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シブヤごはん散歩No.4 「明日また頑張ろう」と思えるようなお店に 宮崎料理専門店「ひしゅうや」(後編)

神泉で18年、宮崎料理の専門店として根強いファンの多い「ひしゅうや」。後編では、ひしゅうやさんと渋谷との縁について、また、お店を訪れる人との出会いを通じて日々感じることなど、ひしゅうやを経営する株式会社日州舎 代表取締役の川野祐嗣さんに語っていただきました。


出店を決めたのは、「宮崎料理をよりリーズナブルに」の思いから

宮崎県内でとんかつ店「二幸」や郷土料理の「魚山亭」などを経営していた川野さんのお父様が宮益坂に「魚山亭 渋谷店」(現在は道玄坂)を開業したのが1984年のこと。ひしゅうやが生まれるきっかけになったのは、川野さんがお父さんの跡を継いで東京のお店を任されてからの出来事なのだそうです。

「2、3ヶ月に一回、必ず来てくれる若いカップルがいたんです。『チキン南蛮を食べたいから、バイトしてお金を貯めて、ここに来るのが楽しみなんです』って。宮崎出身の方でね。魚山亭はある程度単価が高いので、若い人が来るとなると少し敷居が高かったんですよね。もう少し安く提供できた方が若い人は来やすいだろうと思って。それで、少し単価を抑えて間口を広げた、カジュアルな店を出すことにしました」

神泉に出店することを決めたのは物件のご縁だそうですが、「開いてみたら、近くに会社も多いし宴会なんかにも使っていただけて、ここで良かったと思っています。」と川野さん。いまは若者に限らずさまざまな年齢層の人が訪れ、にぎわっています。

「宮崎の人ももちろんいらっしゃいますよ。ぼくが宮崎弁をしゃべってると、東京で宮崎弁を聞くとは、ってびっくりされますね(笑)」

コロナ禍でも切らなかった宮崎とのつながり

お店を続けることに苦労はありますか、と伺うと「それは、正直言うと苦労だらけですよ(笑)。いろんな問題もありつつも、お店を開ければお客さんが来てくれて、『うまいね』って笑顔を見せてくれる。ありがたいことですよね

宮崎出身の方が来店されて、『な、宮崎っていいだろ?』というように、嬉しそうにしてくださっていることがよくあるんです。宮崎の美味しいものを食べていただいて、宮崎出身であるご自分のことを嬉しく思ってくださってる。そんなときはやっぱり嬉しいですね」

店内には、宮崎が舞台となった映画のポスターが飾られている

コロナ禍のときも完全に休業することはなく、営業を続けてきたひしゅうやさん。クラフトビールや食材も、さまざまな工夫をこらしながらできる限り宮崎から運んでいたのだそうです。

「あのときは街全体が無人に近くなっちゃってましたから、来店くださる人もいっとき減りましたが、以前のお客さんがまた顔を見せてくれるようになりました」

と川野さん。変わらずそこにあり続けようとするひしゅうやさんの姿勢が、お客さんの流れを戻しつつあるのだと感じさせられます。

宮崎だけじゃない。それぞれの「拠りどころ」を思い出す時間を

「ただ宮崎の方だけ来てくれればいいとか、ただ宮崎を好きになってくれればいい、だけだとは思っていないんです」と川野さん。

「うちで宮崎のものを楽しんでもらうことで、ご自分の生まれ育ったところのことを思い出したり、話したりするきっかけになれば嬉しいな、と思っているんです。『うちでは魚はこういう食べ方するんだよ。今度一緒に行こうよ』と話したり、帰ったら実家に電話してみようかなと思ったり、そんな気持ちになる何かを感じていただけたら嬉しいですね」

どんなお店であり続けたいですか、と伺いました。

「一日の終わりにお客さんが来て、会社の愚痴を言ったりすることもやっぱりあると思うんですけど、『今日もいろいろあったけど、美味しいものを食べて、お酒も飲んで、明日また頑張ろう』って活力を出してもらえるような店。カップルで来ても、別れ話にならない。たとえちょっと喧嘩してたとしても、最後には笑顔で帰っていけるような店でいたいですね」(川野さん)

店舗情報

ひしゅうや
住所:東京都渋谷区円山町18-2 藤田ハイツ 1F
予約・問い合わせ:03-3463-0075
営業時間:
月・火・水・木・金
 ランチ:11:30 - 13:30(L.O. 13:00)
 夜:17:30 - 23:30(L.O. 22:00)

 夜:17:30 - 23:30(L.O. 22:00)
日・祝日
 定休日


ライタープロフィール

八田吏(はった・つかさ)
シブヤ散歩新聞副編集長。ライター/ディレクター。産前産後の家庭と産前産後の家庭とサポートのプロをつなぐマッチングサイトMotherRingディレクター。自宅から一番近い繁華街が渋谷なので、映画に行くのも友達とのお茶も、本や洋服などの買い物も、だいたい渋谷区内で完結しています。

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