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Jpopから世界的スターグループを誕生させるには(提案)【高校卒業論文】

目次

論文要旨

はじめに

第1章次世代との共鳴
1-1    Kpopの成り立ち
1-2   Kpopとメデイア
1-3   シティポップ
1-4 第1章のまとめ

第2章 唯一無二
2-1  Kawaii
2-2 シティポップとKawaii文化
2-3 ARMY
2₋4ライブ配信アプリ

第3章世界へ発信
3-1  TikTok
3-2 仮想空間
3-3クラブでのダンスミュージック
3-4 language(日本語か英語か)


第4章 Metabal Monstar Project
4-1  Metabal Monstar Project
4-2     Metabal Monstar Projectの展開

おわりに

謝辞

<参考文献>

<実施研修先>
論文要旨
本論では「Jpopから世界的スターグループを誕生させるには」というテーマについて次世代との共鳴、唯一無二という2つの軸を主軸に考察する。
 第1章では次世代との共鳴を起こす方法を現在グローバル現象を起こして明るくKpop、BTS、シティポップの事例から考察した。その結果SNSを最大限発揮することが有効であることが分かった。拡散性の高いモバイル空間は世界進出においてチャンスの場となるのだ。海外の情報も自然と共有される現代では、日本独自の文化を持ちつつ世界の人も反応するようなものを創れば日本からビッグアーティストが誕生する可能性は充分にあるといえる。CDを手に取る時代からストリーミングが主流になるなどメディア変遷によって人々の受容の形は変化したと同時にそれは世界の次世代と繋がりやすくなったということでもあるのだ。
 第2章では唯一無二を創出するということについて、日本独自のKawaiiカルチャーの話を交えながら考察している。さらに後半ではマーケティング視点でファンにとって唯一無二の存在になるにはということについて考察している。そこから学んだことは、エンターテイメントの流れは一方向から双方向になったということだ。マスメディアで流れるものを待ち続ける時代から検索する時代になった。そしてコメントを機能を活用してリアクションや意見を発信することが出来るようになった現代では、傍観者としてではなくサポーターとして存在するファンが大多数なのだ。ファンとアーティストがお互いに作用し合う形が今後のエンターテイメントの主流になっていくのかもしれない。メディア変遷はファンの在り方にも革新を起こしたのである。
 第3章では第1章、第2章を踏まえて実際に世界にどのように発信するかについて議論する。どのようにSNSを活用するか、どのような楽曲がふさわしいか、今後はどのような未来が訪れどのような人材がグローバルに活躍するのか、英語で歌うか母国語を通すかを考える。まず、SNSに関しては瞬間的に好きになるという特徴があるTikTokを活用することを有効だとしている。そして、楽曲はノれるという言語を超えて体感的に楽しめる要素を重視した音楽を構築したいと考えている。第1章の「日本独自の文化を持ちつつ世界の人も反応するようなものを創れる」という方針も踏まえ、日本カルチャーとダンスミュージックをクロスオーバーさせた音楽をスターグループが配信する楽曲として提案している。そしてメタバース化する未来では、自身の魅力を発揮し人々を楽しませることが出来る人が今後活躍するのではないだろうかと考察した。また、英語はインタビューなどコミュニケーションの際には話せた方が良いが歌は母国語でも独自の響きが魅力となり他言語圏のファンにも親しまれるようになるのではないだろうかと考察した。
 最終章にあたる第4章ではこれらの考察を踏まえ、本テーマを達成するためのプロジェクトを提案し締めくくられている。これからの未来では、あらゆる空間を舞台とし様々な形態で自身の魅力を発信することで人々を楽しませるグループが今後のエンターテイメントの先駆けになるのではないだろうか。




はじめに 
 Jpopから世界的スターグループを誕生させる。私はこの決して容易ではないこの望みが実現可能であると心の底から強く思う。日本を土壌にして創出されたカルチャーや人はもっと世界に羽ばたくポテンシャルを秘めていると確信しているからだ。現に戦後、坂本九の「上を向いて歩こう」が全米1位のヒットを記録したという事実がある。これは、日本の音楽が国境を超えて支持される可能性を示唆しているように私は思う。しかし、現状多くのアーティストが日本国内を拠点に活動していると思う。だからこそ、私は本テーマを通じて、「Jpopから世界に向けて発信するスターグループを誕生させるには」という問いを追求したいと考えたのである。この問いは私自身の大望とも言い換えることが出来るだろう。どのようなグループ像が本論から創出されるのだろうか。
 現在、世界的スターグループとして真っ先にに名を挙げられる存在はBTS(防弾少年団)である。彼らは世界的で最も権威があるとされる米国の音楽チャートであるビルボードを幾度も制覇し、数々の賞を受賞している。また、リーダーであるRMは国連本部でスピーチを行うなど凄まじい功績をあげている。BTSの存在は異例にしろ、韓国からは他にも世界各地で人気を得ているKpopグループが次々に誕生している。一方で日本はどうだろうか。国内で圧倒的な人気を誇るグループであっても、世界を視野に入れるとまだまだ伸びしろがあるのではないだろうか。そもそも、この状況の背景には、韓国が海外進出を前提に活動していることに対し日本は国内アプローチに専念しているという事情がある。そのため、韓国は欧米にヒットしやすいクールビューティー系であることに対し、日本のアイドルはかわいい系が主流なのである。しかし、だからこそ海外進出を前提にプロデュースすれば、BABYMETALのように日本のグループが海外でヒットする見込みは充分にあるといえる。ただ、誤解しないで欲しいのは日本のかわいい文化を否定する気は一切ない。むしろ可能性を感じている。問題はどうすれば、その日本の面白いカルチャーを世界に通じさせられるかということである。
 まず私は、万国共通スターに欠かせない要素として「次世代との共鳴」と「唯一無二性」があると仮説を建てた。例えば、かのビートルズはイギリスの階級社会は若者勢力を味方に変容させた。若者たちの規制秩序に対する反発心とビートルズの作るロックンロールが共鳴したのである。一方でBTSは「10代・20代に向けられる社会的偏見や抑圧を防ぎ、自分たちの音楽を守り抜く」というコンセプトを掲げ、競争社会を生きる若者たちから絶大な支持を得た。また日本のアーティストでは、きゃりーぱみゅぱみゅがKawaiiを通じて原宿を好むティーンエイジャーを中心にファンを獲得し、今では地域や世代を超えて愛されている。このようにスターを誕生させるにはユースカルチャーと共鳴することがひとつの鍵になっているのではないだろうか。そして「唯一無二性」に関しては、ビートルズは数々の異例の事件を起こした歴史的にも比類のないグループであり、BTSはkpopではなくBTSpopというジャンルを確立させるほど彼ら独自の音楽を奏でており、きゃりーぱみゅぱみゅは存在自体が時空を超えた存在として広く認知されている。このように、この二つのキーワードは万国共通でスターと呼ばれる存在から必然的に見出される要素ではないだろうか。
 以上のことから、私は仮説として、スターに欠かせないものを「次世代との共鳴」そして「唯一無二性」と仮定し、それらを踏まえてJpopから織り成すとしたらどのようなグループ像が生まれるかを本論で提案していく。

第1章 次世代との共鳴
1ー1 Kpopの成り立ち
 世界の次世代との共鳴はどうすれば起こせるのか。それはソーシャルメディアを活用することがひとつの答えになると確信している。その根拠は世界的ブームであるKpopと近年再興しているシティポップがブレイクした経緯にある。
 まず、この段落ではKpopが世界で人気を獲得するに至るまでの経緯を参考にJpopから世界的スターグループを誕生させるヒントを探す。まず、大前提として「はじめに」で書いた、日本は国内人気に留まっていることに対し、Kpopはグローバルに活躍しているのはなぜかというと、マーケティングの規模が最大の要因だと考えられる。日本は戦後のバブルなどの好景気により、日本国内だけを対象にアルバムを出してもマーケットが回っていた。そのため、可愛い系アイドルなど独自の文化が発達していったのである。この可愛い文化は完璧ではない幼さを売りにするものであり、未成熟文化と言い換えることも出来る。不完全さを売りにする可愛いは世界からすると非常に独特なものであるため、日本はガラパゴス化しているという言葉にも頷ける。一方で、Kpopアイドルの特徴を一言で表すなら、パーフェクトという言葉がふさわしいだろう。Kpopアイドルの圧倒的な歌唱力、ラップやダンスなどパフォーマンスの完成度には誰もが魅了される。また、リリースされる楽曲には北欧出身などの多国籍プロデューサー陣が携わっており、そのためEDMやPOPなど様々なジャンルの要素が織り交ぜられていることも特徴的である。このような完璧なグループが続々と誕生される背景には、人口的な事情から韓国が打ち出したマーケティング戦略が関係しているという説がある。人口が米国や日本に比べ比較的少ない韓国は、はじめからアジアなど世界に売り出すことを前提にしているため、欧米好みの楽曲を制作し、万国共通で評価されるパーフェクトなパフォーマンスを目指していった結果、現在のKpopに至るのではないか。
 この仮説についてDATOKYOからご見解を頂いたところ、この仮説はあくまで結果論にすぎないということに気づいた。結果から要因を探すのではなく、はじまりから現状までの経緯をみると、まず韓国はK-Popのようなポップ文化をはじめた時、今のような世界的に注目されるグループをヒットさせるというところまで考えておらず、90年代頭は、韓国でそれほどまでにエンターテイメントが発展していたわけでもなかったという。ではどのような流れだったかというと、まず、90年代頭は韓国でそれほどまでにポップ文化が浸透していたというわけでもなかった。きっかけは、ひとつのグループがアメリカからヒップホップを持って帰ってきたところからスタートされた。決まった衣装で決まったものを歌うのが当たり前であった当時、ヒップホップの自由なスタイルは衝撃的であった。韓国では、そのヒップホップを韓国の雰囲気にアレンジしようとするグループが出てきたという。アメリカの英語で歌うラップを韓国語で、ダンスも韓国流に振りを合わせたグループがその路線で上手くいくと、他のグループもそのスタイルを真似するようになった。その結果ライバル同士がお互いにより良いラップ、ダンスを出し合うようになり、その積み重ねで2010年から2020年代にKpop文化は形成されていった。そして、そのように韓国で様々なアレンジが繰り広げられるなかで今度は海外で活躍する人を作ってみようとする動きが現れた。例えば、少女時代や東方神起がそのはじまりである。アジアで反応が出るまで苦闘があったが、徐々に進展があり、インターネットの普及も重なったことで、今でいうBTSなどのグループが誕生した。
 決して、最初から現状を想定して動いていたわけではない。ましてや、エンターテイメントは政府のサポートだけで計画通りに成し遂げられるものでもない。エンターテイメントは日本語にすると喜ばすという仕事である。その楽しませるという目的において政府がお金をかけてるから人々が喜ぶというわけではないだろう。喜びとはマインド的な問題であり、政府が操作出来るものではないはずだ。Kpopは何をすれば人が喜ぶかというスタートから徐々に発展していった結果、楽しませる対象が世界である現在のKpopに成長していった。これがKpopの成り立ちだという。
 では、日本はその過程がなかったのかというとそうではなく、やはりマーケットが国内であることが現在世界的なビックアーティストが比較的いない大きな要因だという。しかし、だからこそ独自に発展した文化があるのだ。両者とも現状に至るまでそれぞれの軌跡があり、そのため優劣をつけることには意味がない。最近になって徐々に韓国の雰囲気を真似する日本のグループが現れてきた。しかし、それは韓国のカバーというわけではなく、デジタルで自然とお互いが共有できる時代になっているのである。いつでも海外の情報が入ってくる現代においてどこの国のものであるというタグはもはや意味を成さない。
BTSやBLACKPINKが今アルバムを出したら絶対にヒットするという。それは彼女たちの実力だけではなく、前述したように多国籍の人がシェアしてさらにAI分析で世の中の人が好むリズムやメロディをすべてビッグデータで読んで、流行る確信がある結果物を歌っているからである。つまり、彼らがヒットすることは必然なのだ。
 現在世界的スターと呼ばれるBTSは、もともとヒップホップグループであった。しかし、近年リリースされたPermission to DanceやButterはよりポップなテーストで当初とは全く異なる雰囲気である。それは彼らのコンセプトが変わったからではなく、世界に合わせるようになったから生じた変化である。
 このような韓国の事例を参考にするならば、AI分析を活用して日本独自の文化を持ちつつ世界の人も反応するようなものを上手くキャッチして創れば数年後にはJpopの時代が訪れるかもしれない。これがインタビューで得たひとつのアイデアである。

 1-2 kpopとメデイア
 前述にもあるが、Kpopアイドルの世界進出にはインターネットの普及もひとつの要因となっている。またインタビューを通じてわかったのは「韓国の人はSNSの活用が早いし上手」ということである。近年緩和傾向にありつつも、事務所に所属している日本のアイドルがSNSでプライベートを載せることは少なく、楽曲もモバイルアプリでは配信しない意向のグループも多くある。一方でKpopアイドルはネットを探せば、VLIVEなど無料コンテンツが溢れかえっており、事務所側も容認しているのかファンによる各国語の字幕動画やいわゆる切り抜き動画がYouTubeやTwitterに山程ある。こうして、Kpopアイドルはネットを通じて拡散されているのだ。このようなKpopアイドルや事務所側のメディア活用の巧さには韓国でデジタル文化が浸透していることが背景にある。韓国は国民の90%以上がキャッシュレスを使っているほどデジタル文化が浸透している。そもそも、そういった文化から考え方や楽しませ方が変わってくるのだという。ある国ではステージがメインであり、ある国ではネット空間もステージと捉えられる。デジタル文化が浸透している韓国では、アイドルの在り方も自然とデジタル化していったのだ。滅多に見れないところにあったメリットが、あるタイミングから日常を見せることでギャップを魅せることがアイドルの人気に繋がるようになった。そう意味では、最近のアイドルはTVで音楽を披露する以上にTikTokやSNSにおける活動にも力を入れているというのだ。

1-3 シティポップ
 現在世界でグローバル現象を起こしている事例としてもう一つ興味深いものがある。それはシティポップと呼ばれる1980年前のムードのある洗練された都会的な音楽をニューミュージックとして誕生させたものが、近年欧米やアジアで再注目されているという現象である。このシティポップ現象について、まず、シティポップにZ世代が惹かれるのはリバイバルが新鮮に感じられるからという理由があるという。80年代のバブルは今の若い世代からは想像しがたいものである。そのため、リアルタイムを体験できるシティポップは若い世代にとって新感覚で興味深いものなのだろう。また、欧米で流行していた音楽に影響を受けつつも、日本語の特徴的な音節や隠しきれない独自の音階があり、それが海外からエキゾチックに感じられたのだと考えられる。
 このようにシティポップが海外のZ世代にも親しまれるようになった背景には、メディアの変遷が大きく関与している。昔は、レコードを手に取ってみなければ分からなかったことに対し、今ではモバイルによりリバイバルの拡散が行われてたことによって、体系的な聴き方から感覚的な聴き方に移っている。Spotifyではシティポップのプレイリストはユーザーの作成により膨大になっているようだ。そのなかでシティポップというプレイリストのなかに、他の国のバンドが含まれていたりと国籍でコンパイルするという既成習慣が薄まってきているという。ジャンルやアーティストによって整理された棚から掴み取るのではなく、ネットにより流動化したことでどこの誰のといったカテゴライズのもと自覚的に好きになるという入り口から、サブスクリプションの音楽アプリを使用して、文脈を気にせずに感覚的な操作で曲を見つけるようになったため、マニア的な聴き方からフラットな聴き方になったのだ。アメリカが主流でマイナーとしての扱いを受けていた日本のポップが、ネットによる流動化で国由来に対する意識が薄れたことによって今のシティポップ現象は引き起こされているのだと解釈できる。
また、日本は黒船来航以降、ハイブリッドに成長してきたことが分かった。日本は昔から米国など海外の文化と日本の文化を融合させて発展してきたという歴史を持つという。シティポップもそのひとつだろう。韓国や欧米などからまた新たな刺激を受けている今の混沌とした都会を反映させた音楽あれば、もしかしすると世界から反応があるかもしれないとインタビューを通じて考えた。

      CD(手に取る)
       モバイル
    カテゴライズ(棚に整列)
       流動化
どのジャンルの誰の曲を聞いてるか自覚的
文脈が薄れフラットに受容される  
体系的に聞かれるようになる
感覚的に選曲される
      内輪的流行
     軽快に拡散される


1-4 第1章のまとめ
 第1章ではKpop、BTS、シティポップの事例からメディアの変遷による人々の受容の変化について考察した。特にシティポップについて、補足すると現在TikTokで#Citypopを検索するとトップに出てくるのは海外ユーザーによる投稿である。この#が拡散を促しているのだ。YouTubeで検索しても韓国など海外ユーザーによるCitypopbgmといった旨の投稿などが多く見受けられる。
このような事例から私は第1章の文頭で述べたように世界の次世代との共鳴を起こすにはソーシャルメディアを活用することが鍵になるという答えを導き出した。誰もが手軽に扱えるソーシャルメディアでは、#など工夫を施せば海外の若い世代層のユーザーの目に触れる可能性も充分にあり、実力のあるものは、由来を意識せず評価されるため軽快に拡散される。そのため、ソーシャルメディアは世界進出における絶大なチャンスの場になるのではないだろうか。

第2章 唯一無二
2-1  Kawaii
 Kawaiiといって真っ先にきゃりーぱみゅぱみゅを思い浮かべる人は多くいるだろう。このKawaiiはいわゆる可愛いとはまた違うニュアンスのように私は感じている。可愛い系アイドルは未成熟文化を売りにしていることから、ちょっと下手なくらいが丁度いいという見解があるが、ここでいわれる可愛いとは、40代50代男性など可愛いアイドルのメインにあたる顧客達にとっての可愛いである。か弱い=可愛いが違和感がなく成り立つのが未成熟文化を売りにした可愛いの特徴である。
 しかし、きゃりーぱみゅぱみゅは果たしてか弱いだろうか。同調整圧力にも負けず、独自の世界観を繰り広げる彼女がか弱いと表現されることは不適切なように感じる。原宿スタイルは海外の若い層からも親しまれているが、彼らはKawaiiにか弱いイメージは持っていないのではないだろうか。「Kawaiiは無敵」という言葉があるように、私はKawaiiとハイレベルは両立可能だと考えており、Kawaii×ハイパフォーマンスを実現すれば世界を舞台に活躍するグループが誕生すると考えている。
 「Japanese Kawaii cultureは世界に行けると思う」そう語ってくれたのはきゃりーぱみゅぱみゅが所属しているアソビシステム社長である。未成熟文化由来の可愛いも、私が本文でKawaiiと表記しているものもひとつの方向性の違いであるということを教えてくれた。可愛いというのは概念であり、何を可愛いと思うから人それぞれである。だからこそいまのティーンエイジャーが思うKawaiiに魅力を感じる人は世界にも多くいるのではないだろうか。Kawaiiには世界に羽ばたくポテンシャルがある。インタビューを通じてそれが確信できた。
 また、本論でキーワードとしている唯一無二を創出するにはということについてもお話を伺った。その結果分かったことは、現在唯一無二と呼ばれる存在は、唯一無二になることを目指していたわけではないということだ。自分達のやりたいことをやっていった結果、唯一無二に成っていったということである。Kawaiiもそうして誕生したひとつのカルチャーなのではないだろうか。

2-2 シティポップとKawaii文化
 シティポップが海外で流行していることは第一章に述べたが、親しまれているのは音楽だけではない。シティポップ調と称されるイラストや世界観ごと楽しまれているのだ。シティポップ調のイラストの特徴を端的に言えば「エモかわいい」である。どこかレトロでポップな女の子のイラストが多い。しかし、興味深いのはシティポップが流行していた当時はシティポップに対してかわいいなんてイメージは一切なかったことだ。これは、日本アニメが全世界の子供達に観られていた時代シティポップとその80年代90年台のポップアートの絵柄が同時並行に伝わっていきその結果セットのようなイメージで海外では受容されていったのである。その結果現在では、シティポップとは音楽だけではなく日本ならではのエモーショナルな雰囲気と可愛いが混ざり合った独特なニュアンスの世界観がシティポップとして楽しまれているのである。

2-3 ARMY
 この段落では、マーケティング視点で「唯一無二」について考察する。唯一無二とは代わりがいないことだ。そこで、唯一無二をかけがえのない存在という言葉に置き換えて、ファンにとってかけがえのない存在になる、あるいはそう思わせるにはどうすれば良いかを考え出したいと思う。
 BTSにはARMYと呼ばれるファンがいるが、BTSとARMYの関係性はもはやいちアイドルとそのファンという次元ではない。BTSが数々の賞を受賞する裏側にはARMYの凄まじい努力があった。TwitterなどSNSを使った広報活動、同じアルバムを何十枚と買うだけではなくビルボードでBTSをNo.1にするためにモバイル購入も欠かさない。
 果てはBTSをきっかけに募金活動を行うなど、社会運動を起こすARMYもいる。ARMYにとってBTSがそれほどまでにかけがえのない存在になっているのはなぜだろうか。
 そこで、BTSとARMYの関係性についてDATOKYOの話をもとに考察し解答の参考にしたいと思う。
 まず、インタビューを通じてBTSとARMYの強固な関係の成り立ちにもメディアの変遷が関与していることが分かった。第一章で述べたように、インターネットの普及に伴い、人々の受容形態も変化していった。そこには方向性の変化もある。10年前のマスメディアを通してアイドルを見ていた時代、観客は一方的に流れるものを受けとるしかなかった。しかし、現在はどうだろうか。人々は放送時間を待たずとも、自ら検索することが出来る。コメント機能を使ってリアルタイムでリアクションすることも可能である。つまり、方向が一方向から双方向になったのだ。
ARMYはその方向性の変化が生み出したものともいえる。ARMYの何が凄いかというと、制作されたものに対して、ただ見るで終わらず自分の意見を積極的に挙げていることである。ファッションに納得しなければスタイリストを批判し、体型などビジュアルは勿論、アイドルの言動にも敏感に反応する。前述したように、面白い場面があれば字幕をつけて拡散するなど広報活動にもぬかりはない。こうしたARMYの行動の背景には、私達がこの子達を育てるという意識が働いてるからだと考えられる。そして事務所側もそれらの意見を反映するため、ARMYはより熱心になっていくのである。
 国民プロデューサーがコンセプトのWanna Oneや近年行われたNizi Projectにもこの心理現象は発生している。デビューするまでの過程を見せることで視聴者は、私はこの子をデビュー前から知っていると、いわば親心のようなものを抱くようになるのだ。最近注目されているガールズグループaespaは、ファンのコミュニティ作りに力を入れている。韓国では、こうした心理作用の利用が既に始まっているのだ。Kpopは試行錯誤するなかでファンと連帯する形を見つけたのである。つまりARMYのあり方はファンコミュニティの完成形ではなく、今後の芸能人とファンの関係性を表徴したものだといえる。最近ではファンのサポートによって成り立つライバーが増えているが、そうした互いに作用する形が、エンターテイメントではこれから主流になっていくのではないだろうか。メディア変遷によるファンの在り方の変化を知ることができた。
 また、私は思い入れを強くさせる数々のエピソードが人々をBTSに夢中にさせていると考える。BTSは無料で見れる大量の動画コンテンツがあると書いたが、その動画の内容は、彼らが舞台でパフォーマンスしている姿以上にBTS独自のバラエティ番組だったり、彼らのギャップがみれる動画が多くあった。またBTSWORLDというBTSがデビューから成長する過程をマネージャーとして支えるスマホアプリのゲームが配信されている。こうしたコンテンツにより、単純に目に触れる機会が多くなり日常の一部になるだけではなく、BTSとARMYの共通の思い出が増えるのだ。またこの段落の冒頭にもあるように、BTSの成功の裏側にはARMYの弛まない努力があり、日頃からARMYへのメッセージを多く発信しているBTSだが、表彰の際には必ず改まって感謝を伝えている。そのため、BTSにとっての成功はARMYにとっても勝利であり、ともに成しとげてきたという思いが強くなるのだ。BTSの軌跡にARMYは欠かせない存在となっている。そのように鑑賞する存在ではなく、ともに歩む存在になることでBTSはARMYにとってより思い入れの強い存在になっているのではないだろうか。
 以上のことから、私は鑑賞されるのではなく、ファンと二人三脚で歩むグループが今後活躍するかもしれないと考えた。第1章を踏まえると、それを実現するツールとしてSNSや今後期待されるライブ配信アプリを最大限活用し、熱量の高いファンコミュニティ創ることは今後プロデュース活動において欠かせないものになるのではないかと推測する。

2−4ライブ配信アプリ
 2−3の内容を踏まえると、ファンと密接な関係性を気づくためにはライブ配信アプリが有効であると考える。なぜならライブ配信アプリはリアルタイムを共有することで、画面越しだとしても同じ空間で感情をシェアできるからだ。例えば、サッカーの試合を生配信で見るために集結する団体は珍しくないだろう。一人で見ても結果は変わらないのにわざわざお金を払ってまで集まるのは、ともに感動を分かち合いたいからではないだろうか。試合の雲行きが危うくなれば固唾を飲んで見守り、勝利すれば泣いて喜ぶ。そんな一喜一憂こそがスポーツ観戦の醍醐味なのかもしれない。
 ライブ配信にも通じるものがある。私が考えるにライブ配信には感情移入をさせるという特徴があると思う。深夜の学校に潜入してみた、というライブ配信があったら視聴者は面白がってみるだろう。画面越しにスリルを疑似体験することでドキドキ感を味わうことが出来るからだ。もし、配信者が次は右に行くか左に行くかを視聴者に相談すれば、視聴者はより参加意識が強まり配信者にとって自分の存在が必要であると感じられれようになるだろう。さらにその先に何か事件があれば自分はそれをリアルタイムで共有していた目撃者になれるのだ。そうすれば、益々ファンは、自分はその配信者にとって特別な存在であると感じるようになる。つまりライブ配信を活用して、様々なストーリーやハプニングをファンとリアルタイムで共有すれば、より密接な関係性が築けるようになるのだ。言語の問題は自動字幕文字起こし機能などを活用するなどの解決方法が考えられる。ライブ配信アプリというプラットホームは活用次第でファンと親密な関係を築く場として機能させることができるのだ。


第3章 世界へ発信

3-1 TikTok
 第1章からグローバルに繋がれるインターネット空間が次世代との共鳴を起こすチャンスの場になること、第2章からスタートは算段ではなく発見から誕生するもので双方向に繋がることでかけがえのない存在としてファンに受容されることを学んだ。第3章ではそれらを踏まえて、インターネットを通してユーザーとダイレクトに繋がることで世界に発信する方法について考案する。
 私はSNSのなかでもTikTokが世界進出における本拠地になるのではないかと考えている。そう考えるのは、TikTokには「瞬間的に好きになる」という最大の特徴があるからである。というのも、次々に動画が流れ込んでくるTikTokでは、目にして一瞬の内に人々はそのコンテンツをスワイプするか否か判断する。そこで興味が湧いたものにはダブルタップでハート(like)を送信する。
 シティポップのグローバル現象の拡散現場として機能したのもTikTokである。TikTokでダブルタップする際、ユーザーはいちいち何がどうすごいから評価するなど思考を巡らせてはいないだろう。多くの場合、直感でジャッジされるものだ。第一章にもあるが、感覚的に操作されるからこそ拡散に繋がるのだ。特にTikTokのメインコンテンツである動画は人々の感性にダイレクトに訴え掛ける。つまり、TikTokは人々の感覚にアクセスするのに最適なツールなのだ。芸術は国境を越えるという言葉があるように体感的に楽しめるものであれば、シティポップの例があるように国境を超えて親しまれるはずだ。ハッシュタグを何ヶ国語が設定すれば海外ユーザーの目に留まる可能性は充分に見込める。
 またTikTokを使用している10代を対象にTikTokがきっかけで好きになったアーティストがいるか調査しところ90人中78人がいると答えた。やはりTikTokは若い世代が好きなものを見つける空間としても機能しているのだろう。以上の理由から、世界の次世代と繋がる場としてTikTokは絶好の機会だと考えた。
 そこでTikTokのエキスパートにご見解を頂いたところ、まず国際基準ではじめることを前提に設定することが重要になることを学んだ。何故なら日本は全体的いえば、まだまだ年功序列型社会である。そのため金銭的に余裕があるのは、比較的高い年齢層だ。つまり、日本国内で売れることを目指せば必然的にメイン層に受けの良い可愛いを提供しなくてはならなくなる。そのためもし世界進出を目指すのであれば、はじめから世界を対象にアプローチすることが前提として必要になる。よって、TikTokを活用して世界に向けて発信するという方向性は理にかなっているといえる。
 とはいえ、溢れんばかりのユーザーが投稿するTikTok内で人気を獲得するのはどのような者だろうか。それは一目見てこの人だと分かる人物である。#可愛い#女の子、にヒットする人物は多くいる。しかし、#美大女子#オッドアイ#ラッパーとタグ付けられる人物がいれば、確実に認知されていくだろう。これは極端な例だが、一瞬で飛ばすか否か判断されるTikTokにおいて一目で分かるとは非常に重要な点である。一発屋にならずに持続的な人気を得るためにも、この人だと覚えられ、着実に熱量の高いファンを獲得することが欠かせないのだ。
 視覚的に分かりやすいという点は標的が世界の次世代ならば尚更重要だ。多くの人々はTikTokを開く際、頭のスイッチをオフにしている。だからわざわざ他言語を理解しようとするユーザーは滅多にいない。そのため基本的には複雑な作品よりぼーっとしても体感的に楽しめるコンテンツが良いと考えられる。
 またグループ活動の一環としてTikTokを利用するならば、ある程度知名度を獲得している状態ではじめるのが効果的だという。ユーザーは思考は働かせずとも意図には敏感に反応する。バズるために作った動画はその魂胆がユーザーにどことなく見え透けてしまうものなのだ。そうするといわゆる萎えが生じ、ユーザーは離れてゆく。そのためTikTok内でファンを増やそうとするのではなく、「あのグループがTikTokで投稿してるらしい。気になるな」とユーザー側から興味を持たれ検索されるのが理想の形になるのではないだろうか。
 ところが、ここでひとつ厄介な点が浮上する。TikTokを利用するにはある程度の知名度があってからの方が良い。そのため通常活動と同時並行で行うことがベターだということが分かった。しかし、国際基準を前提にするのであれば話は堂々巡りになってしまう。海外進出の場として提案したTikTokで継続的にバズるには、既にある程度の知名度があることが求められるのだ。国内ならともかく海外で事前に知られておく必要があるならばどうすればよいだろうか。そもそも海外で知られるためにTikTokをを活用しようとしていたのだ。勿論、拡散性の高いTikTokで多言語のハッシュタグを付けて投稿するだけでも海外ユーザーとつながれる可能性は十分にあるだろう。ひとつの解決策としては、TikTokをひとつの入口と捉えYouTubeやライブ配信などモバイル空間を最大限活用してグループを知るきっかけをどんどん増やしていくということが考えられる。シティポップの場合、DJ Night Tempoがリメイクをするなど有名人による話題性が拡散のひとつの要因であった。そのように有名人にキャッチされることがあれば、広まるかもしれない。コラボレーションを依頼するという方法もあるが、肝心なのはユーザーによる拡散だ。シティポップは音楽でカルチャー的に楽しまれていたため、アレンジする題材として注目されたが、グループの場合はグローバルを対象にどのように親しまれることが出来るのだろうか。
この問題は第4章で詳しく審議する。

3−2 仮想空間
 BTSの公式キャラクターであるTinyTAN、自分のもう一つの自我であるアバターと出会い、新しい世界を体験するというコンセプトを持つaespa。ちなみにaespaの名前の由来はAvatar × Experienceである。なぜ今このようにグループがアバターを活用する動きが出てきているのだろうか。それは、メタバース化する未来を見据えているからである。アソビシステム株式会社では既にメタトーキョープロジェクトが始動されているなど仮想空間は今以上により身近なものになろうとしているのだ。
 インスタグラムにいる自分と現実世界にいる自分は第三者からしたら違うキャラクターのように目に映る。しかし、SNS空間で発生している自分も確かにこの世界に存在して息づいているのである。そのもう1人の自分ををパートナーとして生きる未来が訪れようとしているのだ。そうなった時インターネット空間で生きるもう1人の自分を具現化する媒体になると考えられているものがアバターである。そのアバターを通じてコミュニケーションをとる、仮想通貨で売買するなど、仮想世界ライフの比重が今よりずっと大きくなるというわけだ。もはや龍とそばかすの姫に登場するUのような世界がおとぎ話ではなくなるのだ。
 そうなればエンターテイメントの在り方もまた大きく変わるだろう。前章であげたように、メディア変遷がエンターテイメントにもたらす影響は絶大である。例えば現実世界では難しい、有名キャラクターとコラボレーション企画が仮想空間では行えるようになる。また方向性も変わるだろう。今以上に誰もがアバターという匿名性を利用して発言するようになると考えられる。また、ビジュアルを自由に設定できるアバター世界では容姿は武器にならなくなるだろう。そのため、仮想空間内ではモデルという職業はどう成り立たせられるのだろうかという疑問が出る。現実世界において、モデルが羨望の的となっているのは、ハードな体型管理を行い人々の理想のボディラインを体現しているからである。しかし、誰もが理想体型になれる世界でモデルの需要とはどう見出していけばいいのだろうか。
 これはモデルに限った話ではない。マーケティング視点でいえば、誰もが理想になれてしまう何でもありの仮想世界では、差別化を図る事が難しくなるという状況だ。そのため、仮想世界でスターになるには今以上に実力が求められるようになる。龍とそばかすの姫では、Uで歌姫として人気を得ていたベルは圧倒的な歌唱力を持っていた。機械加工では太刀打ちできないほどのスキルがあれば仮想世界でも通用するのかもしれない。しかし私は様々なインタビューを通じて、スキルというのは楽しませるためのひとつの要素だと考えるようになった。核心的に求められるのは、現実でも仮想でもその人だからこそできるパフォーマンスを繰り広げることが大切になるのではないだろうか。テクノロジーでは作れない奇跡から生まれた自分自身の魅力を発揮する人物こそが、メタバース化する未来では輝くと考えた。


3−3 クラブダンスミュージック
 3−1の最後にグループを知るきっかけを増やすという案を出したが、モバイル空間以外で入口となるメジャーな場所にクラブがある。クラブで流れる音楽で気になるものがあれば、iPhoneユーザーはShazamを使えば瞬時に検索できる。そこで気に入った曲を後日音楽アプリで聴いたりラインミュージックに設定する者もいるだろう。当然、音楽をかけるDJにとっても自分が流した音楽は記憶に残る。クラブで流して気に入った曲をラジオ配信でで流すDJもいるかもしれない。音楽関係者や若い世代が集まるクラブで流れる音楽は昼間の世界にも浸透しやすくなるのではないだろうか。
 私自身DJとしてクラブで音楽をかける機会を何頂いたことがある。その時感じたことはEDM、Kpop、Latin系音楽をかけてもフロアは盛り上がり続けるがJpopをかけるのはタブーと雰囲気が確かにあったことだ。この件について、アソビシステムにインタビューして気づいたことはJpopという括り方をしていたことがそもそもズレていたということである。Jpopといっても米津玄師やちゃんみなは全く曲調が違う。例えば、あいみょんの曲はクラブ向けではないかもしれないが、CAPSULEの曲ならフロアは盛り上がり続けるだろう。Kpopについて同様である。周辺諸国はKpopに対して共通のイメージがあっても、実際本国の人からすればIU、ホンジニョン、BIGBANGなど様々なカラーがKpopという言葉から連想されるという。当然のことだが、KpopにもJpopにも色々な曲があるのだ。
 それを踏まえたうえで、私はダンスミュージック要素を含んだJpopを創りたいと思う。なぜ、ダンスミュージックにこだわるかというと、私はノれるという要素が国境をを越える音楽に繋がるのではないかと考えているからである。なぜなら、クラブで流れる音楽は歌詞の意味が分からなくても自然と私たちの体を揺らし踊らせてくれる。ノれる音楽はその言語の意味を知らなくても、体感的に楽しめるのだ。だから言語圏を超えて親しまれる。
 最近Kawaii future baseなどKawaii系ミュージックや和風エレクトロ、Japanese Trap、Kyotoというワードで検索される琴や和太鼓など和楽器を使用された音楽がYouTubeで多く投稿されており海外ユーザーによるコメントが多く付いている。
 1−1で「日本独自の文化を持ちつつ世界の人も反応するようなものを上手くキャッチして創れば数年後にはJpopの時代が訪れるかもしれない。」と述べたがそのアイデアに基づけば、日本の風情を感じられるダンスミュージック要素が濃い躍動感ある楽曲を展開すれば世界でも通用するのではないだろうか。以上の考察より日本カルチャーを反映させたダンスミュージックを本論のスターグループの楽曲アイデアとして提案したい。

3−4 language(日本語か英語か)
 海外進出を目指すのであれば英語を話せることはマストだろうか。それこそKpopアイドルには大体一人流暢に英語を話せるメンバーがいる。リリースする歌も英語をメインとして考えた方が良いのだろうか。
 この結論は、英語を話せるに越したことはないということである。例えば現地でインタビューや記者会見が行われる際、通訳を通すよりも本人が喋った方が視聴者の心に響くのは確かだろう。英語は世界のファンとコミュニケーションをとる架け橋になるのだ。
 しかし、リリースする楽曲に関しては母国語で世界に通じる可能性は充分にある。例えば、シティポップが海外の人に好まれる理由に日本語独自の響きがエキゾチックに感じられたことがある。他にもきゃりーぱみゅぱみゅの実例や最近では韓国語をメインとすることを特徴にしているKpopグループも誕生している。Englishversionがあればそれはそれで良いが、やはり聴きたくなるのは本家だろう。私はこの言葉に強く共感する。
 言語もそのグループの世界観を構成するひとつの要素となっているのではないだろうか。それならばむしろ言語独自の響きを魅力にした楽曲がリスナーを楽しませるのではないだろうか。

第4章 Metabal Monstar Project
4ー1  Metabal Monstar Project
「Metabal Monstar Project」
このプロジェクトを私は「Jpopから世界的スターグループを誕生させるには」という果てしない問いに対するアンサーとして提案することで最後に卒業論文を締めくくりたいと思う。
 まず、Metabalという不思議な名前はメタバース空間とグローバルというワードから合わせ創られた言葉だ。Monstarがsterではなくstarと表記されているのも断じてスペルミスなどではない。あえてである。そろそろお察し頂いたかもしれないが、このプロジェクトは一体何かというと、メタバース空間を通じてグローバルスターグループを誕生させようというものだ。メンバー全員がそれぞれアバターを持って活動する。(便宜上、そのアバターを本論ではメタモンと呼ぶことにする。)しかし、それではaespaやBTSのTinyTANとどこが違うのか、という疑問が出てくるだろう。それは、メタモンには日本カルチャーを集約されているということだ。まずデザインは、シティポップ調にKawaiiメンバーそれぞれの特徴を捉えたものにする。ジャパンポップアート独自の可愛いくてどこかエモーショナルなニュアンスは世界からも愛されると考えるからだ。ゆるキャラのような親しみやが感じられるものであれば尚良い。そしてメタモンはモチーフとなっているメンバーの付随品としてではなく独自に活動するのだ。メタモンはモバイル空間を拠点に活動する。
 3−1でTikTokを海外進出の場として活用するならばある程度の知名度がある状態ではじめることが効果的だ。そのある程度の知名度まで持っていくためにはどうすれば良いかという課題があった。ここで、アバターを通じて発信する意味が生まれる。まず2−2で述べたように、親和性の高いインドネシアなど東南アジアやアメリカでは日本のアニメーションを好んでみる人が既に多く存在する。まず、その層をターゲットに#アニメーション#ゆるキャラとしてメタモンを浸透させる。この段階では、グループの名前を認知されずともゆるキャラアニメーションコンテンツと親しまれれば十分である。そしてTikTokユーザーの間で「あのシリーズね」となるお馴染みの存在になれば充分な結果である。
 具体的なコンテンツ内容とすれば、なんとなく見ていて癒されるようなものやショートコントやストーリーをアップロードし、続きはYouTubeに載せてメタモンを検索する場所を増やす。そして、アニメーションコンテンツとして浸透した頃、現実世界で活躍しているメンバーの楽曲をカバーしたものをメタモンverMVとしてアップロードする。そうすることでメタモンしか知らなかったファンもメンバーの存在を知ることになり逆も然りである。このプロジェクトを実行する際の留意点はブレないことである。日本カルチャーを土壌に世界へ羽ばたくという共通な核があるから2つは独立しつつも1つのグループとして成り立つのだ。


4−2 Metabal Monstar Projectの展開
Metabal Monstar Projectでは前章を踏まえ次のような展開を考えている。まず、楽曲は言語を含めた日本カルチャーを反映させたダンスミュージックを特色とする。そして次世代と繋がるべくライブ配信アプリなどを活用してファンコミュニティ作りにも力を入れることを怠らずSNSも駆使して世界へ発信する。さらに有名キャラクターや海外アーティストとのコラボレーションを積極的に行う。これがMetabal Monstar Projectの基本方針である。
 また、グループの構成として、性別以外の新しい基準があってもいいのではないかと考えている。現実では男性と過ごしているひとがメタバース空間で女性として生きるケースも少なくない。よって、人種や性別を問われないメタバース化が進めば、今以上に性で分ける習慣も薄れていくようになるだろう。だからこそ、新しい基準でグループを構成することがより容易になるのではないかと考えられる。
 このように、デジタル化が進むことで可能性は無限大に広がってゆく。本論を執筆するにあたって、あらゆる空間を舞台とし様々な形態で活躍するグループが今後のエンターテイメントの先駆けになるのではないだろうかと考えるようになった。

おわりに
 上記で様々なことを論証した結果、仮説である「次世代への共鳴」と「唯一無二性」は世界に通用するスターを作り上げる要素となっていることが分かった。「Jpopから世界的スターグループを誕生させるには」という問いに対し、私は次世代との共鳴と唯一無二性というワードを主軸に解を探した。その結果、次世代との共鳴はインターネット空間がチャンスの場であり、唯一無二とは成っていくもので、マーケティング視点で考えればファンコミュニティ作りに力を入れることが有効かもしれないという答えに辿り着いた。しかしながら、そこから生まれるグループ像をいくら考えても完璧な答えに辿り着かないのはエンターテイメントには正解がないからである。
 私は最初「人気になるグループには法則があり、こういうグループを作れば上手くいくという答えがあるはずだ。だからそれを逆算して作ればいい」と考えていた。しかし、論文を書き進め、インタビューを通じてお話を伺っていくなかで、方針は考えられても、グループ像に正解はないのではないだろうかと考えるようになった。シティポップ、Kpop、kawaii、それぞれの発展過程を調べて分かったことはどれも最初から現状を想定していたわけではなかったということだ。やっていくなかで活路を見出していったのだ。アイデアを実践し、フィードバックを得てトライアンドエラーを繰り返し成長する。これが何事の発展におても真髄ではないかと考えるようになった。それらを踏まえた上で本論では、世界的スターを目指すグループの初期方針として「次世代との共鳴」と「唯一無二性」を軸とするあらゆる空間あらゆる形態で展開するMetabal Monstar Projectを設定することを提案したい。




謝辞
 私が卒業論文を選択したのは、「Jpopから世界的スターグループを誕生させるには」という自身の心のなかにずっとぼんやりと潜んでいた疑問に本気で向き合うことで、私は将来何がしたいか、それを叶えるためには大学生活はどのように過ごせば良いかを模索しようと考えたからです。そして実際に「やはり私は世界に発信することを仕事にしたい。私自身がメンバーになるのか、もしくはプロデューサー、楽曲提供者として携わるのか、形態は分からないが生涯をかけても何らかの形で日本から世界的スターグループを誕生させることに全力を尽くしたい。その一歩として卒業後はまず、Japan dance musicを制作しよう。」と今後の指針を発見することが出来ました。
 本論は二万字以上と目標である1万字の倍の量になってしまいましたが、執筆中苦に感じることは一切ありませんでした。むしろ書ききれなかった学びも沢山あります。お恥ずかしながら、これほどまでに情熱を注ぎ込んで勉強をしたことは今回が初めてです。執筆中何度か思考が迷走することもありましたが、インタビューを通じて様々な角度からお話を伺う度に自身の考えが更新され、新たな視点、考え方を糧にテーマに臨むことが出来ました。本卒業論文が完成したのはインタビューを引き受けてくださった皆様のおかげです。改めてお礼を言わせてください。本当にありがとうございました。そして少々変わった本テーマを認めてくださり自身の夢に本気で向き合う機会をくださった森岡先生、貴重な経験をありがとうございました。
 この卒業論文は私の18年間のひとつの節目となるものです。3ヶ月間毎日沢山のことを学び考え、試行錯誤するなかで問いの答えに終着点はないのだと気づきました。時代が進めばアプローチも変化するように本論で提案したものは、現状考えられるほんの1つの解に過ぎません。私はここで終わらせず、これからも悩み向き合い続けたいと思います。今後は考えるだけではなく、アイデアを実践することに重点をおいて活動する所存です。お世話になった皆様にいい報告が出来るよう精進して参りますのでどうか見守っていただければ幸いです。
 以下追記です。2022年3月現在、世界では2022年ロシアのウクライナ侵攻が起きています。私はそのような状況下で本論を執筆するにあたって、エンターテイメントは人間らしいものであると考えるようになりました。戦時下など生存が危ぶまれる状況ではアートや娯楽はどうしても蔑ろにされてしまいます。もし、人間が生存し子孫を繁栄するためだけに生きていたら芸術や音楽は不要なものです。しかし、第二次世界大戦で米英音楽の禁止令が張り出されようとも命がげで音楽を聴き続ける人がいるようにエンターテイメントは人が人らしく生きるために欠かせないものなのではないでしょうか。
 なぜ人々は生存に不要な娯楽を愛するのか。私はその理由に心を感じるのです。心臓を動かし続けるためには必要ないもの。しかし、心を豊かにするのに娯楽とはかけがけのないものなのだと思います。どうか暴力に迫害されることなく、繊細で奥ゆかしいものがこれからも慈しまれる世界であって欲しいのです。
 これから先AI化が進んでいくと思いますが、私は機械化するなかでも人間らしさというものが失われず人々の生活が様々な感情に彩られ豊かになる未来を望みます。そして、エンターテイメントが健やかに発展する平和な世界を願うことを記して筆を置きたいと思います。センシティブな話になってしまいましたが、ここまで読んでくださった皆様、卒業論文を書くにあたってお力を貸してくださった全ての皆様に心より感謝申し上げます。





<参考文献>

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cufture黒田隆憲「アソビシステム代表が語る原宿と、アフターコロナの新しい地図」
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新市場を創る人のデジタル戦略メディア 日経クロストレンド「クラブ音楽の常識を覆す 昭和シティポップを盛り上げる韓国人DJ」https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00362/00028/#loginBack(2022年 1月19日)

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小島領剣「企業がTikTokに取り組むなら絶対知っておくべき11の中国企業事例」https://note.com/kojimaryouken/n/ne6672afc9a94 (2022年 1月20日)


EVENING編集部「世界を熱狂させる「K-POP」を支える戦略的なマーケティングとは...」https://evening-mashup.com/archives/96285
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(2022年 2月5日)

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https://streetdance-m.com/bts-choreo/(2022年 2月5日)

CINRA.NET編集部 後藤美波
「K-POPの世界的ヒットの裏には、北欧プロデューサーの存在がある」https://fika.cinra.net/article/201811-kpop (2022年 2月5日)

KOMPASS「中田ヤスタカはなぜ世界を魅了する? Perfume・きゃりーの海外人気を支える作家性を紐解く」https://kompass.cinra.net/article/202202-nakatayasutaka(2022年 2月12日)


株式会社HYBEJAPAN 「TinyTAN POP-UP ‘TinyTAN LAND’、10月30日オープン!」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000045862.html (2022年 2月16日)

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「aespa (エスパ)」https://smtown.jp/artists/aespa/(2022年 2月16日)

PRTIMES「リーグ・オブ・レジェンドのバーチャルポップグループ「K/DA」が新曲『MORE』を発表 」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000165.000024470.html (2022年 2月16日)




<実施研修先>
アソビシステム株式会社 中川悠介様  DATOKYO                          キム様
株式会社Natee代表取締役 小島領剣様 音楽ディレクター    柴崎裕二様

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