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春夏秋冬。額縁に切り取られた風景は、時計仕掛けの絵画のようだ。

額縁に切り取られた風景は、時計仕掛けの絵画のようだ。

透明な板で空間を隔てることで、ガラスの向こう側は幻想的な空間へ、ガラスのこちら側は感覚的な空間へと変容する。

心なしか、時の流れも緩やかに感じられる。

せわしない日常から抜け出して、まどろみの中で忘れかけていた大切なものに触れていると、迷子になって今にも泣き出しそうな存在を、愛と慈しみで包み込むことができる。

過去も未来も、想像も現実も、喜びも悲しみも、いつしか永遠の平安へと融けてゆく。

自然豊かな片田舎でひっそりと過ごした4年間は、遅々として進捗しないスロー再生/コマ送りの日々が、瞬く間に時空の彼方に吸い込まれて消えた。

表裏一体。

時間と空間での体験は、物質的な存在と精神的な存在との齟齬により、自己に戸惑い自己が言い聞かす。

あやふやで頼りない記憶と、確からしい電磁的記録物で、あの頃の情景に思いを馳せる。

春夏秋冬。

額縁に切り取られた風景は、時計仕掛けの絵画のようだ。

- 春 / spring -

心地よい微風が、遠い過去の記憶と新緑の香りを運ぶ。

- 夏 / summer -

激しく照りつける陽射しに、蝉の鳴き声が共振共鳴する。

- 秋 / autumn -

紅色に染まった太陽の後影が、足早に角度を落としていく。

- 冬 / winter -

音の輪郭が一層際立ち、やがて凛とした静寂に包まれる。

真っ白なキャンバスに色彩を重ねていくように、過去から未来へと人生の旅路は続く。

銀座に会社を、渋谷に住居を構えていたコロナ禍以前は、さらなるビジネスの成功をがむしゃらに夢見ていたけれど、コロナ渦で毎日のように見ることになったのは、家賃29,000円・6畳ワンルー厶築古アパートの出窓から、ひとり静かに眺めていた ”春・夏・秋・冬” 、絵画のような風景だった。

都会の喧騒を離れて、縁もゆかりもない京都で過ごした4年間は想像していなかった未来だったけれど、きっと、まんざらでもないものだろう。

額縁に切り取られた風景は、まるで、時計仕掛けの絵画のようだ。

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