猫が小さく鳴いていて
きっと町中のひとが その声に
耳をすましている
今は大きな音を
たてないで
冷蔵庫の中になにがあるだろう
寒さはなにで凌げばいいのか
雨が降らなければいい
わたしが人間だったら
耳をすましているひとたちに
「助けに行きたまえ」と
いってやるのだけど
家猫のこえなど
手放した薄いカーテンが
しわだらけの風を泳ぐように 一日が去り
ふと 帰り道を忘れ 拾われた
そんな家猫のこえなど
菊石朋『ラララフラワー』収録
発行:七月堂
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