No.224 「ラグナクリムゾン」第78話(後編)備忘録
0. はじめに
なんか油断してたら, ガンガン JOKER の最新号が出てた. っていうかその前に前回の備忘録を書いていないことを失念していた(Twitter にメモ書きしただけだった). 例の4週間の風邪(コロナ?)もあって, 色々調子が悪かったのもあるが(正味, この4週間がほぼ何もせずに一瞬で過ぎてしまった気がする), 不覚(備忘録を書き始めて3年近いが初めて). コレ書かないと最新話読めないじゃんか…
というわけでサッと書き上げて, 最新話を読む.
つもりが書いてみたら, 4000字も書いちまったじゃねぇか! クソが! というか, (体調不良だけでなく)特に Section 4 についてあれこれ考えてたから結局備忘録を書くのが延びてたんだよね. 仕方ないね.
1. 「アメンの位置問題」は誤植か否か
前々回の備忘録
で「アメンの位置問題」について論じ, 前回
その補足を述べた.
で, 後半まで読んでの感想だが, やはり何とも言えない. 一応,
「太陽の聖人ビームを喰らって全滅するのを避けるために, 竜群を全方位に散らしたかった」
と思えば, 誤植ではなく本当に合っている気もする.
ただ, それでも500km以上はやはり離れすぎだと思う. つまり
「ゲヘナから出て, アメンにある程度距離が近づいてから(たとえば100km圏内等)竜群を散らす行軍ではイケなかったのか」
という疑問が残る. こちらの方が圧倒的に輸送コストも低いし, 何より先に切り札を切らせて, ティーナちゃんで封殺する作戦だったならば, 寧ろ密集した陣形を取って, 太陽の聖人からの攻撃を誘う方が理に適っている.
というワケで私はまだ(単行本が出るまで)誤植説を撤回しない.
2. テンポ良すぎるだろッ!
はぇぇーーーー!!! 小林大樹ィィィ!
『何やってんだお前ェっ!!』
お前まさか
『いきなりキング取れねぇだろうよい』
って名言を知らねぇのか!!
ていうかマジな話, 逆に尾田君はさっさとキングを取りなさい(何が「あと5年で完結」だよ).
まぁ, 想像はついてましたよ. 竜群の数が多いほど, 対切り札用のデコイ度(物語のメタ的な捨て駒度)が増していくことに. でも言実竜の
「精神口撃(煽り海賊ラップ)」
から
「乗るな!」
に行って
「疑似敗北者ネタ」
コンボにつなげ, その次のページで1/4が消えるって気持ちよすぎだろ!
でも実際, 今回のこのシーンで
太陽の聖人 ~ エース
ティーナちゃん ~ ティーチ(重力と闇は似たようなモンだよ. 実際, 双方ブラックホールみたいなモノと思えば満更でもない)
は色々な意味(能力とか場面とか勝敗とか)でマッチしていて少し驚いたのはホント. 地味にネタ仕込んでるのは「ある」と思います(受け継がれる意志(オチ)).
マジメに言うとこのシーン, ニム・ハムニムの解説通り, 魔力を9割カットできていなかったら, その時点でほぼ全滅とはギルゼア並の殲滅力. つまり竜王自身が出張ることが一番の切り札であり, 同時に弱点でもある状況か.
ということは戦争のカギはこの
「9割カットバリアを如何に朝まで保たせるか」
になるわけか. ここで裏切りトラップを発動されると結構キツイ. クリムゾン様の読みはわからんが, 裏切りトラップ発動前にラグナが速攻でバグラムを狩らないと普通に負けそう.
しかし切り札を別の切り札のデコイに使う戦法は如何にもクリムゾン様らしい. これでともかくVSアルテマティア戦の時のように最速王手の状況に持ち込んだ. ただ100話までに太陽神教編をたたむことを予想すると, ペース的にも順当と言える.
3. 太陽神教史より
今回の一番の驚きは「懐かしの風ザコ狩りの再現」ではなく,
「太陽神教の歴史が70年くらいかもしれないこと」
である.
これまで私は太陽暦が498年あることから, 太陽神教の歴史も同程度の長さがあると考えてきたが, その前提が覆る可能性が出てきた. これは驚きである. とすると, 改めて
(1) 太陽暦とは何か?
が問題になる. 無論, これは旧文明の崩壊の時期とも関連して, 以前から問題だったわけだが, これまでとは違った意味合いが出てくることには注意すべきである.
たとえばこれにより, これまでは考えなかった
(2) 何故太陽神教は500年前の旧世界の文明を維持できているのか?(つまり旧文明崩壊と太陽神教成立との間に「空白の400年」が存在することになる)
等々の謎が新たに出てくるからである.
これが不思議なんだよなぁ. だって, 例えばニム・ハムニムが第74話で魂の研究史(ここは恐らく今後明かされる色々重要な情報を含んでいる)について語っていた時,
「魂に価値があるというのは魔法の無かった旧文明時代の空想という結論になり以降200年以上魂の研究は途絶えた.」
と言っているからである. つまりこの200年の間の少なくとも半分以上は太陽神教は存在していなかったかもしれないワケだ. その間, 一体どこで誰がそういった研究や技術の継承を行っていたのか. 太陽神教が不在だったとすると, こういうことを考えないといけなくなる.
あるいは
「この500年の間に何度か世界魔法の発動が試みられ, 何度か世界がリセットがされている」
つまり
「太陽神教に準じる組織も作られては崩壊し, 作られては崩壊しを何度も繰り返している(そしてその最新のサイクルが70年に前に始まった)」
ということの伏線なのだろうか.
また以前出た「家族」の解体の話に関しても, 100年がかりでやってたってことは, 当然そこでも空白の年数が生じ, 矛盾が出る(そんな組織力を必要とするムーブメントが太陽神教無しに実行できたとはとても思えない). 恐らく同種の矛盾が諸々の設定で同時多発的に発生すると思うのだが, これはどう解消するのか?
逆に解消される問題もいくつかある. たとえば, 上述のニム・ハムニムは併せてここで
「転機が訪れたのは初代時の聖女が死んだ時」
と言っている. 多分, 太陽の聖人は初代時の聖女を知っていそうな感じ(アルテマティアがカルラだった頃に「まるで生きていた頃のオリジナルを思わせる」と言っている)だから, そうするとそれは今から70年前, 単純計算すれば太陽暦428年以降のイベントになる.
以前,
において, 「カルラの寿命からのいくつかの計算と矛盾」ということを論じた. それはカルラ19835号(アルテマティア)と太陽神教の歴史が約500年, 更にカルラの個体の寿命を加味すると, 大体年間製造されるクローンの数は45人程度(せいぜい週に1体程度). で, これに寿命の年数をかけた数が大体現在稼働中のカルラの数ということになるが, この数が178人で, 晒し首にされているカルラの数(200~300)と合わないという矛盾を指摘した. 今回, 太陽神教の歴史が70年しかないとすると, この数がざっと7倍くらいになるので, ここの描写の矛盾は解消されることになる.
また同じ第74話でクリムゾン様が大体半世紀前から活動を再開(?)したのが, 半世紀前というのも, この太陽神教史の70年と関係ありそうな気がする. そういえば, この時シグマリオが
「500年前も
400年前も
300年前も
200年前も
100年前も
(38年前も)」
と何故か100年刻みでカウントしていたが, もしかしたら世界魔法の発動も100年ごとに行っているのかもしれない.
以前から言っているように,
「世界魔法は世界を旧文明崩壊前に(時間遡行で)戻すのではなく, ある程度旧文明を(その歴史も含め)再現したモデルの上に上書きする魔法」
だと思うので, 太陽神教に準ずる組織も旧文明の崩壊前に存在し, やはり滅んだのかもしれない. そうすると, ルオシー(運命を仕組まれた子供)の件と併せて, 世界魔法に必要な一手順として, 太陽神教成立そのものにシグマリオが本質的に関わっている可能性も考慮すべきだろう.
4. 太陽の聖人とバグラム, ラグナとクリムゾン, そして「ラグナクリムゾン」
デュラ・ポロ・ネルロってなんかイタリア人っぽい名前だな. で, カルラ19835号がアルテマティアになった時もそうだったけど, 太陽の聖人なのに(?), 沸点(煽り耐性)が低いとはこれ如何に?
ただバグラムが語る所が真実だとすると
「(神がいるなら)今すぐ降りてきて竜を滅ぼしてみせろ」
という, ラグナがカルラ達に向かって言ったセリフと全く同じことをかつては言っていたことになる.
これから察するに, ある意味, 太陽の聖人とは
「何かを違えたラグナ」
なのだろう. 喩えるなら, エミヤと士郎の関係に近いのかもしれない.
「ラグナが「気持ち悪い」と感じるような感性を無くしていって, あるいは擦り切れてしまって, ただただ「滅竜」だけが至上命題として残った成れの果てのラグナ」
まぁ, そんなところだろうか.
そうすると, バグラムは太陽の聖人にとってのクリムゾンだったってコト? これは一見, 突拍子も無いような話だが, この物語が「ラグナクリムゾン」であるということを思い出せば, まるきり荒唐無稽というワケでもないかもしれない. ある意味, クリムゾンがラグナが背負えないものを代わりに背負っているワケで, バグラムと決別してしまい, 全てを背負い込まざるを得なくなってしまった太陽の聖人は
「ラグナとはそこが決定的に違う」
ということを示唆しているように思える.
つまり太陽神教編とは, 「ラグナクリムゾン」における「決別したラグナとクリムゾンの物語」を描写することが, 隠された意図(むしろこれこそが本命?)としてあるのではないか. だからこそバグラムは「中間管理職と呼ばないでください」と小林大樹にも言及されているのである.
で, 彼らが決別することになった要因が, 私の予想では初代咆哮の王レクス(多分, 王妃?)であり, またそれは太陽神教編後にラグナとクリムゾンに起こりうる未来なのではないか.
もっとはっきり言うならば, 今後, クリムゾンがラグナを取るか, レクスを取るかの選択をする場面が出てきてその時に初めて,「決別したラグナとクリムゾンの物語」として, 太陽神教編における太陽の聖人とバグラムの物語が意味を持つのではないか.
なんて妄想があの3ページから膨らむワケだが, さて, この読みはどこまで当たっているかな, 小林大樹.