No.18 「ラグナクリムゾン」第50話記念備忘録
0. Abstract
一ヶ月遅れてしまった第50話までを踏まえた「ラグナクリムゾン」の備忘録(というよりここまでくると考察に近い?)を書く. 当然ネタバレ全開なのでご注意.
1. Introduction
「ラグナクリムゾン」が第50話を迎えた. 連載開始から既に4年以上経過しているということで, 面白いことは面白いのだが, 3巻までのかなりテンポいい展開に比して, 4巻以降の銀装兵団登場以後はスローペースで色々とヤキモキすることも多かった. そんな中で今回の第50話はクリムゾンやアルテマティアに焦点が当たっており, 圧巻だったラグナVSウォルテカムイ戦よりもある意味で面白かった.
小林大樹はその圧倒的な画力ゆえ, 戦闘描写が称えられることが多いようだが, 私は寧ろ(私個人の好みの問題もあるが)世界観の描写や展開の方が面白いと感じることが多い. その観点からいくと第50話は色々と重要な回で, これまでの諸々の描写や設定と併せて考えることで, 色々と思いつくことがあった. 今回はその辺を備忘録としてまとめる(というより思いつくままにつらつら書き連ねる).
2. クリムゾンループ仮説とそこからの考察
クリムゾンが「やり直し」をしているであろうことはかなり初期から示唆されていた. はやい段階だとクリムゾンの
第3話「今までこんなことは起こらなかった」
第13話「やはり違うな 今回は当然か」
というセリフや, そもそもアルテマティアの「世界よ巻き戻りなさい」, それに(これは大分最近だが)第45話のネビュリムの「(先代の翼の王は)時間と空間を両方操ったっていう」等を併せて考えれば, これは誰しもが思いつくことであろう. そしてクリムゾンの第45話の
「餓鬼がっ 精神論で事が成るならば 私は何度もやり直してはいない!」
と今回の第50話のクリムゾンの「前回の私」発言から, クリムゾンがループ, あるいはタイムリープしていることはほぼ確定したとは思うが, 一応ここではあくまで「(作業)仮説」としておく.
問題はこの仮説を踏まえた上で何が言えるかである. これは大きくわけて
Why(何故? その目的は?)
How(どうやって? 手段は? 条件は?)
がある.
このうち前者は恐らくクリムゾンの目的と動機(何故竜を滅ぼすのか)そのもの(それは恐らく物語の根幹に直結するテーマ)であり, 現段階で語れる材料が殆どない. が, 妄想の範疇でいいならばいくつか思い当たることもあるので, それを最後に述べる.
後者の方も詳細は不明だが, 今までの描写から少し推察ができる. まず第一にそれは
アルテマティアの時間遡行に近いものであろう
ということ, そしてそれゆえに
その行使に膨大な魔力あるいは非常に強い何らかの「代償」, 「制約」を要するであろう
ことである.
何でもないようだが, ここからたとえば
クリムゾンは時間遡行用に, 魔力, 特に竜王としての力の行使を普段は極力行わず, 何年も温存し続けているであろう
ということが推察できる. これはアルテマティアを本当に殺す算段と覚悟が決まるまでは, 「心臓」を隠し, 基本的には戦闘を避けてきた一連の展開や描写ともmatchする.
特に「代償」については既に第1話の段階で未来の(前回の)クリムゾンが
「言っただろう代償がいると 受け取った過去のお前も長生きはできんぞ」
と語っており, 実は結構明言されているとも言える. これより死神(未来)ラグナの力を継承したラグナにはタイムリミットがあることがわかるわけだが, もう一つ明言はされていないが, 明らかになっている制約がある. それは
時間遡行できる対象は一人のみである
ということである.
実際, 今回のクリムゾンは前回のクリムゾンの記憶を継承できていない. もしラグナとクリムゾンの二人を同時に時間遡行できるならば, ラグナを過去に送るのと同時に自分も過去へ飛んだはずである. それをしていないということは, 「代償」を払ってなお送れるのは一人だけという「制約」があるということに他ならない.
逆に言えば, 前回のクリムゾンはその貴重なやり直しの権利を放棄してまでラグナを過去に送ったということである. 第50話の脳内会議の
「あの凡夫にそれだけの価値があるのですか」
との自問に対し
「少なくとも前回の私はそう判断した 毒の抗体を仕込んで送り込んでくる程度にはな」
と自答している. 原文では「毒の抗体を仕込んで」の部分が強調されているが, こう考えればそれよりむしろ「送り込んでくる」という方にこそクリムゾンの真意があったように思える.
3. 一つ前の世界の謎
ループ仮説に基づくと必然的に気になるのは「前の世界」である. 実際にクリムゾン自身も「何度もやり直して」いることは明言しているし, 上位竜の諸々の情報も暁美ほむら的統計法で得たものであろうから, 一度や二度のやり直しではなさそうである.
しかしそうであるがゆえに「前回」の異色さがより際立つ. 何せ, 先述の仮説に基づいた「代償」, 「制約」に関する推察が正しいとすれば, 「自分以外の全てを疑っている」あのクリムゾンが自身のやり直しの権利を放棄してまで, ラグナを過去に送り込んだ世界だったのである. クリムゾン自身も言っていたように「今までこんなことは起こらなかった」に違いない. では「前回」と「それ以前」とでは何が違うのか.
それは言わずもがな
「ラグナに出会えたか否か」
という一点に尽きるであろう(そして恐らくそれこそがこの物語のタイトルに「ラグナクリムゾン」を冠している理由の一つでもあると思うが, それについて論じるには現段階では時期尚早であると思うので今は措く).
では, 何故「前回」ではクリムゾンはラグナ(正確には30年以上かけて銀気闘法を開発し, 極限まで極めた死神ラグナ)に出会うことができたのか? それはラグナがクリムゾンに出会うまで死なずに生き残った世界だったからではないか? つまりそれ以前の, クリムゾンが何度もやり直した世界においては, ラグナは死神に至る前のどこかの段階で死亡していた可能性が高い.
これは私の推察というだけではなく, 作中にそれに関連すると思しき印象的な描写がある. それは第43話におけるクリムゾンの
「お前が死ななかった理由を教えてやる ただの偶然だ
たまたまだ お前はたまたま何度も一人で生き残り続けた
確率としてはかなり低いが在るところには在る
お前は奇跡のように積み上がった偶然の上にたまたま立っている」
というセリフである. 一見するとクリムゾンがよくある一般論(運命論?)を述べたに過ぎないようにも思えるが, 「前回」のことと, そもそもこの第43話のタイトルが「死なない理由」であったこと(!!)と併せると, この発言は非常に意味深に思えてくる. つまりこれは一般論ではなく, 本当に繰り返してきた世界における事実を言い当てているのではないか(クリムゾンもあるいはその辺の事実に気付いている?)? それはすなわちラグナとクリムゾンの邂逅こそが「奇跡のように積み上がった偶然」であったことに他ならない.
恐らく「前回のクリムゾン」もそこまでの考えに当然至ったはずである. 「死神との邂逅は奇跡である」と. すると次に浮かぶ疑問は
「何故, そのような奇跡の世界を放棄してまで, やり直す決断をしたのか?」
である. 現に死神ラグナは, クリムゾンとの邂逅前なのか, 後なのかは不明(第3話でクリムゾンに「未来の俺たちはやった 20年以上後のことだ」と言っているので恐らく邂逅後だと思うが, そうすると完成に30年以上を要した銀気闘法の完成前にクリムゾンに出会い, 翼の血族も狩ったことになる)だが, 少なくとも翼の血族は滅ぼしていて, 「『竜王』とさえ渡り合える!」と言っている. それほどのコマを擁した世界で, しかし何故クリムゾンは投了を選んだのか.
少なくとも,
翼, 鱗, 爪牙(ウォルテカムイに既に滅ぼされている?), 咆哮, 眼, 骨
と六あるとされる血族に関しては, 翼の血族を狩った要領でやれば狩っていけたはずである. 躓く可能性があるとすればやはり『神』であろう.
ただそうであってもわからないのは, 戦力においてはこれ以上望めない程の条件を揃えても未来において狩れなかった『神』を, それから30年以上前に戻ったからといって状況が改善されているとは思えないことである. クリムゾンが無意味な行動をするわけはないから, 何らかの勝算はあるのだろうが, それが何なのかわからないのである.
それに関連してもう一つ気になるのは
何故ラグナを太陽暦498年2月27日のグリュムウェルテ戦の瞬間に送り込んだのか
である. 「やり直し」の「制約」として「restart地点の細かい時間は設定できない」とか「送った先が死にかけあるいは死んだ状態でないとリンクできない」とか, 色々あるのかもしれないが, それにしても解せない. まぁ, 第1話の漫画的演出というメタ視点もあるから論じるのは野暮かもしれないが, クリムゾン視点ではこれは幾分奇妙に思える(つまり「もっとはやい地点ではいけなかったのか」ということ). ただ現時点ではこれを論じられる材料が乏しいので, ここでは疑問を付記するに留める.
4. 日付の謎
日付関連の話題が出たのでついでに日付の謎に関しても触れておく. 「ラグナクリムゾン」という作品は非常に正確に日付が表示される作品である. 太陽暦という年号だけでなく, 日付がなんらかの形で書かれた場面を抜粋すると以下のようになっている(以下の年号はいずれも太陽暦498年. アルテマティアがカルラ19835号だった太陽暦446年の52年後である).
2月21日 ラグナ, 死神ラグナの記憶の夢をみる
2月26日 竜の動きに異変(ドナピエルー侵攻?)
2月27日 グリュムウェルテ戦(竜の侵攻は基本夜で未明なのか, 夜なのかは不明だが, 26日にラグナが寝ている描写があるのでここでは未明ではなく, 夜と仮定), 死神ラグナ誕生(転生?)
ラグナ, 2月27日の夜から丸一日眠る
2月28日 アルテマティア, 王都セルスビエラ侵攻 (3月4日から5日前)
銀装兵団, ドルニーア戦 (3月8日から9日前)
3月1日 朝にメルグブデ戦, レオとの別離, クリムゾンとの邂逅, 夜にバロム・シュエラ戦
3月2日 ラグナダウン, トロワ戦仕込み
3月3日 銀装兵団, レーゼ北東部の軍事演習場に1500人の民衆と共に逃げ込む (3月8日から5日前)
3月4日 トロワ戦
3月8日 アルテマティア戦, ラグナとクリムゾン, 転移魔法でレーゼ北東部の軍事演習場に転移, 銀装兵団に出会う
3月9日 オルト・ゾラ, タラテクトラ戦仕込み, 王都セルスビエラ壊滅
3月10日 オルト-タラ戦からのウォルテカムイ襲雷(9秒の死闘), ラグナ, 銀装兵団と民衆と共に転移(旧時代のビル群?). クリムゾンは一足先に転移. スターリアはウォルテカムイに攫われる.
3月12日 ラグナ目覚め, 時の聖女カルラに出会い, クリムゾンと再会. スターリアも目覚め, 銀剣を打ち始める.
3月14日 翼の血族との最終決戦開始.
「ワールドトリガー」同様こういう風にキッチリとスケジュールが決まっている設定は個人的には好きだが, オリジナルエピソードを入れられなくなってしまうので, アニメ化の際には大きなdisadvantageになってしまうだろう.
日付に関する全般的な注意としては, 後でも述べることだが, 「ラグナクリムゾン」の舞台は(恐らく遠い未来の)地球なので,
何らかの天変地異が起こっていない限り, 基本的に1年=365日, 1日=24時間, 1時間=60分, 1分=60秒であり, 暦も恐らく旧時代の遺産の慣習として我々の知るものに準拠している点(実際, アイクは我々の知っている腕時計をしている)
と
竜の活動時間は基本夜なので, 戦闘は基本的にその日の夜に行われている点
は留意すると便利である.
あとレーゼ北東部の軍事演習場は3月10日に19:35に日の入りをしている(第23話)ので, 地軸が傾いている等の天変地異やtime lineの設定の変更が無ければ, 第16話の地球儀の間でのポインターの表示から王都セルスビエラがスペイン(マドリードあたり?)を指していることと併せると, 大体フランスの北かイギリス(実際地球儀にはイギリスあたりにもポイントがあるようにみえる)ぐらいの感覚だと思う.
日付の概要的なまとめと考察は以上だが, 「謎」と言っているものは別にある. それは
「そもそもこの日付は何なのか? どういう意味があるのか?」
ということである. これに関しては太陽暦の方も問題になるのだが, それは世界観の考察で述べるとしてここでは日付の方を取り上げる.
私の推測はこうだ. そも「日付」とは「時間の記録」である. では, 何のために「時間の記録」が「ラグナクリムゾン」には必要なのか. それは「時間の制約(time limit)」があるからではないか? そして現段階では作中における「時間の制約」は少なくとも2つあると考えられる.
一つは
ラグナの寿命
である. 死神ラグナの力を未来から継承できても「長生きはできない」とクリムゾンは言っている. では, 残りの寿命はどれだけなのか. 数年なのか? 数ヶ月なのか? 数週間なのか? 現段階では何もわかっていない. 驚くべきことに作中に置いて, 死神ラグナの誕生からわずか2週間しか経っていないのだ. この超過密スケジュールならたとえ寿命が1ヶ月ちょっとと宣言されたとしてもおかしくない(そういう意味でもクリムゾンの年単位の慎重策は悪手になってしまう可能性がある).
もう一つは
『神』を狩るためのtime limit もしくは何かのイベントのタイミング
である. 前述したように, クリムゾンは死神ラグナとの邂逅を果たした奇跡の世界を捨ててまで「やり直し」を選択した. それはつまり
前回は手詰まりになってしまったが, 30年以上前に遡れれば勝ちの目がある
ということである. 言い換えればそれはある程度時間が経ってしまえば, その勝ちの目が再び無くなってしまうか, 何らかのタイミングを逸してしまうということを意味する. それが10年後なのか, 数年後なのか, 数ヶ月後なのか, これまた現段階では何もわかっていない. しかし, ラグナの寿命との兼ね合いから行けば, 少なくともそれは
ラグナを送り込んだ時点からラグナの寿命が尽きるまでの間
ということになる.
以上のように, 作中にはラグナの寿命と『神』狩りの期限という少なくとも2つのtime limitが存在しており, そう考えると日付はそのカウントダウンであり, 非常に重要な意味を持つことになる. そして個人的な考えだが, これを1日単位で正確に描写しているところから推察するに,
実は残されている時間は存外少ないのではないか
と思われるのである.
「ワールドトリガー」の空閑遊真の寿命に通じるような話でもあるが, 少なくとも年単位ではないと思う. 長くて数ヶ月単位, 短ければ数週間単位でもおかしくはないのではないか. 今のところ, 作中においてこの話題は第1話でクリムゾンが匂わせて以上には出てきていないが, 今後物語がある程度進んだ段階ではかなり重要な点になってくると思われる.
5. 世界と『神』についてのいくつかの考察
最後に「ラグナクリムゾン」の世界と『神』についての気になる点を幾つか述べる. まず世界については地球が舞台である. これは地球儀の間や諸々の回想で世界地図(ただしアメリカは無くなっている?)が出てくることからの推察で, ここは「スカイブルー」(あるいは「殺意の戦鬼」)との繋がり(遠い未来)があるとかないとかも言われているようだが, 判断材料が乏しいのでそれには言及しない. ともかく舞台は我々の知っている地球で, 何らかの天変地異あるいは「大厄災」(以下ここではこのように呼称することにする)により文明が一度リセットされてしまった状況の世界を仮定する.
この状況を踏まえた上で, この世界を読み解くkeyとなるであろう用語を思いつくまま列挙してみると
『神』, 『竜』, 『魔力』, 『気』, 『太陽神教』, 『旧文明』
といったところだろうか(第4話でクリムゾンが語っている『世界魔法』や『大聖伐』も気になるところであるが, 情報が余りにも不足しているし, 何かしらの未来のイベントのような気もするので現段階での考察の優先度は低くなる).
このうち『神』についての手掛かりは, 第50話でクリムゾンが語った
「あれに実体は無い
見る者にとって最も無視できない姿で現れるんだよ
ケーキ屋が潰れたから国を滅ぼせと言ったんだったかお前の神は?」
と第45話でウォルテカムイが
「テメエを殺してオレは『神』すら超える力を手に入れる!」
の神が『』で記述されていること(これは恐らくアルテマティアの神とは別物の, 『神』の本当の正体をウォルテカムイは掴んでいるということを示唆している)くらいが手掛かりだろうか.
ただし, 手掛かりはなくとも謎はあって, それは
『神』の目的は一体何なのか?
ということである. 人間を滅ぼすことなのか? それは明らかに違う. もし本当に人間を滅ぼすことが目的であるのなら, 恐らくとうの昔に人間は滅ぼされている(「竜」と人間との戦力差はそれほどまでに圧倒的なのだ). では,何故何十年, あるいは何百年もダラダラと戦争し続けているのか. たとえば自身の使徒である(上位)竜たちを養うために生かさず殺さずで人間を管理しているのではないか等, 色々考えられなくもないが, それでもやはり目的は不明で, 推察することも難しい.
「竜」, 「魔力」, 「気」に関してはやはり第33話のラグナの回想
「昔 誰かが言っていた 誰だったか クリムゾン? 違ったような
元々銀は他とは変わらないただの金属だった
竜には『気』がない
この世のあらゆるものに流れている気が竜には流れていない
代わりに『魔力』が流れている
魔力はこの世のものじゃない 外から来た 世界を変化させる外からの力
だから『銀気』が生まれた
魔力による変化に抵抗するために世界が用意した魔力を停止させる力」
は重要であろう. この
「昔 誰かが言っていた」の「誰か」がクリムゾンでなかった場合, 一体誰なのか(意外と太陽神あたりとか?)
という非常に興味深い問題もあるが, ここで注視すべきは『魔力』は外から来たという記述である.
実は『銀気』に関しても第41話のスターリアのモノローグで
「遥か昔 宇宙より飛来した銀の星
全ての銀の元となった最初の一」
と語られているように, 銀もしくは『銀気』も『魔力』と同様に, 少なくとも地球外, もしかすると世界の外から来た可能性もあるが, それでも『銀気』よりも『魔力』が先にやってきたのは間違いないようである.
ここで先程の『神』, 『太陽神教』, 『旧文明』と併せて考えると
・『魔力』が外からやってきたのは旧文明が滅びる「大厄災」前なのか, 後なのか?
・そもそも何故『魔力』が外からやってきたのか(『神』が呼び込んだのか)?
・あるいは『神』は「大厄災」以前にも存在していたのか否か?
・太陽神教の歴史と「大厄災」との関係は? 旧文明との関係はどこまである(カルラの件をみるにクローン技術等は持っている?)?
等々疑問は尽きない.
このうちまともに論じることができる題材は殆ど無いが, 1点だけ. 太陽神教の歴史に関しては, 太陽暦と関連あるとすれば創設から500年近く(498年)経っていることになり, 旧文明の遺跡(高層ビル群)の朽ち方とコンクリートの寿命等を考えると, 旧文明が滅んだのもおおよそ500年くらい前(少なくとも数千年orderの事象ではない)ということも読み取れる.
その場合気になるのは, 今いる人間である. 彼らは旧文明の知識や存在をどれくらい知っているのか? 文明様式が19世紀から20世紀前半的なものに退化しているので継承されていないっぽいが, 文明が一度リセットされて何も知らないにしては文明度が高すぎる気もする(少なくとも「なろう転生系知識マウント」が通じる余地は余り無いくらいには発展している気がする). ということは何らかの知識統制, 情報統制がされている可能性もあり, 太陽神教がその辺に絡んでいるということも十分ありうる.
そもそも彼らは本当に「人間」なのか? つまり旧文明に存在した普通の人間と異なり, 高度な科学技術, あるいはそれと魔法が融合した技術により設計, 創造された「新人類」なのではないか. その目的は『神』の支配のためであり, たとえば
彼らは時に『神』の体の代用品(翼, 鱗, 爪牙, 咆哮, 眼, 骨), 使徒あるいは兵器たる竜たちの贄となり, 素質のあるものは使徒たる竜に昇格できる,
といった具合である. この場合, 当然『神』と『太陽神教(太陽神)』も何らかの関係(グル?)があるということになるが, カルラとアルテマティアの経緯を見ている感じでは今のところこのセンは無いさそうである.
それから考えると少しデリケートな話題かもしれないが, クリムゾン様の年齢問題も気になる. 第17話のクリムゾンの回想では旧文明時代の戦争の描写があるので, 上記の仮説でいけばクリムゾンも500年近く生きていることになる.
ついでに述べておくと, この第17話の回想シーンでクリムゾンの傍らにいる女性(?)が
「夜が来るね そうしたら私達の出番」
と言っているが, この時に既に「竜」か, それに近い状態になっていたと推察される. なので「竜」の主が『神』であるとすると, その正体は旧文明時代のどこかの勢力由来なのではないかと考察できることも注意しておく(クリムゾンの滅竜の目的もこの時代からの因縁に関係がある?).
ちなみに案外重要な小ネタだと思うのが, クリムゾンに関してはコミック1巻の表紙裏の記述
「ラグナよりはるか数年前から脳内にいた竜王様. 初期は女性だった. あと骨の王だった.」
も昔から気になっている. これは構想段階では女性だったが
「連載段階になって性別自由に変えられる設定に変わった」
ということなのか, それとも
「実際に今作に出ているクリムゾンが昔, あるいは人間(?竜になる前)だった頃は女ではなく, 男だったという設定である」
ということなのか. 現に第17話の回想シーンのクリムゾンと思しき人物は男にも見えなくはない(?). 無論, 現段階ではクリムゾンの設定上の性差が作中上でそんなに問題になるとは思えないが, 気になる記述ではある.
6. Concluding remarks
以上, 「ラグナクリムゾン」の第50話までの展開に基づいて個人的に気になった留意点をできるだけ書き出してみたが, 思った以上の分量になった. 最近はテンポがいささか悪くヤキモキする場面も多いが, 今回このnoteを執筆するにあたり, 単行本で何度も読み返してみたがやはり文句なく面白いことは変わらない.
上述の謎がどうなるのかにも注意しつつ, 今後の展開を楽しみたい.