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アート活動=その人のベストを引き出すということ
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はじめまして、シブヤフォントのアートディレクターのライラです。
シブヤフォントとはざっくり障害のある人が描いた絵や文字をデジタルデータとしてデザインして公開し企業とコラボレーションしたり渋谷区公認のお土産や自主製品などに活用し障害のある方の収入と地域での活動の機会を増やす取り組み。
シブヤフォントに関わり始めて6年目。渋谷の就労や生活介護施設で働く知的がい、中途障がいや精神の病を持つ利用者(メンバー)のみなさんと彼らを支える支援員が渋谷でデザインを学ぶ学生たちとともに、今まで約300以上のパターン柄と100ほどのフォントを生み出しています。
アートディレクターとしての仕事の最も重要な仕事は施設の支援員とアーティストの皆さんと新しいパターン柄やフォントのもととなる絵や文字をどう生み出すか一緒に考えること。
現在、渋谷区内の10施設がシブヤフォントの活動に関っており、アートの知識や経験も施設によってそれぞれ。工房として創作活動を元々している場所もあればレクリエーション程度で週数回アート活動をやっていたところ、そして全くやっていなかったところもある。
施設との共同作業でいつも最も大事にしていることが、施設自身が自分達の魅力に気づくこと。たとえ学生が来ていいものを作ったとしても、自分達のこれがいい!おもしろい!といえないのならコラボレーションとはいいにくいし施設の日々の活動の発展も起こりにくい。
なので毎年度学生たちが関わる前に私は1施設ずつ回り、前年の活動の振り返りや今年度やってみたいことなどじっくり話し合い今年はどんなことをやってみたいかを一緒に考えます
そのなかで最近、面白い傾向が見られます。
それは必ずしも絵が柄やフォントのさいようされやすい、「うまい」メンバーさんが選ばれるのではなく、この人にもっと柄やフォントに採用されて自信をつけてほしいというとても福祉的な観点でメンバーさんに毎年シブヤフォントの活動に参加してほしいという支援員の思いがあります。
そして、ひとりひとりが創作活動に参加できるように支援員の創意工夫も多々見られます。
今回訪れたくるるえびすさん。代官山にある創設2年目の新しい生活介護の通所施設でシブヤフォントへの参加も2年目。メンバーさんと支援員の関係性も新しく、その人の好き嫌いの傾向などをアート活動などを通しながら探っています。
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少し手が震えるから紙を抑えそれを生かして文字を書いて自信をつけてみる、とか、絵の具をるかって色を作る練習をする、とか集中力を高めるためにシールを貼る作業してみるなど常に創作するという観点からその人のできることを福祉の観点とミックスさせながら作り出していく。
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色塗りが好きなメンバーさん。蝶々の絵の見本を段ボールの裏にはり見た色を反対面にぬる。支援員は常にその人がどう楽しみベストを出せるか考え工夫している
現在「障がいのあるひと」のアートは注目を浴びていますが、その裏でその人がベスト出せる環境やサポート作りがあるのも忘れてはいけないと思う。
つねにメンバーさんの目と手先を見ながら寄り添う職員のフット、いやハンドワークでメンバーのできることや感じることが変わる。この人はこのサイズでしか描かない、とかルーティーンがあるとか一人一人にテイラーメイドの支援をする。まさにマジシャンです。
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手のコントロールがまだあまりないため、まずは指で張り紙をしてみる練習。その人のできることを一歩先に進める支援員ならではの工夫
事業所で賃金をあげることは大事な側面があります。でもシブヤフォントの現場でそれより大事なのは何を誰とやって賃金が上がるか?かと思います。そのためにもメンバー一人一人の身体的そして精神的な側面でできることを増やす福祉的サポートは欠かせないし、いわゆる「外の世界」とつなげる地域連携は欠かせない要素だとおいます。
また、学生も我々スタッフも障がいという側面をとっぱらい何かを共につくるというフェアな立場で関わることではじめでインクルーシブなデザインができるのではないかと一人のデザイナー、そして身体障害者としても感じます。
今年はどんなシブヤフォントマジックがうまれるか、楽しみしかありません。
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一人一人メンバーさんをまわり特徴や今はまっていることなど支援員に聞きながら毎回ノートに書き留めます。実はこういうものも柄やフォントのデザインのヒントになったりします
シブヤフォントとは?
渋谷でくらし・はたらく障がいのある人の描いた文字や絵を、渋谷でまなぶ学生がフォントやパターンとしてデザインしたパブリックデータです。
さまざまなモノやコトに使われることで、より多くの人に渋谷を好きになってほしい、シティプライドを感じてほしい、そして障がいのある人の活動を知ってほしい。こうした願いをシブヤフォントは託されています。
※シブヤフォントは、平成28年度渋谷みやげ開発プロジェクトとして、渋谷区内の障害者支援施設と桑沢デザイン研究所の学生の協力により生まれました。
くるるえびす:渋谷区にある生活介護事業の施設 利用者への生活訓練のほかアート、ダンス、園芸などのさまざまなプログラムを提供し、一人一人がやりたいことを主体的に選ぶことができる「自由で心地よい」場を目指している。 公式インスタグラム:kururuebisu
※くるる(クルールcouleur)…フランス語で「色彩」「彩り」の意味。その人らしい「色」を出していく空間をイメージ。「色々」な人が来る、集まることで混ざり合い、「新たな色」となって彩り豊かに広がっていくこと祈り、名付けました。 (渋谷区公式ホームページより引用)