した式を示す。

一般的な少子化の不等式

2SB×365>2SB×365+nR-X

S: 1人が1日に必要とする家事時間
B: 比較期間(ここでは子の分離独立年齢と等しい)
n: 子の人数
R: 1人の子を労働開始年齢A歳まで育てるために親が払う時間
X: 親が子を働かせて得る時間

この式は、子あり夫婦に子が誕生した瞬間から、その子が分離独立するまでのB年間の比較

(子無し夫婦の家事時間)>(子あり夫婦の家事時間)

を表している。この式が成り立つ限り、子を増やすほど夫婦にとって得。

立式のための設定

夫婦が生きるのに必要な家事時間は子なしと子ありで同じとする。厳密には食事量が増えたりするから家事時間も増えるが、それらを子育て時間に算入する。

(子あり夫婦の家事時間)
=(子無し夫婦の家事時間)+(子育て時間)-(児童労働時間)

つまり、

(子無し夫婦の家事時間)
>(子無し夫婦の家事時間)+(子育て時間)-(児童労働時間)

この式は単位が時間なので、どの時代でも成り立つ。

Rの詳細設定

労働開始年齢A歳までは、子が生きるのに必要な家事を親が代行する。

(妊活妊娠出産産褥時間)+(6歳までの育児時間)+(6歳から労働開始年齢A歳までの子のための家事代行時間)

A: 子の労働開始年齢

前述の設定をまた用いれば
・妊活→産褥 1日12時間を1年
・満6歳までの育児 1日6時間を6年
・家事代行 子1人あたり1日S時間を(A-6)年

R=12×365×1+6×365×6+(A-6)×365×S

Xの詳細設定

児童労働させる。
子はA歳になったら自らに必要な家事全てを自らで満たし、親の家事を代行する。
子が労働可能年齢Aになったら、子は親の家事を代行する。

B: 子の分離独立年齢

6歳までの育児は常に親がやる。
A歳以上の子が親の家事を代行するが、代行できる家事の上限は1日あたり2S時間。
A歳以上の子が親の家事を代行する期間は、子がA歳に達してからB歳になるまで。(B-A)年。

X=2S×(B-A)×365

この式の利点と欠点

ほぼ全ての多子ケース扱えない。双子や三つ子なら扱える。B年後にまた子を生むのでもこの式で良い。

子による家事代行率を100%としてる。

Sの値は8以下で考えるべきだろう。

子無しの夫婦世帯と子ありの夫婦世帯では、具体的な家事の内容が全く違う。その質と量の差を考慮していない。家事インフラや技術によって規模の経済が活きていくる場合、1人あたりの家事時間Sは人数が多いほど減る。つまり、左辺と右辺ではSの値が違う。右辺の(子あり夫婦)のSのほうが小さくしやすい。

私的な話だが、料理で1度に1食分を作る手間を1とした時、1度に2食分を作る手間はせいぜい1.1程度だ。家政学において数理でよく分析するべき部分だろう。

などと、雑な式だが大筋は変わらない。式の単純さと理解しやすさを重視した。

具体的な数値を代入して計算

2SB×36×5>2SB×365+nR-X

S: 1人が1日に必要とする家事時間
B: 比較期間(ここでは子の分離独立年齢と等しい)
n: 子の人数
R: 1人の子を労働開始年齢A歳まで育てるために親が払う時間
X: 親が子を働かせて得る時間

R=12×365×1+6×365×6+(A-6)×365×S
X=2S(B-A)×365

式を整理

0>n×(48+(A-6)S)-2S×(B-A)
(2S(B-A))/(48+(A-6)×S)>n

S,A,Bの値に対するnの値を求められる。

日本の場合

理想的にはXがゼロなので、子1人あたりの育児支援Yで置き換える。

2SB×365>2SB×365+nR-nY
Y>R
Y>12×365×1+6×365×6+(A-6)365×S
Y>365×(48+(A-6)×S)

育児支援Yの最小値を求めるなら>を=に置き換えて計算すれば良い。

他の場合を想定1 A=6歳から労働。B=20歳で分離独立

図1-1

家事時間が短くなるほど、子に代行させられる家事が減る。

ここで注意すべきは、家事時間と賃労働時間の関係だ。

無償の家事時間と有償の労働時間の関係

賃労働は「労働で通貨を得て、その通貨で家事を外注する」という家事判断。賃労働時間は、家事時間に従属する時間となる。ただし、家事は常に無償なので、有償の労働は家事に含まれない。

家事時間は生活環境(ほぼ生活水準)に依存する。生活環境が良くなれば家事時間は減る。しかし、家事労働と賃労働を足した総労働時間は生活環境とほぼ関係がない。

少子化は人類の基本仕様

技術や社会基盤が未熟なうちは、家事時間が長い。計算で示した通り、子供に労働させるのが親にとっての得となるので、きっと多産文化が形成される。

奴隷制や文明の発達で家事時間が減れば、多産文化と余裕のある生活が重なる。黄金期だ。しかし、これは長続きしない。数世代を経て、少子の方が余裕のある生活をできると気付いてしまう。

文明の発達は、1人が生きるのに必要な家事時間を減らす。労働力の需要を減らす。家事の効率化と外注が進めば、家で子供にやらせる家事を大きく減らす。大人も余る。十分に経験を積んだ大人達が、雇用の枠を奪い合う。

仮説。人口学的な少子化の歴史

以上から、人類文明は概ね3つのフェーズを繰り返してきたと仮説できる。
・文明が未熟で、多産と児童労働が優位な隆盛期
・文明が発達し、多産と生活の余裕が併存する黄金期
・文明が爛熟し、ヒトの需要が減って少子化に傾く衰退期
多産が優位になるまで衰退し続け、その間に学問などが失われる。産業革命後に人口が減らなかったのは、戦争による兵士の需要と黄金期が重なったからだろう。まぁそれでも都市部では少子化傾向を見られたようだが。

文明の発達をスキップして家事を楽にする奴隷制(安価な労働力)は、衰退を加速させた上で衰退期を長引かせそう。おそろしい。

通貨本位制と奴隷制

今の通貨体制は、より多くの通貨と兌換するために通貨を使う。それを通貨本位制と私は呼ぶ。

通貨本位性は、人を育てる費用を払わずに人を使うこと、労働力の再生産に必要な資源を出さずに労働力を使うことが最適となる。奴隷制の本質だろう。

誰か悪人がいるという話ではない。戦争する前提で、戦争に最適化された、そういう仕様なのだ。

余剰人口をどうする?

人口が必要ないから少子化する。少子化を解消すれば当然、人が余る。余った人々はどう稼いで生きる?

例えば、私の案「国民時間本位制」でなら国民時間を増やすイベントに際して通貨が新規に発行される。

代替人員

とりあえず、職場の人員を増やそっか。

開拓

人口が増えるので食料増産は必須。資源量がそのまま人口上限になるため、国際比較でコスパの悪かった国内の資源開発も進められるようになる。産業の空洞化とは縁が遠くなる。

学問

食糧とエネルギーを科学でなんとかする。月や火星の開拓など、ロマンに邁進するのも良いだろう。

娯楽

スポーツは土地コストが重い。ゲーム空間がメインの受け皿になるだろう。ネトゲにドハマりした人なら知っているだろうが、そこにあるのは紛れもなく社会だ。様々なものを現実に転用できる。

有事の備え(自然災害等)

健康増進も兼ねたカジュアルな消防訓練などに奨励金を出すのも良い。あるいは、戦時に戦える潜在的な兵力の維持という面もある。

後の時代の人々に任せる

今の我々は少子化で滅びかけている。我々の課題は少子化を止めることだ。止めた後の余剰人口をどこに投入するか真剣に考えるべきは、我々の後の世代だろう。

私的には、SF作品のように宇宙を旅できるようになって欲しい。

今後の課題

国民時間本位制における通貨の新規発行や流れについては、まだほとんど検討できていない。少しずつやっていく。

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