No.41 「ラグナクリムゾン」第53話備忘録
0. Abstract
「ラグナクリムゾン」第53話について, 特に爪牙の王ギルゼアの雑感と, それを踏まえた上での, ウォルテカムイ戦のフィニッシュブローだけではなく, 対ギルゼア戦までを見据えた上でのラグナの対・竜王技の考察を述べる.
1. Introduction
ガンガンJOKER2022年4月号の発売から既に2週間以上が経過した. 発売直後はやはりアニメ化決定の報のインパクトが大きかったこともあり, アニメ化にまつわる事情の方を中心にしてまとめた
No.39 「ラグナクリムゾン」アニメ化に寄せて
https://note.com/shibushibuyanyan/n/n3618334b6370
を先に書いたのだが, 本編の方も, 例によって非常に重要な回だったように思う.
とりわけ, ウォルテカムイの回想という形であったとはいえ, 正に満を持して登場した『絶殺系女子』こと爪牙の王, 殺尽竜ギルゼアは, 対翼の血族戦後の展開(前回も述べたように恐らくはアニメの終着点かつ次シーズンへの引き)を小林大樹が意識していることは明らかである. それゆえ, 明らかに情報不足の状況ではあるが, むしろそうであるがゆえに, 情報が少ない現段階で読み取れることをはっきりさせておくことは, 「ラグナクリムゾン」の今後の考察をする上でも重要であろう.
そこでこのnoteでは, ギルゼアについての雑感(印象, 能力, 攻略法, etc.)とそれを踏まえた上でのラグナの対・竜王技と銀気闘法の考察, 更に今後の物語の展開について思いついたことを適当に書きとめる.
2. 爪牙の王ギルゼア雑感
まず初見での印象. パッと浮かんだのは
「化物語」の忍野扇
だった. この時点でギルゼアのCVが「水橋かおり」になってしまうわけだが, 次いで
「Re:CREATORS」の築城院真鍳
もあるような気がして, 更には拘束具(手錠)と次元断裂っぽい能力から隠し味に
「幽遊白書」の躯
が入っている気がした(無論他にもあるが, キリがないので上から3つ該当する要素を上げるにとどめる).
まぁ, なんというか「属性」てんこ盛りって感じがして, お為ごかし程度で
盛りすぎたから「眼鏡属性」 はあえて抜いたのかな?
とさえ思ってしまった. ともかく
比較的素直だったアルテマティアに比して随分と濃い感じに仕上げてきたな
というのが率直な感想.
で, クリムゾン様による
「アルテマティアは竜王の中でも最弱」
発言と併せて, ギルゼアによるウォルテカムイ瞬殺で, 翼の血族が既に幕引きの段階に入ってきたことを印象付けてからの, 圧倒的強者感をガツンとぶつけてくるあたりは流石というべきか.
能力の詳細は現段階では不明だが, 白と黒(カラーになったら違う色になっているかもしれない)の二刀一対と思しき, 剣を使い, ウォルテカムイ曰く
「後から動いた遅い剣に斬られた」
と
「斬る過程をイジれるのか...!!」
とのこと.
ギルゼア自身の弁によれば
「吾輩は『絶殺系女子』だ」
次いで
「吾輩は<<絶対>>」
もしくは
「世界の可能性が閉じているのだよ」
とのこと.
現段階で以上から推察されるのは
「因果」を操作しているらしい
ことだが, 「殺尽竜」や「絶殺系」という呼称とウォルテカムイの傷が再生しなかったことから推察すると, Fateのディルムットのゲイ・ボウか, あるいは直死の魔眼のような何かしら「死」に関係する力も持っている可能性がある.
尤もそれも
ギルゼアが確定した因果を覆せない(直せない)
というような因果操作に関連する能力の副産物的なものの線もある(型月用語でいう測定の未来視?)が, ただディルムットstyle(ゲイ・ジャルグとゲイ・ボウ)というのは別の意味で関係があるかもしれない. というのも, ウォルテカムイの胸の傷は治っていないものの, 斬られた首はちゃんとその後に修復しているからである. つまり件の白と黒の二刀一対の剣はディルムットstyleで, 白と黒で能力が違うのかもしれない.
絵を視るにウォルテカムイの胸に傷をつけた「後から動いた遅い剣」は白い方で, ウォルテカムイの首を刎ねた「斬る過程をイジ」ったのは黒い方にみえる. とすると, 「絶殺」系の白い剣と, 「因果」系の黒い剣との2つがあって, 絶望的なことに「後から動いた遅い剣に斬られた」のは単純に爪牙の王の武の技量なのではないか?
つまりそれはラグナにも再現可能で, 迅さで上回るウォルテカムイを攻略する鍵の一つでもあると思うのだが, これは能力だけでなく単純に武の技量としてもギルゼアはウォルテカムイを上回っているという, より悪い状況も同時に想起させる. またこの白と黒の二刀一対の魔剣を最終局面では一つにして使用することも, もはや「お約束」であろう(個人的には「我間乱」の水川流進介の「双炎丸」を連想したが, もしそうならば攻略の鍵は「脇差」になるわけか...).
正にアルテマティア以上に
こんなんどうやって倒すねん...
という感じだが, アルテマティアで電波系女子に「ザ・ワールド」と「キラークイーン」を合わせてきた「前科」のある小林大樹である. 今度はウォルテカムイ以上の武人系女子に「直死の魔眼」と「測定の未来視」を合わせてくるという, 更にワケのわからん攻勢(構成)をしかけてきても不思議ではないだろう.
3. 対・竜王技とは何か? (銀気闘法の神髄?)
現段階では, 翼の血族は未来(前回)で滅ぼしたと明言されているが, ギルゼアが倒せたかはまだ判明していない. ただ倒せたなら未来のラグナはこれを倒す方法を知っているはずだし, 倒せなくても最低対抗策くらいは持っているだろう. それこそが正に対・竜王技なのではないか? このような前提に基づいて, つまりメタ的視点として,
ラグナ側の翼の血族戦からギルゼア戦への繋がりを考えた時に, 必要な過程として対・竜王技が出てきた
という仮定と喫緊のウォルテカムイ攻略を併せることで, 対・竜王技の正体を考えてみる.
その前にそもそもラグナの「技(銀気闘法)」でどんなものがあったのかを思い出してみると,
・銀気創剣
・銀気飛翔
・狩竜閃
それに「銀気全開」というのもあったが, ざっとこんなもんだったはずである. 特に狩竜閃に関してはもう少し説明があって
第27話 常識の範疇に落ちた強者
「
未来のオレはずっと考えていた
様々な魔法を使う竜共を相手に必勝の方法はあるのか?
辿り着いた最初の答えが
滅竜剣技 狩竜閃
瞬間的に銀気を大放出し
巨大な斬撃にして
叩き込む
だけ
」
とある.
他方, 銀気に関してはそれとは独立に説明がなされていて
第33話 同類の匂い
「
昔 誰かが言っていた 誰だったか クリムゾン? 違ったような
元々銀は他とは変わらないただの金属だった
竜には『気』がない
この世のあらゆるものに流れている気が竜には流れていない
代わりに『魔力』が流れている
魔力はこの世のものじゃない 外から来た 世界を変化させる外からの力
だから『銀気』が生まれた
魔力による変化に抵抗するために世界が用意した魔力を停止させる力
」
とある.
この銀気の説明を鑑みるに, 狩竜閃をはじめとするこれまでのラグナの攻撃手段も技も全て, 増幅させた銀気を単にぶつけていただけに過ぎず, 銀気が持つとされる魔法や魔力に対する停止, 抑止, 拒絶の力を活かしていたとは言い難い. 滅竜の極み「銀気闘法」がまさかそんなお粗末なはずはないわけで, タラテクトラ戦で狩竜閃の説明がなされていてから, 「辿り着いた最初の答え」(つまり「その先」がある)というところに引っかかったことと併せて, ずっと気になっていた.
それを踏まえて上で対・竜王技の正体を論じるならば, 増幅した銀気を単にぶつけるだけではなく, その特性を引き出す形で使う技と考えるのが妥当であろう. イメージとしては, 安直ではあるが, 「幻想殺し」である. というかそうしないと雷神闘法のウォルテカムイやギルゼアに勝てるvisionが湧かない.
ウォルテカムイの雷神闘法は, 恐らくラグナの「銀剣一体」(と私が勝手に呼んでいる戦闘形態. 意味は読んで字の如く)の雷爪(魔剣)版であって, 特に強度が段違いになっていて単に銀気をぶつけるだけの狩竜閃では倒せない. これを狩るとすれば, 銀気の力で雷神闘法そのものを無効化した上で狩竜閃を叩きこむしかない(少なくともそれ以外の手は私は思いつけない).
それにこの設定ならば, 某「禁書目録」のように, それこそギルゼアのようなデタラメな設定な敵が出てこようとも, 原理的には対抗できるようになる(尤も, ラグナがそれを乱発しないところをみると, 使用には何らかの制約を課すのだろうが). そういう意味でこれは正に銀気闘法の神髄であり, それを「9秒の死闘」のリベンジを兼ねてウォルテカムイでお披露目というのが, 翼の血族最終決戦におけるラグナの最後の役割でもあろう.
4. ギルゼアから予想する今後の展開
対ウォルテカムイ戦に関しては
「もう言葉はいらねぇなぁ」
と言ったウォルテカムイに対し
「グダグダと口で語るのがお前の``強さ''か?」(訳: 小次郎, 敗れたり)
と返した時点で, 物語的にはもう勝負はついている. あとは(前回のnoteでも書いたが)
偽りの救済(神)にすがり続けたアルテマティアが「真の救済とは何か」の答えを得る
ということが片付けば, 翼の血族編は一応ケリ(2クール計算でアニメのゴールはここか?)がつくだろう.
次は必然的にギルゼアが話に関わってくるわけだが, 正直これに関しては全く読めない. 実際, 彼女は
「こんな吾輩にも殺したいのに殺せない相手がいる」
と言っており, クリムゾン様やウォルテカムイと同様 「『神』殺し」を狙ってる可能性も高い. 無論「殺せない相手」というのが『神』以外を指している可能性もあるが, たとえば
『
「爪牙の王」は己の血族を持たない
代わりに気に入った相手に武を教える
血族・人間問わず
そして王が満足するレベルに達した者に王の持つ魔剣が譲られる
』
という「爪牙の血族」(血でなく武と剣で繋がる強者達)の奇妙な形態から考えても, (ウォルテカムイに全滅させられたとはいえ)「『神』殺し」の尖兵と捉える方が自然に思える.
そうするとそもそもラグナ達と敵対する意味もあまりない(ウォルテカムイも同様ではあるが, 彼の場合は主がアルテマティアという事情があり, 組むことは不可能だったであろう). 事実, ラグナは既にクリムゾンという(元)竜王と組んでいるのであり, ラグナの銀気闘法に興味を持ったギルゼアと共闘展開でもおかしくはないのではないか.
メタ的にみても, 翼の血族編終了後にアルテマティアとスターリアが脱落すればヒロイン枠(ラブコメ枠?)が空くわけで, そこにギルゼアが収まってもいいはずだ. また幸か不幸か「爪牙の血族」はギルゼア以外全滅している(ウォルテカムイに全滅させられている? あるいはまだ生き残りはいる?)ので, 翼の血族編程長くならずに済むし(登場前に全滅(?)させたのは翼の血族に10巻以上もかけてしまったことを小林大樹が反省したからだろうか?), ヒロイン枠(?)に収めれば最悪爪牙の血族編をskipすることも可能になる.
ただそうするとギルゼアが強すぎて, 話として面白くなくなってしまうだろう(「ゴミなろう」系ならそれがテンプレだろうが, これは「ラグナクリムゾン」なのだ). そこで, 「爪牙の血族」はギルゼアしかいないことを逆手にとって, たとえばギルゼアと共闘する形にして別の2つ(あるいは3つ)の血族と同時に戦う展開にすれば, これで一挙に3つ, 4つの血族を片すことができ, 物語のテンポも格段によくできる.
あるいは「共闘」までは行かないとしても, たとえばギルゼアの「師匠系女子」の属性を活かして, 長らくほったらかしにされているレオ(あるいは生きていたり, ギルゼアに助けられたりしたかもしれないシン・カトラスあたり)がギルゼアの弟子(「爪牙の血族」)になるなんて展開もアリではないか. そっちはそっちサイドで独立に血族を狩る展開にして, 「『神』狩り」のある段階でクリムゾンとギルゼア, ラグナとレオがそれぞれ邂逅するっていうのもアリか.
無論「『竜』絶殺系」のラグナとクリムゾンなのでギルゼアとの共闘, 同盟ルートなんて存在せず, 普通に真正面から戦う可能性も十分あるが, 正直, 連載10年程度を目安にして話を完結(「ゴールデンカムイ」は8年だしな)させようと思うと, これぐらい思い切ってテンポ良くする必要があるだろう(というより, それぐらいを目安にした完結を目指さないとまた未完, 打ち切りエンドになりそうなのが怖い). 翼の血族のように一つの血族を片すのに5年もかけていたら, 完結にあと20年以上も必要になってしまうのだから. 逆にそういう計算をすると
ギルゼアは話のテンポをよくするために結構大胆な動かし方をしてくるのではないか(あるいは物語の中でクリムゾン様に抗するまでになる?)
と予想せざるを得ないわけである.
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