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何者なんだ 【ショートストーリー】
お前はいつも死んだ魚の目をしてるな
金が欲しいか
名誉か
権力か
ならば俺に付いてこい
全て渡してやろう
その前に身嗜みだな
お前生臭くてクセェぞ
俺の部屋に来なよ
スーツも靴も揃ってるから
おんぼろ部屋だが
こ汚いお前よりマシだよ
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俺は訳も解らないまま
怪しい男に付いていった
この荒んだ廃墟から一歩でも抜け出したくて
縋る思いでゆっくりと立ち上がった
途中で気が変わるかもしれない
行くなら今だ
何より生臭い香りに不快感が堪えられなかった
ゴミ箱漁り
馴染みの中華料理店にはもう飽き飽きしてた
蹴り倒されるのも嫌だしな
俺は暗い階段を降りて行った
草臥れたボロボロのマーチンが俺の唯一の宝物だ
投げ捨て素足で付いていった
古いアパートに着いた
小さなブラウン管テレビが一つ
黒いマグカップ
部屋にはイギリスの国旗が飾ってあった
男は振り返りながら
「バスルームはそこだ 綺麗になってこいよ」
くだけた笑顔の男はまだ若い
パンクロックが鳴り響く
俺は軽く会釈し
汚い身体を洗い流した
髭も
髪も切り整えた
新品の歯ブラシで歯を磨き
サッパリした
バスルームから出ると
スーツとカバンと食事が用意されていた