第1回 国民時間本位制の圧縮説明を試みる。~育児支援の財源は中央銀行~

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これの圧縮を試みる。

概要

「生活水準が低いと子が増える」この法則は知られている一方、その具体的な計算方法は存在しません。少なくとも私は見つけられなかった。なので、作りました。

注目するのは「親が子を働かせることで、どれほど豊かになれるか」です。例えば、6歳から児童労働させる。例えば、就職後の子が実家に住み続けて生活費を家計に納める、など。

子なし夫婦と、子あり夫婦で豊かさを比較し、子ありのほうが親にとって豊かであれば子を増やすべきとなる。情を一切考慮せず、損得のみで計算します。

ここで問題になるが、「豊かさ」の定義です。家政学を基に家事を厳密に定義し直すことによって、素朴な豊かさが「家事時間の減少幅」あるいは「自由時間の長さ」つまり、時間であることを明らかにします。

流れ

家政学をもとに、家事に対する認識を改める。

通貨のない原始的な生活での家事がどんなものかを想定する。

通貨のない生活では、自由時間の多寡が豊かさの指標となるのを確認する。

子が豊かさにどう関与するのか確認する。

生活水準の向上が、子が親の豊かさに貢献できる余地を減らしてしまうことを確認する。

現代日本の社会規範と生活水準ではどうなるかを計算する。
それはつまり、少子化解消のために必要な育児支援の規模のこと。

育児支援の財源はどこか。

その財源を確保するための通貨体制「国民時間本位制」(仮称・研究中)とは何か。

そうした平和的な少子化対策をできなかった後に訪れる、次代の覇権を巡る戦争。
第3次世界大戦は少子化対策の文脈で既に勃発しているという突飛な仮説。

家事とは何か

まず、最も参考になった論文の紹介から

「家事労働のなかの「見えない」家事 : 新たな視点からの家事の実証研究」 The "Invisible Labor" in the Domestic Labor : an Empirical Study on the Basis of New Research

藤田 朋子

家政学における家事史とでも言うべき論文です。

ここから私が行ったのは、具体的な家事の定性分類。それにより、3つの労働が含まれていると判断した。即ち、頭脳労働、肉体労働、感情労働。

家事に頭脳労働が含まれるとする場合、特筆すべきは「特定の家事を自力でせずに外注する」という意思決定も家事の一部になるという点。旧時代の世帯の典型「家事を専業の妻に丸投げする」という夫の意思決定自体も家事。(ただし、貢献度には大きな差がある)

これに、既存の家事議論において概ね明らかにされてきた性質を2つ加える。
「通貨を命に変換する唯一の労働」「常に無償」

人が働くには、気力や体力を必要とする。休息食事睡眠などでそれらを回復する時間を「回復時間」とする。この回復時間を用意するのが家事時間。「食事を用意する」という意思決定も家事なので、家事を完全放棄するなら食事もできない。死ぬ。

また、「食事を用意する意思決定」は家事であるが、その結果として料理を外注した場合、外注されて食事を作った料理人の「料理」は家事ではない。前者は無償であり、後者は有償である。

以上から原始的な単独生活を想定する

狩猟や採集によって食事を用意するのは家事。家事時間で回復時間を用意し、回復したら家事をしてまた回復時間を用意する。

家事↔回復

自由時間で道具を住居を改良して生活水準を向上させ、回復時間の確保と自由時間の増加に努めるだろう。

家事↔回復→自由→向上→家事

次に、原始的な2人生活を想定する

狩猟の得意なAさんと、採集の得意なBさんが居る。お互いに、相手の得意家事を己の家事から廃して、相手に外注する。2人とも自由時間を増やすことができる。労働市場において狩猟時間と採集時間を交換したのだ。

狩猟時間の価値=採集時間の価値という市場価値を見出だせる。

ところで、「狩猟という具体的家事を外注した家事」の価値は、増えた自由時間だ。

余談であるが、以上から、市場価値をもとに家事労働の価値を計算しようとする全ての既存手法は根本的に間違いであると断ずる。

2人は子供を授かって豊かになれるか?

自由時間を増やすことが、豊かになるということ。子を育むには自由時間を投ずる必要がある。立式の仕方はいくつも想定できる。例えば

(子なし夫婦が30年間で行う総家事時間)>(子あり夫婦が30年間で行う総家事時間)

などである。子あり夫婦は子に家事を外注して楽をする。これが成り立つ限り、夫婦は子を増やすべきとなる。まさに子宝である。

少子化を分析する場合、家事時間の有限性が鍵となる。文明が発達して生活水準が上がれば家事時間は減る。子供に外注できる家事時間が減る。

一方で、妊活、妊娠、出産、産褥、幼児期育児などは古代からほとんど減っていない。特に、妊娠期間。これが「子」という労働力の生産コストの低減を強力に阻んでいる。子宝は、もはや宝ではない。産み損。

私の手元の試算では、現代日本において夫婦に望まれる子の人数は、1を切っている。甘い設定にしても2を超えない。出生率の底を0.1~0.3であると概算した。滅ぶ。まだ底に至ってないのだから、旧時代の文化と価値観は意外と強力だ。

少子化解消に必要なリソース量

少子化を解消するなら、子宝を再び宝にしてやれば良い。子の人数(出生率の目標値)に対して、上述の不等式を成り立たせてやれば良いだけだ。例えば、

妊活から出産までを1日12時間として1年
子年齢満6歳までを1日6時間として6年
1年を365日

合計で17520時間となる。子供1人あたり、最低賃金換算で約2000万円。特に、女性は産むと必ず損をする。事実上の子宮レンタル代を満額与えなければならない。

スウェーデンやフランスでさえも、世界各国の少子化対策は全て、遥かに不十分であった。「子を生むと女性の収入が上がりにくくなる」問題は、民間の給与などでは解決不能な法則だ。(2023年のノーベル経済学賞を参照)

でも、配るとしても財源はどこ?無理では?

高い生活水準でもうまくやってる国がある。イスラエル。

イスラエルの少子化対策は宗教と戦争の2本柱

原始的な生活を再考する。水源の支配者Cさん。狩猟のAさん、採集のBさんと取引して満足しているなら、AさんとBさんの子に水を提供する旨味がない。また、Cさんが老いて十分に水を提供できなくなっても、水源を手放す理由にはならず、水の価格を上げることだろう。人口は増えない。

しかし、水源の支配権を脅かす外部勢力がいるなら?Cさんは水を配って恩を売り、人口を増やし、Cさんを守るように指示するだろう。最も原始的な御恩と奉公。

平和で安定した社会だと、資源を握る者がその資源を出し渋る。

イスラエルの超手厚い育児支援やフェムテックは、文化的には宗教に支えられ、経済的には自国領土を常に脅かされる戦争に支えられている。

歴史上のものについては、人口学と戦争の歴史専門家に任せる。戦争以外の明快な少子化対策を、人類は恐らく未だに持っていない。

ここで重要なのは、少子化対策としての泥沼の戦争がありえるということ。ロシアは兵の報酬を上げるなどで適応し始めている。戦争し続けた国だけが、戦死者より遥かに多い少子化による人口減少を乗り越え、次代の覇権を握る。ここで仮説。世界の覇権をかけた第3次世界大戦は、少子化対策の文脈で既に始まっている。アフリカは言わずもがな、アメリカやEUも危ないことになってきた。

平和的な財源確保案「国民時間本位制」

日本の金本位制は第一次世界大戦で終わった。少子化による人口減少は戦争より遥かに危険だ。出生数はピーク時の半分を切り、その差が年間100万人を越えている。年に100万人以上が生まれる前に犠牲となっている。であれば、ここで更に通貨体制を変えても良いだろう。

上述の通り、人の素朴な生活の豊かさは自由時間で測られる。故に、人の時間で通貨を「ある程度」律する。

つまり、国民の時間が増えるようなイベントがあれば、中央銀行は新たに通貨を発行せねばならない。

育児支援の財源は中央銀行だ。

21世紀の覇権学問は家政学

雑な概算でも子1人あたり2000万円の現金給付が必要となる。それはきっと育児バブルを招く。投機筋や転売ヤーによって掠め取られる未来が見える。

それを、時間による価値の評価で防ぐ。範囲は社会のほぼ全て。例えば住宅なら、住宅価格の他に、「その家に住むとした場合に増やせると見込める自由時間」のスコアが併記される。そのスコアの内訳は、例えば最寄りスーパーまでの距離だったり、公共交通インフラの充実度だったり、災害時の抗堪性、部屋の保守性、利便性など。住宅価格に対するスコアの比が重要となる。国民時間本位制では、GDPと共に国民の自由時間が豊かさの指標として併記される。

そうした自由時間の、個別の具体的な算出を担うのが家政学だ。家や子に関わる事なら何でも扱っている。経済的に省みられることはあまりなく、家から外部化されてきたものだけが市場で通貨によって測られてきた歴史は、ここで終わり。通貨と並立するもう一つの重要な価値「命の時間」を専門に扱う分野へと進化せねばならない。

あとがき

もっと圧縮できないかなぁ。どこを重視するか……

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